私たちが光と想うすべてのレビュー・感想・評価
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夜の大都会と浜辺の村
カンヌで評判を呼んだインド映画ということと、タイトルの意味シンさに引かれて観た。
夜のムンバイの移動撮影に様々な証言が重なる出だしから、この作品が大都会とそこで密やかに暮らす人々を描くものだろうと分かる。主な登場人物は女性3人。それぞれが社会的な問題を抱えている。
眠らない街ムンバイを写し取る映像が美しい。特に、電車の遠景、家々の灯り、雨の雑踏など、夜のシーンが印象的。しかし、あまりの人の多さに、圧迫感すら感じる。
一転して、後半は海辺の村が舞台。のどかな浜辺と林が広がる画面の開放感と合わさって、登場人物たちも自らの想いを解放させていく。
静謐ながら茶目っ気のある演出や、画面作り、音楽は、フランス映画のような雰囲気。題材から、もう少し社会派的に踏み込んでほしいという物足りなさがあるが、しっかり生身の人間を描くことには成功しているだろう。ただし、タイトルが意味するものは、まだ分かっていない。
インド庶民のリアルな生活風景
孤独な現代人インドバージョン
タイトルなし(ネタバレ)
エンディングに流れる楽曲の力強い響きが心に沁み響きました。全ての文脈はこの瞬間の為にあったと思える力強い空間に満たされました。もちろん人により感覚は違うと思いますが。
タイトルなし(ネタバレ)
現代のインド・ムンバイ。
看護師のプラバ(カニ・クスルティ)は年若い同僚アヌ(ディヴィヤ・プラバ)と同居している。
プラバは結婚してすぐに夫がドイツに出稼ぎに出たままで、最近一年以上も音信が途絶えている。
一方のアヌは、故郷から見合い結婚を薦める両親に内緒で、ムスリム男性と交際している。
大都会ムンバイの暮らしは苦しい。
そんな中、食堂で働く初老の女性パルヴァディ(チャヤ・カダム)が、高層ビル建設のために立ち退きを余儀なくされ・・・
といったところからはじまる物語。
実際にはじまるのは、ムンバイの実景から。
そこに、ムンバイについて語る様々な人のモノローグが被る。
この冒頭から嫌な予感がした。
このモノローグ、主役ふたりとは関係ない人たち。
とすれば、主役は女性たちではなく、ムンバイという大都会ということになる。
街が主役というのは、かなり難しい。
登場人物を上手く広範囲に動かさないと街が活写できない。
が、映画はやはりプラバとアヌが主役のようで、彼女たちふたりのドラマを描いていくのだが、設定を活かすほどシナリオは深掘りされておらず、ドラマが展開するかと思うと、安易にセンチメンタルな音楽が流れる演出となっている。
なんだか、ムード演出だなぁ、と。
ただし、時折、良い描写もある。
予告編でも用いられている、高層マンションの屋外広告に石を投げつけるシーンなどは、女性たちが越えられない階級に対してのやるせなさ・諦念を感じます。
終盤ふたりは、故郷へ帰るというパルヴァディに付き添って海辺の寒村へ行くのだが、物語は唐突にファンタジー味を帯びて来、悶絶というか絶句というか。
久しぶりに、物足りなく、ガッカリ度の高い作品でした。
インドのムンバイに住む、二人の女性看護師や、その周囲の人々の物語。...
インド映画の新しい光
劇中職場の同僚たちが映画を見に行こうと盛り上がっている最中、主人公の真面目っ子プラバは「アクション映画だったら私はパス」と素っ気ない対応。ああ、この監督ボリウッド映画嫌いなんだなと分かりました。
インド社会の過酷な現実も描いていますが、加えて詩的で抒情的な描写が多く、意地悪に言えば、シネフィルが作った、ちょっと斜に構えたヨーロッパ風。でもね、私好みなんですよー、こういうの。
前半のムンバイと後半の海辺の田舎町(ラトナギリ)で、画の雰囲気がガラッと変わります。流れている時間からして本当に全然違います。ムンバイは混沌として活気に溢れ、いつも急かされている感覚、夜も電車の車窓に光が溢れて美しい。一方でラトナギリは悠久の時がゆっくり刻まれ感じ。波の音が常に心地よい。でも都会人には少々退屈かも。
どちらがいいとか悪いとかではないのですが、プラバの同僚の医師の言葉が的を得ています。「ムンバイは魅力的だが、僕には落ち着かない」。彼はムンバイを離れてしまいます。
旦那から送られてきた炊飯器を抱きしめるシーンや森で用を足すシーンなど、ドキッとする描写が突然挿入されます。これが妙に艶めかしく、戸惑いながらも結構好きです。
終盤 ラトナギリの洞窟でアヌとシアーズの恋人たちが語りあう静謐なシーンと海難救助したプラバの現実と夢想が一体化していく意表をつくシーンがいいですね。
さらにラストの引きのカメラが満天の星を捉えるショットが、本作を締めるに相応しい輝きと余韻を与えています。
Why did this film win the Grand Prix at Cannes in 2024, second to the Palme d'Or ?
This film has three elements: documentary, realistic fiction, and fantasy. However, it lacks realism, and ultimately represents only one aspect of Mumbai as seen from a Western perspective, which I think may have been difficult for Indians to accept.
First of all, Prabha and Anu, who share an apartment, are nurses, but even though the hospital has an inpatient facility, they do not appear to work the night shift. The third main character, Parvathy, works in the hospital kitchen and is close to Prabha, but she does not interact with Anu.
Prabha is a down-to-earth woman who met her husband once through an arranged marriage and he is now working in Germany, but they have not been in contact for over a year. It is likely a paper marriage to obtain a residence visa. He presumably only sends money to her husband's parents. However, deep down, it seems that she still has feelings for him.
Meanwhile, the young and outgoing Anu is in a relationship with a Muslim. She tried to keep it a secret, but everyone knows. Her partner, Shiaz, is, as usual, weak and unreliable.
Parvathy is told there is no proof of ownership and is ordered to vacate her home to make way for the construction of a high-rise building. There seems to be no concept of residential rights. Perhaps there is no residential registration either.
Prabha and Anu accompany Parvathy back to her seaside hometown, but it's unclear how they managed to take holidays while working as a nurse. Shiarz also accompanied Anu. There is insufficient electricity and water, and no toilets, but for some reason their smartphones are able to charge. In a village near Ratnagiri, I thought it was Shiarz, who was going into the sea, but it turns out that the person who drowns and was rescued by Prabha is an unidentified man, pretending to be Prabha's husband. Even though it is a fantasy, the line between fantasy and reality is unclear.
The best part was the bustling Mumbai market that appeared in the documentary part, a market many times louder than the ones in Paris. It reminded me of that brief glimpse of the city from the plane.
The biggest problem with the Japanese version is that it doesn't distinguish between Hindi, the predominant language in Mumbai, Malayalam spoken by Prabha and Anu, and Marathi, spoken by Parvathy; we had no way of knowing the multilingual nature of the film. What a shame!
う〰️む(ー_ー;)
とても面白かった
そもそもムンバイがインドのどこにあるかも判然としないまま見た。昔で言うボンベイだった。モンスーン気候。絶え間なく降りしきるスコール。暑さと人いきれが濃厚に混じった、湿り気そのものがフィルムに写っているみたいだった。この空気感から逃れられる場所は、街のどこを探しても無さそうな感じ。そして都市の夜景を中心とした前半から一転、後半の田舎感溢れる舞台へ無理なく転換していく。語り口も撮影も音楽も美術も優れていて、初監督作品とは思えない、と感じた。
3人がそれぞれ抱える事情は、最後には自身で向き合うしか無いようなものだろう。だがその過程に於いては、互いに少しずつ共有し合ったり、助け合いながら日々の生活が営まれていく。そんな社会のあり様について描いているのかなと思った。最後のシーンは、特別なことは何も無いのだが、そこがとても良かった。
彼女たち中に、色んな自分が見える
過去の記憶や感覚を思い出させられるような映画だった。スクリーンに映るのは、行ったこともないインドの風景なのに、どこかで自分が通り過ぎてきた景色のように感じて深く引き込まれた。人生のフェーズの違う3人の女性たちの心境に自分が共鳴したポイントをメモとして残しておきたい。
・都会には懐の深さがあるけれど、「帰る場所」としてはどこか躊躇いがある。受け入れられているようでいて、常に少しよそ者のような感覚。
・目の前にはいない家族の存在が、なぜかいつまでも影を落としている。自分の選択や感情が、その不在に縛られていると感じること。
・自分には怖くてできないことを、隣にいる誰かが軽やかに実行してしまうときに覚える、羨ましさと苛立ち。
・他人の目を気にして、自分自身に課してしまう「あるべき姿」や制限。
・都会を離れ、地元に戻ったときに感じた、張りつめていたものがふっと緩むような安心感。
・ひとりで過ごす時間の中でふと襲ってくる、言葉にしにくい寂しさ。
・誰かとただ日々を共にするだけで生まれる、強くもゆるやかな連帯感。
驚くほどつまらない
驚くほどつまらない。
カンヌで賞を獲るような映画。
大都会ムンバイで働くまじめな看護師プラバの夫はドイツに出稼ぎ(?)に行ったきり、ルームメイトの若い後輩は、ムスリムの男性と道ならぬ恋に落ち、プラバと仲が良い仕事仲間のおばさんは法律に疎くて長年住んだ家を追い出されそう。彼女たちの日常描写が延々、単調に続く。ムンバイの都市生活者の生態は興味深かったが、残念ながら話が単調かつつまらない。唯一面白くなりそうだった、プラバに好意を抱く、自作の詩をプレゼントしたり手作りお菓子を渡しながら「おいしくなかったら気まずいから家で食べて」という乙女チックな医師も特に爪痕を残すことなく消えてゆく。
居住の権利を証明する書類を一つも用意できないおばさんがしかたなく故郷に帰るところでようやく「転」が来たかと思ったが、何かが進展するわけでもない。
プラバが、おぼれた男性を救助し介抱していて、唐突に出てくるプラバの夫は一体何?
私には刺さるところがなく退屈で、気づいたら寝てました。何とか最後まで観たが私には合いませんでした。
インド映画で、おとなしめながら、そーゆーシーンがあろうとは!
何も怖くなくなる
こないだ鑑賞してきました🎬
病院に勤める2人の女性がメインのストーリー。
プラバにはカニ・クスルティ🙂
真面目すぎるきらいはありますが、そこが彼女の取り柄でもありますね。
一方で、夫がドイツに行ってからは疎遠に😥
しかし後半、色々あってからの彼女は明るく、希望を見出したようで何よりです。
アヌにはディビヤ・プラバ🙂
基本自由な彼女ですが、かといって悩みがないわけではなく。
イスラム教徒のシアーズと交際しており、親には内緒にしつつまめに連絡を取っています。
病院ではうわさのたねになっていますが、気にしないのが清々しい😀
奔放ですが繊細さもある、魅力的な女性を表現していました。
インド映画はあまり見ませんが、ゆったりとした日常の中で感じる漠然とした不安。
何処か満たされない思い。
それを抱えつつ、変わらない日々にこそ希望を見出していく、そんなメッセージを感じました🫡
インド発のヒューマンドラマとして、おすすめの1本です👍
これがリアル?
インド映画は歌あり踊りありで楽しいイメージがありますが、そうでない作品でも秀作も多く、本作品も歌踊りなしの作品としては出色の出来だったと思います。
あの「花嫁はどこへ」と高い評価を分かち合ったというのも納得でした。
とにかく、インドの生々しいリアルな日常が描かれており、色々と共感したり、なるほどな〜と得心がいくことも多かったです。
都会での生活の楽しさを享受し自らその中に飛び込んでいく若者、夫との関係に煮えきれなさを覚えながら、都会での生活に息苦しさや閉塞感を覚え日々鬱々とする年嵩の女性、この2人の関係性を軸に物語が進んでいきますが、それぞれの考え方や行動に、部分的ではあっても納得できたり、違和感を覚えもし、両者の視点から観ている間は自分の中でも様々な感情が渦巻いていました。無論、日本とは社会状況や、宗教観などが異なるので、所々理解に苦しんだり、疑問に思うところもありましたが、人が思い悩む根本の部分は人種国籍関係なくどこかしら共通してるのではないかな、と思いました。つまり、結局のところは「自分本位」ということ。そこを起点として人と関わったり、認め合ったり、あるいは離れたりして日々光明を見出しながら生きているのだな、とあらためて思いました。人間て複雑ですね。だからこそ色々なドラマがあって面白いのかな?
とまあ、そこは私自身が勝手に感じたことなので、これだから人生は素晴らしい!と謳う人生礼賛映画ではないのですが、凡庸だと思っている人生でも、其処此処に明るさや希望が潜んでいるんじゃないか、と、たまにはこういうことをあれこれ考えさせてくれる作品を観るのも悪くはないですね。それも「脳天気」で楽しい賑やかな映画を数多く作っているインド映画だからこそ(?)、本作品は観る価値があるような気がしました。
頭がクラクラするほど素敵な鑑賞後感
インドの日常を描きながらも、前むきに生きる女性の姿が、心に沁みる
まずはインドの街 ムンパイ、街は活気があるが、何か雑然としていて働く人もどこか無気力。行政的にも問題がありそう、そんな中で、生きる全く性格の違う二人の女性の物語。友人の田舎に二人が同行して行くところから、今までの荒いカメラワークが、優しくなり、ラストまでとても心地よい気持ちになります。宗教観、結婚観、労働者、女性の立場など、問題提起はされていますが何一つ解決しませんが、屋台のイルミネーションのような色とりどりのライティングと海を見つめる女性の姿が彼女らの思いを現してくれています。
フランス映画のようなインド映画
このようなインド映画もあるんだと思ってたら、制作国はフランス=インド=オランダ=ルクセンブルクとなっていた。都会のムンバイと何処かのインドの田舎が舞台で監督もスタッフも出演者もインド人だがテイストが少しフランス映画っぽいてことかと思う。
私は一時マレーシアに住んでたのでイスラム教のマレー人とヒンドゥー教のインド人と中国人が共存はしていても確実に壁があることを身近に感じていたので、イスラム教のパキスタンを敵国としているようなインドにおいては宗教の違い(インドのイスラム教比率は14%で世界3位のイスラム教徒の数があるにも関わらず)を乗り越えて男女が一緒なれるのはとても大変なことなのかと思う。だから、陽気で奔放なアヌは勇気ある恋愛をしてるのである。プラバは見合い結婚したが夫はドイツに出稼ぎに出たままずーっと会えてない。そんな身勝手な仕打ちをされてても夫を想う幻想(溺れた男性を救助し看護するシーン)を見てしまうのが悲しい。
そんな2人の色んな出来事を淡々と描く映画であったが、観た後、何故か爽やかな気分になれた。カンヌの審査員もそんな感じだったのかも、。映画とは不思議なものである。
たぶんこれが世界最先端。それはよくわかる。
パヤル・カパーリヤー監督。西洋的教養と技術を持った人がインドで映画を撮るとこうなるのか、という現代映画詩。
ムンバイに暮らすインドの女性たちのいまを垣間見しつつ、ふわっとそれが幻想と交差する。タイのアピチャッポンとかもそうだけど、未知の国の教養を武器にしたアジア映画ほど強いものはない。何せ見たことのない街や人を見れるのだけで面白いのだから。
ムンバイの湿気溢れる映像、遠くで鳴る車のクラクションの音、背後を流れる列車の光、田舎の海辺、海辺の海の家みたいなところの安っぽい光、とにかく魅力的。都会の問題を引きずって田舎で想像外のものと遭遇する。土着的なものとPOPなものの融合という側面もある。まあ英語のクレジットでもあるが、音楽がとてもかっこよかった。
なんとなくこれの一年後の『ルノアール』はこれに寄せたんだな、という気はした。
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