リモノフのレビュー・感想・評価
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ロシアの革命児の生涯を描いた傑作‼️
カッコええーーー!痺れました!
今時、ピストルズのPretty Vacant、フル尺でかかる映画なんてある?他にもトムウェイツ、ルーリードとか最高すぎるでしょ。
ロシア(ついでにウクライナ)の近現代史を、アメリカに亡命して人気作家になった実在の人物リモノフの生涯を追うことで知ることができる傑作!
前半は監督がロシアのジョーカーと言ってるくらいでわかりやすいけど、後半はウクライナ戦争についてオールドメディアで報じられてるようにロシア、プーチン=悪、ウクライナ、ゼレンスキー=正義、みたいにとらえてると理解できない映画だと思いました。
ウクライナ侵攻について、ロシア側の視点についてはオリバーストーン監督の映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』を観ると解像度あがります。
まあ、このあたりを知らないとエンディングロールのテロップ読んでもリモノフが狂人にしか思えないんじゃないですかね。
わかりやすく言うと、スターリンがイケイケの頃のソビエト連邦下のウクライナで育ったリモノフが、ソビエトが弱体化したことによりウクライナが独立し、さらに反ロシアになったので、プーチンに同調してウクライナ侵攻に参加した、という流れ。ロシアによるウクライナ侵攻は、リモノフにとっては故郷を取り戻す戦いということ。
大統領(たぶんプーチン)のシンクタンクに勧誘されても、仲間を裏切ることはできないと断ったものの、最後はウクライナの戦いに参加するアツいヤツ。それがリモノフ。
個人的にハッとさせられたのは、ロシア国内のスターリンて人気あるってこと。このあたりもフランスのラジオに出演するリモノフとフランス人との口論で各国の国民的感情を表現する。
ロシアの現代作家がどんなこと考えてるのかってことも興味深かった。アメリカの出版社に、自分の願望をぶちまけた破壊的な暴動を描いた小説を持ち込み、編集者にタクシードライバー観て社会正義を学べば大衆に共感されるって説教される。え?タクシードライバーってそんな話?って笑った。
日本文学に例えると前半太宰治、後半三島由紀夫って感じ。特に三島由紀夫の名はセリフとしてもちゃーんと出てきます。リモノフ、ミシマのことめっちゃ好きやん。
詩人特有のフカし
好きな監督だからまだまだ期待してしまうが、詩人特有のフカし、カマしに見えてしまったし、この映画の中の評価もそれがかすってる。広瀬すずとかが出てた小林秀雄周辺のフカしともそんなに遠くないような気もする。ただナラティブの為にパクられるという人物物語の作り方はこの映画の中でも少し冷ややか。ロシアには反リベラル復古型左翼(極右?)運動がいると聞いた事があるが、そこに位置付けられるかな。冒頭20分ぐらいは性愛を中心に主人公の性経験を軸に描く日本映画っぽい作品かなと身構えてしまった。チャイコフスキーの妻の次がこれかぁ。渋かったり、大きな物語を作れることは証明済みなので、次はもっとはっちゃけて欲しい。監督の出自として、マストなのは分かるがもうちょっと自由に作って欲しい気もする。彼の活動なども単なるロシアのガス抜きになってしまっている目線はなかなかに厳しい。これは野暮だが、やっぱり英語だと迫力がだいぶ減じてしまう。ベン・ウィショーってクィアアイコンとして女性に愛されてるがこの配役は絶妙かも。ホモセクシャルで人生を解放するのは少しステレオタイプな気もするがステレオタイプに魅せられてしまう人物像なのでまぁ仕方ない。この監督の長回しによる時代変遷もスマートだった。
70年代ってこんなイメージ
ポスターを見て興味が湧き、事前情報ゼロで鑑賞。
主人公の考えや行動には共感できずじまいでしたが、自分にない価値観で進む物語が非常に新鮮で面白かったです。
子供の頃の印象ですが、テレビや映画で観た70年代の退廃したアメリカのイメージってこんな感じだったなぁと思い出しました。でも、ここまで退廃してたのか・・・と、その酷さに改めてビックリ。この70年代のアメリカでの描写が特に長く印象的で、主人公が化粧をしてビルの屋上で踊るシーンは、ジョーカーを思い出します。
主人公がソ連からアメリカに行き、ニューヨークで退廃的で快楽に溺れる暮らしぶりから、やがてソ連に戻り、思想家、革命家のような雰囲気を漂わせ、世間から持ち上げられたように見えてなぜか刑務所送り、釈放時支持者から絶賛で迎えられるという流れ、所々よく分かりませんでしたが、音楽や映像的な面白さもあり、退屈せず最後まで見ることができました。今回は、あくまで雰囲気を楽しんだだけの鑑賞でしたが、ある程度実際の出来事を調べてから本作を観ればもっと面白いと思います。
あと、主人公がダニエル・クレイグの007で武器開発担当のQ役だったのが意外。ポスターの顔を見た時は、若い青年Qと同じ俳優とは全く分かりませんでした。映画冒頭「あ、Qの人かも?」と一瞬思いましたが、以降、本作では終始リモノフでした。役者って凄いですね。
ある程度歴史の知識がないと難しい
構成も内容も、こういった大衆向けの映画館ではやらないような映画。
映画自体も含め、「芸術って客観的評価なんてないからな」と思ってしまう。
歴史的な部分をある程度知っていないとセリフの一つ一つが理解できないし、つぎはぎだらけのストーリー展開の中にリモノフの空想も差し挟まれているため、とても難解な映画だと感じた。
ドストエフスキーを彷彿とさせる人生。
愛のある平凡で才能もない穏やかな人々は、リモノフの父親の様に世の中が巧みに情報操作されている事にも気づかず、純粋に愛と正義を貫いて死んでいく。
でも、リモノフのように尖り、世の中の本質・真実を知り尽くして生きたからといって、人の人生として何かが変わるのだろうか。
出所の際、記者に撮り直しを依頼されヘラヘラとそれに応じるリモノフの姿がその答えを物語っている気がした。
中盤、リモノフの詩が映像とともに流れるシーンがあり、監督はこれが撮りたかったのではと思う程、心に染み込んでくる。
映像と、文字でなく「音読」という形を取ったことで、リモノフの詩がより完成したものとなって観客の心に届くのだと感じた。
激烈な革命家のヘタレぶり
「インフル病みのペドロフ家」「チャイコフスキーの妻」のセレブレンニコフ監督作、謎の過激派リモノフの半生が題材、そしてしなやかなトリックスター ベン・ウィショー主演とくれば、一筋縄ではいきそうもないので、かなり構えて鑑賞に臨みました。
結果は、予想よりもはるかについていけましたし、面白かった。アニメ、キャプションパネルでの時代背景の効率的な説明やミュージカルシーンなどもあり、テンポも悪くなかったと思います。
パリでフランスのラジオインタビューで、スターリンを非難された時のリモノフの台詞「スターリンがいなかったら、お前らは今頃ドイツ語を喋っていただろう」。これって、フランス人から自由の女神を返せと言われた時に、トランプ政権のレヴィット報道官が吐いた「アメリカがいなかったら・・・」と同じじゃないですか。なんか笑えました。
ちなみにこのフランス人パーソナリティ役、「冬の旅」の名花サンドリーヌ・ボネールが演じてました!
普段は自信たっぷり、過激なリモノフですが、ゴダールと同じで、惚れた女には滅法弱い。別れた後も、下着被ったり、祭壇で崇めたり、幻影にしがみついたりする姿が何ともいじらしかったです。
メンヘラおじさん年代記
リモノフについて前知識を得てから見た方がよいかな?と思ってググりましたが、三島由紀夫に影響を受けたとの一文を読んで、なんとなくそれ以上深掘りする気になれずで、あまり人物を知らないまま鑑賞。
詩人としての才能もあり、野心、名誉欲も人一倍なのに、運が悪いのか極度のメンヘラ気質が原因なのかなかなか大成しないリモノフ。
ギラギラした青年期から不敵な面構えを得た老年期まで、ベン・ウィショーが身体を張って熱演。
現実とリモノフの心象風景が混ざり合って、ときおり白昼夢みたいな演出が挟まるのが大変よかったです。
特に70年代NYのヒッピーシーンを歩くリモノフと友人を長回しで捉えたショット…の先の演出が驚きでした。
ソ連に反発し、一度は国を出たリモノフがなぜ再びソ連信奉者になり、ロシアに反旗を翻す政治活動家になったのかはよくわかりませんでした。
いうなれば究極の天邪鬼ですかね。
人間性には1ミリも共感できませんでしたが、カリスマ性はビシバシ伝わってきました。
ベン・ウィショーは60〜70年代の洋服と髪型が良く似合うと思って観ていたら、中盤からの執事ルックも新鮮。
きわどいラブシーン...含め、ファンには見所が多くおすすめです。
もう【Q】には戻れんでしょ〜。気迫の演技でした!
樋口毅宏さん、「リモノフ」のお話を書いて頂けますか?
変幻自在のベン・ウィショーの魅力全開だった。1980年代後半、ベルリンの壁崩壊を数年後に控えたあたりのウクライナから始まり、1970年代のニューヨークへ。時代と背景で映像が色褪せたニュース画像のようになったり色合いが変わったり、カメラが揺れたり、それにかぶせて激しい音楽、時代と共に変化するリモノフのヘアスタイルとファッション、全てがかっこよかった。
今に見てみろ!と承認欲求が強い破天荒人間はどんな国にも居るような気がする。といって思い浮かべるのは、尾崎放哉とか太宰治とか林芙美子、ちょっと違いますね、リモノフの生命力は突き抜けている。小説家・樋口毅宏の手にかかると、登場人物はみんなリモノフ的になる!そうだ!樋口毅宏さんに書いてもらおう!
Catastrophe
伝記映画を観る時にアーティストとかだったら、事前に曲を聴いてとかが出来るんですが、今作のリモノフの様にさまざまな職種に就いていた人の伝記映画って何をモチベに観れば良いか分からず、それでも楽しめりゃ良いなと思いましたがそんな事はなく撃沈しました。
リモノフ自身を知らずに観るとどうしても痛々しい奴にしか見えず、青年時代までならまだしも、大人になってもその殻を破れていないので、カッコいいとかの感情以前にコイツとは関わりたくない拒絶反応が前に出るのでそもそもの相性が悪かったです。
リモノフの経歴や凄みを味わえるのかと思いましたが、基本的にはラリってる様子を延々と流され、そこに爆音の音楽を添えてガンガン責めてくるんですが、その割に眠気に誘われるという不思議な体験になってしまいました。
ベン・ウィショーの怪演が凄まじく、彼1人のパワーで引っ張りまくっていてなんとかなった感じ…。
役者頼りでの映画でストーリーがおざなりになってしまっていたのは残念でした。
リモノフについて詳しくなってから観直すのもありかなとは思いつつも、もう一回劇場に行くのはなぁ…となってしまいました。
鑑賞日 9/8
鑑賞時間 14:50〜17:05
こんな人が居たんだ
ソビエト連邦時代のロシアで生まれたエドワルド・リモノフは、1950~60年代をウクライナのハルキウとモスクワで過ごした。反体制派や詩人たちが集う別荘でエレナと出会い恋に落ちたリモノフは、彼女とともにロシアから自由を求めてアメリカ亡命を目指した。ニューヨークに来て自由を手にしたものの、職も金もなく、エレナとも別れた。リモノフは自らの言葉を世界に発信し、やがてフランスの文学界で注目を集めるようになった。リモノフはパリに渡り、作家としての名声を得た。その後ロシアに戻り、政党を作り、ロシアによるユーラシア統一を目指した。そんな事実に基づく彼の生涯を描いた話。
詩人、革命家、などいくつもの顔を持ち、世界から危険視されながらも多くの人々を魅了した実在の人物エドワルド・リモノフという人が居た、ということはわかった。
ロシアに詳しければ面白かったのかもしれないが、無茶苦茶な言動に共感するところは無かった。
エレナ役のビクトリア・ミロシニチェンコが色っぽかったくらいかな。
皮肉った様々な仕掛けとか演出も・・・
70年代からのつい最近までをリアルな映像と趣向を凝らした演出バリバリの映像が見事に融合した感じで、当時の音楽、現代の音楽、ロシアの音楽が絡み合って、やりまくりの展開にもうハマってしまいそうになるのかなぁと思いながら、なんか嫌だなぁというわだかまりもちょっとあって、その嫌な感じがどんどん高まって、やっと終わったよう・・・といった印象の作品でした。つまりは自分的にはよろしくなかったということです。
凄いセットとかCGを巧みに使った映像なんか最高、しかも音楽も聴き倒したり好きなものばかりなのに、何でこんなにも・・・と─。
誰一人にも感情移入できなかったし、周りのもの全てを否定しているような内容がとにかく嫌で、何もかも何がしたいのか何がしたいのか全くナゾです。
工夫とか創造性に溢れた作品だとは思えたので、なんか勝手に残念な感じで暗闇から解放された感じです。
資本主義の欧米が、共産主義 ソ連を崩壊させた?
フランス人のインテリが、主人公に『あなた方 ソ連の共産主義は 資本主義に負け 崩壊した』と言われ、ブチ切れる。
『お前らは戦争がはじまると 尻尾巻いて逃げた腰抜け国家だろ。おえらに同情される筋合いは無い』と面罵。 痛快。
ソ連・ロシアには 彼らの 生き方が有り、欧米の資本主義が、正しい訳でも無い。
西側諸国の価値観に洗脳され切った 日本人の私には 刺激的だった。
遊び心満載の映像体験。
まるで本物の「インタビュー番組」かと見紛うほどの古臭い映像で幕開けする本作は実在した作家リモノフを追った作品。
とはいえ単なる自伝映画にはおさまっておらず、映像、音楽、編集ともに遊び心満載の楽しい作品となっておりました。
特に映像に関しては飽きさせない工夫があちこちに散らばっておりました。
幕開け早々、4:3の画面をリモノフ本人が両手で左右に広げる映像を始め、ハルキウからモスクワへとワンカットで移動させる長回し、ニューヨークのコインランドリーから始まるミュージカル擬きのワンカット、「TIME」と銘打って廃墟の中を時代の流れと共に走るリモノフを捉えた追走映像など目を見開いてしまう仕掛けが盛りだくさん。
「映画を観に行った」と言うよりは「遊びに行った」という感覚に近いものを感じました。
パンク、アナーキー、レボリューション、そうしたキーワードが幾度となく頭を過ぎる中身になってますので、それらの一つでも好きな人ならば観に行って損はないと思います。
凡庸な芸術家の肖像
いやーベン・ウィショー良い。知らなかったロシアの詩人・政治家の半生を人間臭く演じて見ごたえたっぷり。時代ごとに髪型と身なりを変えて。鬱屈した感じがドニ・ラヴァンに通じるセクシーさだ。
リモノフという人、ポスターからはゲバラみたいなかっこいい人物かと思いきや全体的にカッコ悪く、こじらせてる男子はどの国にもいるのだなと思わせる。劇中に出てくる詩もビミョー。テレビに映るノーベル賞作家ソルジェニーツィンに毒づくところなど、「あいつらセルアウトしやがって」とボヤく売れないバンドマンみたい。
そういう芸術家としての彼の凡庸さが、70年代〜2000年代の社会の移り変わりを映す構成になっているのが巧みだ。つまりリモノフを礼賛してないところがいい。
ベルベット・アンダーグラウンドとか音楽の使い方はややコテコテすぎると思ったが…
三島由紀夫に傾倒していたらしいリモノフがホームレス黒人男性と絡むあたりのねちっこさが一番印象に残った。
ニューヨークの雑踏(オーブンセット?)での長回しなど撮影も凝っててお金がかかっているがこの映画、全世界でかなり赤字っぽい(制作費推定1,050万ドルに対し興収38万ドル)…でも見られて良かった!
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