「オリエンタリズム、エキゾチズム?そうではないと言い切れる?」グランドツアー talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
オリエンタリズム、エキゾチズム?そうではないと言い切れる?
予告編の段階から、自分はあんまり楽しめないかもしれないと思った。この映画のグランド・ツアーは20世紀初頭ので、植民地政策バリバリの国々の人々がアジアを巡る旅だ。大英帝国だけでなくポルトガルも「立派な」宗主国だ。本来のグランド・ツアーは17~18世紀、イギリス、ドイツの知識人がヨーロッパの源を求めてイタリアを訪ねる旅だ。寒々しい北ヨーロッパの人間にとってイタリアは柑橘類のかぐわしい魅惑的な土地、古代ギリシャ、ローマ帝国、ビザンチン、イスラム、イタリア・ルネッサンスその他その他が歴史のミルフィーユになっている場所だ。だから乱暴な言い方かも知れないが、イタリア行きのグランド・ツアーは上から目線でなくて、下から目線、憧れ目線だ。
時空を超えてアジアの国々を巡り、逃げる婚約者を追いかける女は逞しく楽観的だ。フィルムは白黒とカラー。映るアジアは今のアジアだ。ホテルや駅や列車など、逃げる・追いかける二人がいるのはセットで、キッチュな作り物感が面白かった。逃げる男=エドワード・パートの真ん中と後半は眠ってしまったが、追う女=モリーのパートになってからほぼ眠らずに見ることができた。モリーのあの吹き出し笑いは1回だけにして欲しかった。何回もすると面白くなくてちょっと馬鹿みたいだった。でもそのためか、彼を追ううちにだんだんと衰弱して咳もひどくなる姿は余計に可哀想だった。でも見方を変えると「湿度が高く不衛生で、何が起こるかわからないアジア」というイメージに貢献しているようでもあり、土地の者が危険だ無理だ、と言っても言うことを聞かず金の力で移動を強行するヨーロッパ権力の横柄のしっぺ返しにも見えた。何度も寝落ちしたので偉そうなことは言えないが、映るアジアが今のアジアでも人々は今のアジアの人々の姿ではない。
とても不思議で可愛かったのは木の上に佇むパンダ。面白くて良かったのはナレーションがその時々に映される国の言語であったこと。
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