劇場公開日 2025年5月16日

ガール・ウィズ・ニードルのレビュー・感想・評価

全106件中、1~20件目を表示

4.0闇を照らす、モノクロの凄み

2025年5月18日
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鑑賞方法:映画館

 本作がカラーであれば、流れる血は赤く、乳は白く滲んだかもしれない。けれども、モノクロームの世界ではどちらもどす黒く、不穏だ。冒頭から、これは最後まで正視し通せないかもとたじろいだが、いつの間にか、まばたきが惜しいくらいに惹きつけられていた。
 住まいも仕事もままならないとはいえ、なりふり構わぬカロリーネの言動は、ちょっと共感しづらい。猛然と周りに牙をむき、感情をほとばしらせる。彼女の転機の可能性は、幾つかあった。しかし、彼女は、誰かと生きる道を踏み出さない。その人を幸せにできない、その人とは幸せになれないと割り切り、自分の幸せを貪欲に追い求める。そんな彼女の孤独、崖っぷちゆえの力強さを目の当たりにするうちに、少しずつ、彼女への見方が変わっていった。
 あれよあれよと境地に陥った彼女に差し伸べられた手は、救いどころか、更なる地獄巡りに彼女を引きずり込む。カロリーネが流れ着いた、いわくつきの砂糖菓子店。ゆるいゆえに抜け出せない、絡みつく共同体のさまは、川上未映子の「黄色い家」に、どこか重なる気がした。
 カロリーネをすくい上げるかに思えた、女主人・ダウマのキャラクターが、とにかく不可解で目が離せない。てきぱきと指示を出し、迷える女たちに「あなたは正しい」とささやき君臨する。その一方で、意外な脆さ、人間臭さを併せ持つ。ラストの不遜な立ち姿と、懸命な抵抗が印象に残った。
 ダウマの寵愛を争うかのように、密かに火花を散らすカロリーネとダウマの娘。裏稼業を続けるため、「あること」を毎日欠かさぬよう命じられる。主人に認められるための、互いに望まぬ共同作業だ。それは画的もグロテスクで、本来の意味合いとは程遠い。ダウマが一手に引き受けてきた汚れ仕事の恐ろしさを、彼女たちは日々の作業で少しずつ体得したのではないか。愛情を求めるほどにすれ違う、ねじれた関係の行く末に、思わず息を呑んだ。
 周りを蹴落とし続けたカロリーネの新た選択は、到底罪滅ぼしにはなり得ない。けれども、誰かに引き上げられ、救われることから訣別し、彼女はようやく一歩を踏み出した。くすんだモロクロームの世界に、わずかな光と温かみが宿ったと、心から信じたい結末だった。

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cma

4.0実際の事件に基づくが、創作された主人公により衝撃と余韻が増した

2025年5月20日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

驚く

第1次世界大戦直後のデンマークで実際に起きた犯罪に基づき、時代と地域はそのままに、モノクロの映像で当時の雰囲気を再現している。スウェーデン出身のマグヌス・フォン・ホーン監督はこの事件がデンマーク以外ではあまり知られていないことから、事件を起こした人物ではなく、意図せず大変な状況に巻き込まれていく創作された女性カロリーネを主人公に据えた。その工夫により、観客もカロリーネの目を通じておそるべき事実を知り衝撃を受けることになる。また彼女に感情移入することで、自分や身近な人が似たような状況に置かれたらどうするだろうかと、答えの出ない問いを鑑賞後も抱え続けるのではないか。

本作はあまり予備知識を仕入れずに鑑賞したほうがいいだろう。とはいえ、貧困、望まぬ妊娠や出産、第1次大戦後(1919年頃)の社会状況などがテーマに関わっていることくらいは、観るかどうかを判断する基準として知っていても問題ない。影響がよく指摘されているミヒャエル・ハネケ監督の映画の中では、題材はやや異なるが「愛、アムール」に近いものを感じた。

映画の内容には直接関係しないが、プレス向け資料に早稲田大学名誉教授の村井誠人氏が寄せた解説の中で、望まれない新生児の誕生後、頭頂の頭蓋骨が閉じる前の柔らかい部分「(大)泉門」に針を刺す間引き(口減らし)の方法があったと書かれていて、これも衝撃だった。気になってネット検索したところ、英文の学術論文がいくつか見つかった。「Sewing needles in the brain: infanticide attempts or accidental insertion?」と題された論文によると、大泉門を通して脳に縫い針を刺す行為は、科学文献では40例が報告され、トルコとイランで多く、北欧や東欧などでも確認されたという。また、脳内に針が残ったまま成人することもまれにあり、同論文では82歳のイタリア人女性、また1970年に掲載された別の論文(Attempted infanticide by insertion of sewing needles through fontanels)では、32歳男性と31歳女性からそれぞれ脳内の針が見つかったという。

余談を長々と申し訳ない。もし本作の鑑賞後に興味を持った方が調べる手がかりになればと思い、書き残しておく。

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高森 郁哉

4.0静謐さと恐ろしさの狭間で

2025年5月15日
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鑑賞方法:試写会

静謐なモノクローム映像の中、人間のグロテスクな側面が剥き出しにされていく。1910年代にデンマークで実際に起こった事件に着想を得たストーリーだが、すべての発端はやはり第一次大戦なのだろう。戦争さえなければ、誰もがこんなに追い詰められ、社会が蜂の巣をつつくように混沌化することもなかったはず。前半ではギリギリの状況を生きる主人公がさらなる苦難へと突き落とされ、中盤以降は、彼女に唯一救いの手を差し伸べた中年女性とのミステリアスな交流劇が描かれる。眼前に広がる町並みはまるで複雑な心理を象徴する迷宮だ。工場門が定刻通りに女性従業員を吐き出す様はリュミエールの代表作のよう。その上、そびえ立つ建物が不気味な影を落とし、道が曲がりくねる光景には、ドイツ表現主義の影響すら感じさせる。直視するのも恐ろしい歪み、傷跡、所業。なのにまるで催眠術でも掛けられたかのように、スクリーンへ引きつけられ続ける2時間である。

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牛津厚信

3.5Gothic Film Noir

2025年4月17日
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鑑賞方法:試写会

Girl with the Needle is more audiovisual eye candy than an engaging story. Think a techno music video shot as David Lynch's Elephant Man with the fine black and white compositions of Poland's Ida. Obviously there is some Von Trier influence in there. The pieces don't add to a whole but I may have only thought so because I am not a parent. Who would want to deliver kids into this dark world?

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Dan Knighton

3.5救いがない

2025年8月17日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

驚く

いろいろ悲しい

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むーらん

少し装いを変えれば、そのまま

2025年8月9日
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鑑賞方法:映画館

 貧しさ故、更に女性であるが故に運命に翻弄され続ける19世紀の女性工員。モノクロ映像が社会の冷たさを一層際立たせます。でもお話はドンドン進み、この物語一体どこへ行くんだと思っていたら「そんな所へ向かっていたのかぁ」が明らかになり、ゾゾッと背筋が凍りました。

 でも、本作の装いを少しすこし変えれば、これはそのまま現代の物語なのです。

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La Strada

4.0超ヘビー級作品

2025年7月20日
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sow_miya

3.5ひたすら息苦しくなる映画

2025年7月7日
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鑑賞方法:映画館

アカデミー国際長編映画賞候補作で第一時世界大戦の頃のデンマークが舞台のモノクロ映画。暗そうな話は覚悟してたが、ひたすら息苦しい映画だった。救いはラストシーンだけかも、。
「正しいことをしたのよ」と、もぐりの養子縁組仲介(嘘だが)を営むダウマはそう言って泣く泣く自分の産んだ赤ちゃんを手放す母親を慰めるが、自らの犯罪を正当化する為に自分に言い聞かせていたに過ぎない。どんなに国が衰退してても庶民の生活が苦しかろうが、望まない子を宿し産んだ人々を手助けしたと主張しても、彼女の行為は全て許されない鬼畜の所業である。
カロリーネも同情するところはあるが基本的に身勝手であり、彼女の気持ちには寄り添えない。実話であり、表沙汰になった事件なのだが、世界には暗い闇の現実が今でも沢山ある。100年位前のこのような悲劇だけでも激減していることを祈るのみである、。

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アベちゃん

4.0ホラータッチな演出に引き込まれる

2025年7月4日
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悲しい

怖い

驚く

 20世紀前半にデンマークで実際に起こった事件に着想を得て創り上げた作品ということである。かつて日本でも”間引き”という風習があったが、それを連想させる話だと思った。こういう話はきっとどこの国にでもあるのだろう。
 観終わって何ともビターな鑑賞感が残ったが、事件を伝えようという製作サイドの意気込みは強く感じられた。

 ダウマのやっていることは明らかに違法行為である。そればかりか、後半で明らかにされるが、その行為は人道に反するものである。まるで鬼か悪魔か。終盤で見せる開き直りとも言える彼女の態度に戦慄を覚えた。

 ただ一方で、当時の社会状況を鑑みれば”汚れ仕事”をやらされている…という見方も出来る。先述した”間引き”にしても、当時の人々は生きるためにやむを得ずしていたわけで、自分はダウマを一方的に糾弾するという気にはなれなかった。

 実際、彼女は本作の主人公カロリーナに救いの手を差し伸べたわけで、人間らしい心を失くしたわけではないように思う。
 二人の出会いは公衆浴場。絶望に打ちひしがれ傷ついたカロリーナを見て、ダウマは理由も聞かずに介抱してやる。そして、住むところを失った彼女を家に招き入れて面倒を見てやる。後になって、ダウマ自身、悲劇の過去を持っていたことが分かるが、それを知ると彼女はカロリーナとの共同生活に安らぎを求めていたのかもしれない。あるいは、男尊女卑的な社会に対する女性の連帯という見方もできる。

 一方のカロリーナは出征した夫と再会を果たすが、時すでに遅し。別の男の赤ん坊を身ごもっており、元の幸せな暮らしには戻れない。そして、我が子を委ねたという複雑な感情はあるものの、孤独な者同士、ダウマと親密な関係を築いていく。年齢差を考えれば、あるいは疑似母子のような関係にも見えた。

 こうして二人の共同生活は始まるが、しかしこの安然の時間はそう長く続かない。当然のことながら、ダウマのやっていることは法律的には違法であり、その罪からは決して逃れることはできないからである。それはカロリーナも同じことで、我が子を捨てた罪は一生ついて回るものであり決して消せるものではない。

 鑑賞後に知ったが、主人公カロリーナは映画独自のキャラクターということである。彼女は事件の被害者であると同時に共犯者でもある。ダウマの犯罪を間近で目撃するキャラであり、観客は自ずと彼女の目を通して一連の経緯を知ることとなる。この構成が中々秀逸で、事件の裏側を覗き見するような、そんな感覚で物語を追いかけることが出来た。

 映像はダークなモノクロで統一されており、画面全体が不穏なトーンに覆われている。複数の顔がモンタージュされる奇怪なオープニングシーンに始まり、瞳の強烈なクローズアップ、シャープな照明効果等が不気味さを煽り、ほとんどホラー映画のような禍々しさが作品全体に蔓延している。

 加えて、映像に合わさる音楽も不快感、不穏さを募り、観てて非常に神経が逆なでされる。

 本作は決してホラー映画ではないのだが、ある意味で極めてホラー映画然とした演出が徹底されており、それが一種独特な作風に繋がっているように思った。

 ちなみに、ドラマ的には名匠マイク・リー監督の「ヴェラ・ドレイク」を連想したりもした。これは秘密裏に堕胎手術を引き受ける主婦の数奇な運命を描いた作品であるが、本作のダウマに通じるような所がある。
 ただ、社会背景、宗教観、信条という点ではかなり異なる部分もある。また、どちらもシビアなラストを迎えるが、本作は少しだけ光明を見出せるようなエピローグが追加されており、そこは救いであった。

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ありの

3.0ガール ウィズ ニードル

2025年7月2日
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予告でホラーかな?と思ってたら、バリバリのスリラーでした。
その辺に転がってるホラーより、遥かに怖さを感じました。
作品としては、良い出来だと思いました。
けれど、2時間の嫌悪感。
モノクロだからこそ、人間の怖さが倍増したんじゃないかな、と思います。
ラストの孤児院のオチは、要らなかった様な気がします。
ダークなだけで終わった方が、救いが無い映画として評価されると。

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映画館難民

4.0「今作一番の発見」

2025年6月17日
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知的

今年181本目。

エーテルない。ナフサならある。今作一番の発見、エーテル。FFのMPを回復するアイテム。19世紀から20世紀初頭ヨーロッパで酔う為にエーテルを飲むことはあった、ナフサは妊婦さんにはよくない物質。知らない情報知れるのが映画の醍醐味。作品は妊娠、出産がテーマ。男性監督だが視点がすばらしい。

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ヨッシー

4.0なかなかの良作

2025年6月13日
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泣ける

悲しい

ドキドキ

全く予備知識を持たず鑑賞。
ホラー映画かと思ったら全く違った。
でも、物語の真髄に迫る所から背筋が凍り付く感覚が有りB級ホラーより見応えあり。
また実話も元にしているとなると辛い。
最期はとても良かった♫
でも主人公はガールなのか?私が色々勘違いしているだけなのか??

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☆つっちぃ★

4.0戦慄のお菓子屋。

2025年6月12日
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タイトルの意味は、浴場で「うわっ!そんな事するの!」だったか。
まさに悪魔に魂売るってこういう人たちを言う感じ。
最後は感動的だったけど生活大丈夫なの?

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あらじん

3.5正しいことを

2025年6月10日
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悲しい

単純

難しい

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唐揚げ

4.5抉るような絶望

2025年6月9日
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悲しい

怖い

観衆を幻惑するような作り、そして全編色のない世界。独特の世界観に引き込まれる。
これでもかという程に絶望が押し寄せる。
見終わった後は、戦中戦後を生き延びた先祖に感謝したくなる。
もちろん、現代には現代なり絶望があるのだろうが、そういった人々が出会ってきた屈辱、不衛生、不条理の前では何も言えなくなりそうだ。
こんな展開でも、事ある毎に主人公や菓子店店主の持つ母性が滲み出る。
こんな絶望の中で、それは焼け石に水でしかないのだけれど、その部分が作り手の希望的観測ではなくて、ノンフィクションであってくれたらと願わずにはいられない。

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amane

4.0スケキヨが一番正常なのか

2025年6月9日
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ホラーらしいと言う予備知識だけで鑑賞

怪物の様に奇妙に歪んだ恐ろしい顔が不協和音と共に延々と流れ続けるオープニング
なるほど、これは確実にホラーがはじまるオープニング

ドイツの撤退で戦争が終わって乾杯!
と言う場面から察するに時代は世界大戦直後

戦争未亡人が家賃を払えず無情にも追い出される
新しい家に幽霊がいるのか?
などとホラーを期待しながら物語が進んでいく

白黒で描かれる独特の画角の美しい映像
不協和音の入り混じる音楽

しかし最後まで幽霊は出てこないまま終わった

だけど確かにこれはまごうことなき100%のホラー
モンスターは人間

戦争が引き起こす貧困
貧困極まりない社会が人間を狂気の行動に追い詰める
金持ちの貴族が自社の社員の平民の未亡人をはらませたのに、冷酷に首にする場面などレミゼが始まるかと思いましたよ

人間の中に潜む怪物性があらわにされる本作
まさかの実話ベースの物語だとは驚愕です

戦争帰りのスケキヨ3倍増しの見た目怪物な旦那さんが一番正常な精神を保って日々を生きている皮肉

名作で怪作
SING SINGに続く2025年のベスト10に入れたいの洋画でした

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TRINITY

2.0辛いだけ

2025年6月8日
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いや~、久々に辛いだけ映画に当たりました。何の救いもないです。

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michi

3.5衝撃の事実だが、時代が生んだ闇であろうことは間違いない

2025年6月8日
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ひでちゃぴん

4.0どこまでが真実か知りたくなります

2025年6月7日
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驚く

モノトーンの暗くて重苦しい映像が、ストーリーとフィットしてます。余裕がなく、過度に合理的、盲目的に生きることを強いられる時代。だが、この映画の2人の女性の怒りが、ただ時代のせいだと断定するには、人間の臆病さと酷薄さは、普遍的すぎる。

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TT

3.5女性にとって圧倒的に不利な立場は、世界的にどの国がであっても同じく、今も変わっていない。

2025年6月7日
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ITOYA