「タイトルなし(ネタバレ)」私たちが光と想うすべて りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
現代のインド・ムンバイ。
看護師のプラバ(カニ・クスルティ)は年若い同僚アヌ(ディヴィヤ・プラバ)と同居している。
プラバは結婚してすぐに夫がドイツに出稼ぎに出たままで、最近一年以上も音信が途絶えている。
一方のアヌは、故郷から見合い結婚を薦める両親に内緒で、ムスリム男性と交際している。
大都会ムンバイの暮らしは苦しい。
そんな中、食堂で働く初老の女性パルヴァディ(チャヤ・カダム)が、高層ビル建設のために立ち退きを余儀なくされ・・・
といったところからはじまる物語。
実際にはじまるのは、ムンバイの実景から。
そこに、ムンバイについて語る様々な人のモノローグが被る。
この冒頭から嫌な予感がした。
このモノローグ、主役ふたりとは関係ない人たち。
とすれば、主役は女性たちではなく、ムンバイという大都会ということになる。
街が主役というのは、かなり難しい。
登場人物を上手く広範囲に動かさないと街が活写できない。
が、映画はやはりプラバとアヌが主役のようで、彼女たちふたりのドラマを描いていくのだが、設定を活かすほどシナリオは深掘りされておらず、ドラマが展開するかと思うと、安易にセンチメンタルな音楽が流れる演出となっている。
なんだか、ムード演出だなぁ、と。
ただし、時折、良い描写もある。
予告編でも用いられている、高層マンションの屋外広告に石を投げつけるシーンなどは、女性たちが越えられない階級に対してのやるせなさ・諦念を感じます。
終盤ふたりは、故郷へ帰るというパルヴァディに付き添って海辺の寒村へ行くのだが、物語は唐突にファンタジー味を帯びて来、悶絶というか絶句というか。
久しぶりに、物足りなく、ガッカリ度の高い作品でした。