劇場公開日 2025年5月9日

「懐かしのジンギスカ~ン♪」新世紀ロマンティクス 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0懐かしのジンギスカ~ン♪

2025年5月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

21世紀初頭からコロナ禍までの20年あまりの間で急速な発展を遂げた中国の姿を背景に、1人の女性チャオ(チャオ・タオ)の半生を描いた作品でした。チャオはラストで気合の叫びを上げた以外は、ひと言も声を発しないという面白い設定。彼女ははじめ宣伝モデルをやっていましたが、日除けのためにカーディガンを頭の上に掲げた姿は、何となく鈴木晴信の浮世絵っぽい風情でした。そんな話はさておき、彼女の恋人であるビン(リー・チュウビン)は、彼女を置いて新天地に青い鳥を探しに行ってしまい、取り残された彼女が艱難辛苦を交わしながらも1人で強く生きて行くというお話でした。

そんなチャオの話ではあるものの、注目せざるを得なかったのは中国の発展。序盤に登場する山西省の大同は、まだまだ鄧小平時代を想起させるような風景でしたが、チャオが1人で旅する世界最大の水力発電所である三峡ダムの建設現場は、まさに古き物を壊して新たな物を構築するスクラップ&ビルドの真っ最中でした。そして終盤に再び出て来る最近の大同は、ロボット店員が活躍するショッピングモールが出て来てロボットとチャオがコミュニケーションするなど、序盤に出て来た大同の姿とは雲泥の差でした。
ここだけ切り取ると中国政府の宣伝映画の要素もたっぷりあるという気もするものの、前述の通りビンと離れ離れになってからチャオ自身は1人で暮らしていて、何か国全体の飛躍的な経済的発展ほどに、彼女の経済生活が向上したとは思えませんでした。ただ、青い鳥が見つからず大同に戻って来たビンと出会ったチャオが、一旦後ろ(過去)を振り返ったものの、踵を返して前(未来)を向いてジョギングの隊列に加わって気合の叫びを上げて終わるところは、国は国、個人は個人で別々のベクトルで成長したことを描いていたのかなとも感じたところでした。

あと印象的だったのは都度都度掛かっていた音楽。中国版の懐メロや演歌みたいな歌から、ディスコミュージックやロック調の曲、さらには懐かしの「ジン、ジン、ジンギスカ~ン」まで、選曲のセンスが中々スマートでした。

いずれにしても、中国をメインターゲットにしたトランプ大統領による関税攻撃も、あの手この手で華麗にかわす大国・中国の余裕すら感じられた作品でした。

そんな訳で、本作の評価は★4.0とします。

鶏