「青の稲妻いい映画ですよ!」新世紀ロマンティクス sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
青の稲妻いい映画ですよ!
なんでもないその辺の市井の人々の生活風景を撮って、どうしてこんなに詩情あふれる映像になるのか。
この監督には街の景色がずっとこんな風に見えてるんですかね。
ノスタルジーとあきらめとほのかな希望がないまぜになったような、なんとも言えない切ない空気が全編に漂っています。
まあずっとそれ一辺倒なので、眠くなっちゃう人もいるかもしれない。
ていうか普通はそうかも(笑)。
主人公と思しきパッとしない中年女性も(昔は結構華があるけど)、全然しゃべんないし。
昔の恋人らしき男に苦労して会いに来たと思えば、「あなたと私は終わったの」って、、あんたそれ言いに来たの!?っていう(笑)。
そもそも本編の中に、過去にジャ・ジャンクー監督の作品の映像が結構使われているので、その作品を見たことあるかどうかで印象は全く違ってしまうでしょうね。
自分がわかるのは青の稲妻だけでしたが、これがもうすっごく好きな作品なので・・・、なんだか主人公の彼女と一緒に、20年分の思いを抱えて旅してるような気になりました。
青の稲妻は2002年公開の作品ですが、その当時からどこかノスタルジックというか、変わりゆく時代の中の寂寥感みたいなものを捉えた作品だったのですが、それがこの新世紀ロマンティクスにも、驚くほどそのまま受け継がれてるのに驚きます。
それが単なるノスタルジーではなくて、あくまで「今」を映したものになっていると、自分は感じました。
一方で、その中に挿入される青の稲妻の映像は、、この映画の中に過去として置かれることで、切なさが掛け算になるというか、強烈に胸に来ました。
青の稲妻の主人公の青年が一瞬だけ映るんですけど、実在の人物じゃないのに「彼は今頃どうしてるんだろう」と思いを馳せてしまいました(笑)。
さらにはその主人公の親友が青の稲妻には出てくるんですが、この新世紀ロマンティクスには少しも出てこないんですが、その彼も今どうしてんのかなあ、なんてことまで考えてしまいました(笑)。
単なる懐かしさとは少し違うんですよね。
過去に思いを馳せる今も、その過去自体も、両方が等しい重さで。
時を超えて普遍的に大切な何かを懸命にすくい取ろうとしている、そんな気がします。
新旧両方の作品に共通してるのはそこかもしれないです。