劇場公開日 2025年8月22日

「後半部の展開とパルテノペ=ナポリの美を楽しむ」パルテノペ ナポリの宝石 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 後半部の展開とパルテノペ=ナポリの美を楽しむ

2025年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

文豪ゲーテをして「ナポリを見てから死ね」と言わしめたイタリア南部の美観都市ナポリを舞台に、古代ナポリの都市名だった「パルテノペ」の名を背負った女性の生涯を描いた抒情詩でした。主人公パルテノペを演じたセレステ・ダッラ・ポルタがとにかく美しいこととともに、舞台であるナポリの風景が超絶に美しく撮れており、物語以前に”絵”を楽しむ作品という感がありました。

一方ストーリー的には、富豪の家に生まれたパルテノペの苦悩を描いてはいるものの、貧乏人の僻み根性からか彼女の悩みにあまり共感できず、かつ社会的意義も感じられない展開で、映像の美しさに比べてちょっと退屈な前半部でした。ただ物語が後半に入ると、仲の良かった兄ライモンド(ダニエレ・リエンツォ)の自死もあって徐々に彼女の感情の襞が見えるようになってきて、遅ればせながら物語世界に引き込まれて行きました。
美貌を活かして女優の道に歩むかと思いきや、学究の道を進んで人類学の大学教授となるパルテノペ。マロッタ教授(シルビオ・オルランド)との「人類学とは何か?」という会話は永遠のテーマになっていて、個人的には彼女の学者としての姿をもう少し掘り下げてくれたらもっと面白かったような気もしますが、ナポリの司教らしいテゾローネ神父との情事や、マロッタ教授の人外の姿をした息子との邂逅など、物語らしい後半の展開は非常に印象的でした。

そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。

鶏