サブスタンスのレビュー・感想・評価
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ルックがいいボディーホラー
美しさへの執着が辿る末路
見た目の美しさを求め続け承認欲求をいつまでも手放せないエリザベス、禁断の薬に手を出したことから辿る末路が強烈。グロテスクでキャッチーで、とても個性的なホラー作品でございました。
女性なら誰しもが感じる老い。若い時にちやほやされた美人女優でも、歳を重ねると態度を変える周囲。デミ・ムーアは今も勿論美しくスタイル抜群ですが、今が旬のマーガレット・クアリーと比較すると当たり前に霞んでしまう。本作の主演を引き受けたデミ・ムーアの女優魂にまず感動です。
予告編から想像するよりもガッツリホラーで、痛々しくグロテスクな描写を長くアップで映し出すのも印象的。ただ最後の展開はもう何がしたいかエリザベス本人も分かってないでしょうよというぶっ飛び展開で、血塗れ地獄絵図に思わず笑ってしまいました。笑
女性なら共感したり、怖くなったり、ムカついたり、色々感情が動く作品だと思います。面白かったです。
それにしても、朝からセクシーエクササイズを放送するアメリカって凄いな。笑
ショービズもルッキズムもミートゥーも、みんなまとめてグッチャグチャw
一度脚光を浴びてしまったスターは、その密の味が忘れられないのでしょう。引退後にドラッグに手を出した元スター野球選手もいました。ホームランを打った時に出る脳内麻薬物質を外から投与したのでしょうか。
本作の主人公はHollywood Walk of Fameにプレートが埋め込まれている元映画女優です。スタイルは保っているものの、顔に出る年齢はごまかせていません。今はテレビのエアロビ番組が唯一の仕事のようですが、降ろされてしまいます。彼女は若さと美しさを失うとともに、仕事、名声、脚光、賛辞、称賛、全てを失ってしまいます。
豪勢でおしゃれなマンションの部屋は、彼女の心の空虚さと孤独を際立たせます。そんな彼女に秘密の招待状が届きます。秘薬「サブスタンス」を使えば、もう一人の自分が分身として現れ、若さと美しさを取り戻せます。でも本体と分身は同時に活動することはできず、1週間毎の活動になります。初老の女性なら、この招待を断ることは難しいでしょう。彼女もそうです。
分裂したふたつの自己は身体も意識も別々です。本体は徐々に分身の方へ若さを吸い取られていきます。でも止められません。なんとか止めようと思っても、年老いた本体は若い分身に勝ち目はありません。お互いに憎しみをたぎらせ、ついに自分vs自分の戦いが勃発します。
分身狙いでカマかけてくる隣人のバカ男を「FUCK OFF!」と蹴散らす本体に爆笑。できれば分身が連れ込んだイケメンマッチョも本体と遭遇させてしょんべん漏らさせて欲しかった!
ショービズ界が求めているのは視聴者に受ける「若くて美しい女性」です。一方、若く美しい女性の方も、「ルッキズム」を利用しのし上がろうとします。彼女にルッキズムを批判することはできません。でも、馬鹿男や金持ちの年寄が寄ってくるし、若さを失った時には彼女になんにも残りません。商品価値を失ったら見捨てられるだけです。なんとも残酷でいやらしい世界です。
そんなショービズ界や男たちをみんなまとめてグッチャグッチャの血まみれにするエンディングがなんとも痛快でした。監督の怒りが迸りまくる過剰演出が最高です。
それにもまして、デミ・ムーア(62)の女優魂には心を打たれました。全てをさらけ出す鬼気迫る演技、さすがです。顔だけになっても根性で這い進む姿に思わず声援を送りたくなりました。女性監督と女性俳優が織りなす物語はおどろおどろしい女性の情念を見事に可視化したグッチョングッチョンのSFホラー。スタイリッシュで切れのある演出にクローネンバーグ「The Fly」オマージュシーンも挟まれて楽しい一作でした。長い長い廊下や高い高いシャワールームも超クローズアップの多用も光や炎を使ったトリップ効果のあるシーンも気味悪いテーマ音楽もクライマックスの「2001年宇宙の旅(ツァラトゥストラはかく語りき)」も、センス最悪(褒めてる)で楽しい!
年を取るという哀しさ、バカ男共への怒り、過剰シーンとエロシーンの楽しさ、モンスターの気色悪さ、クライマックスのバカバカしさ。観てるこっちの感情までグチャグチャになってしまうところが、普通のホラーとは一線を画すところです。
50歳になると止まる。何が?
デミ・ムーアが50代後半で
撮影に挑んだ今作。
デミ・ムーアアカデミー賞取れなかったのは残念でしたが、
それもまた変わらないハリウッドを象徴している気がしてある意味デミ・ムーアの勝利な気がしてます。
ルッキズムやエイジズムをテーマに
特殊メイクを最大限に使ったボディホラー映画に仕上がっています。
最後は見ている我々を巻き込んだ
最高で最悪な結末を迎えますが、
ここで使われる“血”の使い方が本当に最高です。
冒頭におぢプロデューサーに言われる
50歳で止まる、何が?のラストシーンの伏線回収だなと思うといい意味で吐き気がしました…笑
エリザベス、スー共に
周りから求められる声にぶちギレた時
映像は気持ち悪いのに爽快で秘めてた自分の声を代表してくれているような気がして、(エイジズム的な意味合いが含まれないのが良い)
人によっては大小あれど女性なら一度は味わった経験がある嫌な感覚や嫌な気持ちを解放してくれるように感じました。
エリザベスとスーのやり合いのシーンが
大好きで若者VSおばあちゃんの構図って最高ですよね笑
女って本気を出すとこんなに怖いんだと
改めて自分を俯瞰できる機会にもなった気がしました…
でもやっぱりグロい、汚いシーンは
多いので、半分くらいの段階で他の方のレビューにもあった退場したくなる気持ちには確かになりましたが、
それを越えれば口が閉じなくなるくらい呆気にとられるフェーズに入るので、
是非最後まで見ることをおすすめします。
きっと救済映画になる人も多いはずです。
自分の年齢から来る容姿や精神的な衰えを感じた時に定期的に見たくなる映画かな(グロいシーンは飛ばすかも)と思います。
ありがとうサブスタンス!
ありがとうデミ・ムーア!
デートにはお勧めしない
映画館で映画を観るっていうのは、本来こういうことなのかも知れない
面白そうだけど事前知識でどんな映画か想像できたし、なんとなく観に行くのを後回しにしていた。
しかし周囲の評判があまりにも良いので、ようやく観に行ってみた。
ブラックで露悪的な因果応報の展開は予想通りだったし、藤子不二雄A作品を彷彿とさせるものがあった。
普通だったら「はいはい、なるほどね。やっぱりね」となるところだけど、この映画はそうはならなかった。観終わった直後の感想は「凄い!」ただそのひとこと。
頭の中がふわふわして、映画館を出てもしばらく映画の中に心が取り残された状態だった。こんな状態になる映画は本当に久しぶり。予想通りの展開なのに、だ。
昨今は映画を"情報"だけで理解したつもりになってしまうことがある。
10分程度で内容をまとめてしまうファスト映画なんてものもある。
ストーリーや上なぞりのテーマならそれで分かるかも知れない。冒頭に書いたように自分も観る前に分かったつもりでいた(さすがにファスト映画は観てないけど)。
でもこの映画は予想通りの展開だろうがなんだろうが、そんなことはお構いなしに作品のテーマやらなんやら色んなものを、俳優の演技、衣装、セット、色彩、音響、編集などなど、映画の中のすべてのものに変換して、目から耳から流し込んできた。
これはもう情報なんかで得られるものではない。体験だ。
映画館で映画を観るっていうのは、本来こういうことなのかも知れない。
でも、実際のところそれを実感させてくれる映画というのはそうはない。
それだけ「サブスタンス」は凄かったし、傑作だった。
そして逆説的(?)かも知れないけれど、老いに対するネガティブなイメージが薄らいで、自然と受け入れられる気持ちになれた。
とてつもないブッ飛び具合が最高! 特に後半はホントにパワフルで圧倒的!!
主人公の人気女優エリザベスは50歳の誕生日に老いによる実質上の解雇通告を受け、意気消沈する中、“サブスタンス”なる謎の薬品と出会う、それは再び若さと美貌を手に入れる夢のものではあったが・・・という話
予想をはるかに上回るホラー具合に面食らい、どんどんエスカレートし転がり落ちていく悪夢のストーリー展開にグイグイ引きずり込まれ、中盤から怒涛のラストまでは身体が硬直しっぱなしで観終わった後は魂を抜かれたんじゃないかと思うほどいい意味でグッタリと疲れきってました(笑)、これはなかなか出会えないボディホラーの傑作だと思います
疲れはしましたが『永遠に美しく』(1992)、『マルホランド・ドライブ』(2001)、『ザ・フライ』(1986)、『キャリー』(1976)など数々のホラーやサスペンスの名作エッセンスが垣間見え観ていてすごく楽しくもありました
とにかく全編に渡ってゴアやバイオレンス描写、そして例えば“爪が剥がれる”といった細かく痛々しい描写が多過ぎるので、しばしば目をつぶってました、もうちょっとマイルドだったらありがたかった(苦笑)
なんと言っても印象的なのは本作で今年の第97回アカデミー賞・主演女優賞にノミネートされたデミ・ムーアさん、これでもかってぐらいのシワやたるみ丸出しのどアップやフルヌードまで見せる体当たり演技が素晴らしかったです
大好きな『セント・エルモス・ファイアー』(1985)など中学生時代からのファンなので、ここにきて歳を重ね再び表舞台に戻ってきてくれた事に心から感銘を受けました
そして・・・“他方”のスーを演じるマーガレット・クアリーさんも素晴らしかったです、
彼女もまた これでもかってぐらいのフルヌードに加え“超”バイオレンスなシーンを演じた最恐ホラー度の体当たり演技が凄まじくて圧倒されます、間違いなく彼女の代表作の1つになるんじゃないかと思います
しかしあらためて思いましたがマーガレットさんはやっぱりメチャクチャ美人でスタイル抜群だなあと感心しました、『憐れみの3章』(2024)でもすごく思いましたが今作はそれ以上に魅力全開でそれだけでも見応えがありました
ちょっと話はズレますが今年 第97回アカデミー賞で主演女優賞を競ったのは本作でのデミ・ムーアさんと『アノーラ』(2024)のマイキー・マディソンさんでマイキーさんが受賞しました、そのマイキーさんと本作のマーガレットさんはクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)に一緒に出ています、そんな2人が今やハリウッド映画界の表舞台を賑わせている作品や役に関わっていることに運命を感じると共に将来が非常に楽しみでもあります
総じて楽しめましたが、“サブスタンス“は結局何だったのか?
誰が何のために作ったのか?
など謎のままだったのが釈然としません
でも所詮ファンタジー、そんなことは大したことじゃないか
もう二度と見ませんし、二度と思いません。
こわい。こわい。夢に見そうなくらいこわかった。
スプラッター的なこわさもある。物体X的なこわさももある。
なにより人間のあくなき欲望が生んだことに対するこわさがいちばんこわい。
登場人物が不幸な結末に終わるホラー映画の場合、
「自業自得やん」とか、「因果応報やん」とか、「欲をだすからやん」と思うことが多い。
でもこの映画はならなかった。
老化。誰にでもやってくる老化。
私自身が感じる老化は体力の衰え=それまでできたことができなくなることだ。
エリザベスの場合は、「美しさ」の衰えだ。
だれもが若い時を取り戻したいと思う。
時に悪魔に魂を売り渡してもいいとまで願う。
老化とは「生きる」人間にとって罪悪だと思っている。
エリザベスの存在を忘れたかったスーの気持ちもわかるし、
スーを憎み許したエリザベスの気持ちもわかる。
だれも悪くない。
悪くないと思うから
余計に彼女たちの気持ちと自分の気持ちがシンクロする。
映画のストーリーと自分の気持ちが進んでいく。
そして最期。
だから、若さを取り戻す夢をぶち壊すこの映画はこわいのだ。
ただ、一気に老化してしまったが、若い歓びを分身を通し疑似体験した(と想像した)
エリザベスは幸福だったのかもしれない。
スーは最期の舞台には立てたから、幸福だったのかもしれない。
自分の中で揺れている。
追記>
映画としても面白いと感じるところが多かった。
例えば・・・
序盤は、説明的ともいえる映像での淡々とした展開。
対比するように
終盤は、理屈に合わない「これでもか」とくるコテコテの展開。
(いつどう終わるん、まだやるの、もう楽にしたって…と思いながら見ていた)
また、コミカルな部分もある。
(物体X的なのもそうだけど、舞台で血がドバドバシーンは映画「キャリー」というより
映画「ダウンタウン物語」の子どもたちの総出のパイ投げを思い出したw)
物体X的な変貌もそれが舞台に立つことも想像できなかった。
そして最期のエリザベスのほほえみ。
あと、エンドロールに流れる音。
この映画をもう一度見ようとは思わない。
ただ心に残り続けるだろうね。
あと、デミームーア。あなたはすごい女優だわ。
フランスホラー豆知識入れておきました🇫🇷
若さは正義❌👎🤮外見至上主義批判🔨🩸🪦
つうかオイオイ🥶これはA24かNEONの作品かよ🤮👍まず女性の監督ならではの表現だったとは思います。
この作品て男と女で感想が変わるのと女の人でも若い人と40代オーバーの人だと明らかに感想が変わると思われるし男が見た場合は単に若い女のケツとオッパイ観れて楽しい〜って感想だけだったとしたら正にそういうヤツらに向けた批判なのを分かって居ないって話になるので(デニスクエイドみたいな外見で偏見を言う下品なバカを見てヘラヘラ笑ってるだけとかだったら お前もデニスクエイドと一緒なんだよ気持ち悪いなボケって言う超絶に強いメッセージもあったりすんだよなあ🤮)
あと過去の自分のポスターがこっちを見ていて昔は若くて良かったなあって思わせるシーンが多いしスーちゃんのポスター見て昔の友達に会いに行く前に何回も化粧を💄直して結局行けなくなって発狂するシーンはかなり印象に残る強い演出でしたよ😭
オープニングの🥚の黄身に注射💉して分裂するシーンからの自分の過去の栄誉の🏆記念の石碑で時が流れると風化して老化とともにいずれ忘れ去られていくこの作品のテーマを上手く表現する演出でしたね👍
というかオーロラの彼方へのあのデニスクエイドがこんな役やったのかよってビックリ‼️
まあテーマはルッキズム批判をベースにしてるけどやってる事はフロムビヨンド、ザ・フライ、遊星からの物体X、ブレインデッドのような特殊メイクバリバリのスプラッターホラー作品だしトロマ作品のようなグチャグチャ具合で突き抜け過ぎて楽しかったですよ!(ブライアンユズナの弟子だったら納得なんだよな🤡)
フランスホラー豆知識始めます🇫🇷
🫵ここがこの作品の重要なポイントで🔥フランス映画🇫🇷ってそもそもホラーがポルノ以下と見下されて白い目で見られていた歴史があるから(今もそうなのかは知らないけど🥹フランスのホラー映画に出るとかあり得ないし恥ずかしい事ってのがあってこの作品もアメリカの役者さんばかりだったりするんだろうな🇺🇸)この手の作品をフランスの監督があえて作るってストロングスタイルの猛者ばかりだからアレクサンドル・アジャ(ハイテンション、ヒルズハブアイズ)やパスカルロジェ(マーターズ、ゴーストランドの惨劇)みたいな鬼才が居たりするし(屋敷女もフランスホラーのヤベェやつ)チタンもフランスの女性監督だしサブスタンスもフランスの女性監督だしどうなってんのマジで🤣って言いたくなる度を超えた描写の作品多いしある意味信用できたりするんだよなあフランス🇫🇷のホラー映画は😘(フランス🇫🇷スペイン🇪🇸タイ🇹🇭はホラー映画は凄い作品の割合が高いです!)
あとデニスクエイドがイチイチ若い女最高とか言ってるトイレで手も洗わない食い方もイチイチ汚いゴミクズ野郎過ぎて最高だったしデミームーアはジョーカーのホアキンレベルの演技だし大抵全裸のシーンとかようやるわホンマ😌(とはいえデニスクエイド以外も出てくる男はほぼみんなクソゴミゲボ野郎🤮)
あとスーちゃん可愛すぎかよ🤓
予告の感じではここまで度を超したドロドログチャグチャだと思わないだろうからホラー耐性があるかどうかが運命の分かれ道になってるでしょうね(自分は普通にキモいデニスクエイドに大爆笑しながら楽しめました)
あの年末の舞台でのあのラストの阿鼻叫喚のシーンは度を超え過ぎていて15周くらいして笑ってしまった😂🤣😆(笑いと恐怖って近いモノがあるんだよねえ)
血の量だけでいうとブレインデッドレベルで最近だと死霊のはらわたライジングくらいですかね🩸⤴️
近年だとブッ飛び作品としてはチタンに近いくらいカオスな内容で今年ダントツのとんでもない作品ではありますね!
と言う訳でフランスホラーの女性監督って気合い入って✊🔥⤴️ますね👩🏻🦰👑(この監督の前の作品のリベンジ見ないとダメだなこりゃ)👋🫡
年齢通過儀礼か、誰もが通る道か。美しさに拘る故の苦しみか。
「かわいいが暴走して、阿鼻叫喚」もの凄い作品でした。
デミ・ムーアさんの洗練された完璧な美しさ、鬼気迫る迫力の演技。
マーガレット・クアリーさんの完璧なスーの表現。
そして幅広い縦横無尽な演技に圧倒されました。
デニス・クエイドさんの いぶし銀の凄まじい演技も見事でした。
人は皆、自分の過ぎ去った過去の美しさや功績に輝きや価値を感じる。
経験を積んだり、年齢を重ねながら身に付けた「内面からにじみ出るような魅力、存在感」の価値を忘れて。
どうしても過去を振り返り、失われたものに魅力を感じてしまうんですよね。
後半は凄く怖いシーンも有りましたが、主人公が最後に心の安らぎを得られたのなら、 せめてもの救いでしょうか。
作品を観ながら、色々な思いや自分なりの気付きを得る事が出来ました。
素晴らしい作品との出会いに感謝しています。
それにしても デミ・ムーアさんやマーガレット・クアリーさん、デニス・クエイドさん達 役者さんのスタイル(プロポーション)は見事です。
美しさやスタイルの格好良さって、地道な努力の積み重ねでしか手に入れられないし、維持出来ないんですよね。
だから価値がある。
その時々、各年齢での洗練された美しさ、格好良さを目指し、大切にして行きたいですね。
スプラッター・ホラー
最近のアカデミー賞関連作品に比べれば、展開が気になり、結構面白かった。先住民の悪魔の子を宿した「マニトゥ」かと思いきや、「2001年宇宙の旅」となり、「シンデレラ」を匂わせといて、実は「遊星からの物体X」へ着陸した。個性や性別やアイデンティティの主張とか、生きづらい世の中とか、そんなのどうでもいいと思ってくる。行き着く先がとても気になり、すべてやり尽くした「エリザス」はとても幸せそうに見えた。
まるで鏡に問いかける童話の魔女のように
かつてはオスカーを受賞するほどの元人気女優だったエリザベス。加齢に不安を覚え「サブスタンス」という違法薬品を服用、若く美しいニュースター「スー」を生み出してしまうことから始まるSFホラー異色作。
まず、かなりの血しぶきや痛々しいシーンが多いのだが、だからといって切り捨てられない没入感がある。世界観もまさに80年代B級ホラーフレイバーがかかっている。チープなエアロビダンス&ショービズの雰囲気、ウーファーの効いた効果音、久しぶりにSFXという単語を思い出した。ワケの分からないクレイジーな薬のルール(用法・効用)もシンプル。7日間で母体と分裂個体を交代しなければならない。こうなると物語の筋は御察しである。
御年62歳のデミ・ムーアが50歳の元人気女優を演じているのも面白い。正味50歳当時のデミ・ムーアなら少なくとも若さと美への不安に対する説得力が弱かっただろう。ちょうどいい時に適役を演じているのでは。ハリウッドスターのすっぴん感も出ており加齢のリアリティも申し分なかった。まだお綺麗なのにド焦りするエリザベスをド体当たりで演じている。
以下私なりの解釈。エリザベスは、まるで鏡に問いかける童話の魔女のように、洗面台の鏡を覗く。このままでは自分は忘れ去られる。その孤独と焦燥は、鏡の中の彼女を追い込んでいく。鏡に中に写るのは魔女か姫様か、それとも何も映っていないのか。物語が進むにつれ、心の鏡界線が朧気なっていく有様は見所だ。次第に現実の彼女は、タワマンから見える看板の中のスーとなる。観客は「サブスタンス」のルールの闇に陥ちていくエリザベスを、時折「痛っ」とか呟きながら、冷ややかに楽しんでしまうのだ。そしてこの映画のねらいにのせられている自分がいることに気づく。
最後まで開いた口がふさがらないまま物語は終わる。私には記憶に残る一本となりました。デミ・ムーアさすがっす。
コワイコワイ御伽話
タイトルなし(ネタバレ)
現代のハリウッドだから生み出せた、『モンスターパニック映画』。
スターという人種が生まれたその瞬間から、この世界に脈々と継がれる“若さへの羨望、美への執着”(=ルッキズム)を、往年の名作映画のオマージュを交えながら、徹底的に悪趣味に描いた怪作。
主役の女優が道を外し、身も心も怪物へと変貌していく様は、目を覆いたくなるほどに悲劇的で哀しい。
そんな度し難い怪物の生みの親である我々オーディエンスを文字通り『血祭り』にあげるラストシーンには、醜悪である一方で、ある種の快感すら覚えた。
これはホラー&コメディ映画
まさに強烈
採点4.3
コラリー・ファルジャらしい視点で描かれた、見事なサスペンスホラー。
まず
その、若さと美しさに渇望する気持ちが痛いほど伝わってくるのがすごいんです。
早々にデミムーアの裸を見せて「今でもこんなきれいなんだ、女優ってすごいなぁ」と思わせた後、マーガレットクアリーの肢体を見せ“努力などではどうしたって届かない”事を視覚的に、男性の我々にも分かるほど壁のように突き立てます。
届くとこにあるなら、禁忌に触れるのも分かる気がしますね。
これは女性監督ならではですね。実にうまい。
母体と分身のアイディアも斬新で、実である母体をそのままほったらかすのもリアルな演出でした。
薬品の主やその成分なんて部分に触れないのも、何でも良いから求めてしまう心情にうまくリンクしていましたね。
後半はグロい描写が多く、自身のポスターを使った姿はかなりのインパクト。
ステージでの血飛沫は塚本作品を感じさせ、そのラストに至っては「物体X」や「ジョジョ」を思わせるほどです。何よりクローネンバーグっぽいテイスト。
ムーアの新境地ともいえる名演と、見事な脚本と演出。
求めてやまない渇望を描いた、想像以上に強烈な作品でした。
すごかったです。
全355件中、21~40件目を表示
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