劇場公開日 2025年5月16日

「いろんな意味で見ごたえ十分だけど、ボディ・ホラー的描写にある程度の耐性を要する一作」サブスタンス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 いろんな意味で見ごたえ十分だけど、ボディ・ホラー的描写にある程度の耐性を要する一作

2025年9月10日
PCから投稿

デビッド・クローネンバーグ監督が追求する身体の変容を扱った、いわゆるボディ・ホラーのフォーマットを使いつつ、徹底的にルッキズムの醜悪さを描いた作品です。

特に作品に込めた現代社会批判を読み取ることに楽しみを感じる観客なら、十分観ごたえのある作品です。とは言っても、冒頭から、特に先端恐怖症の人なら目を背けたくなるであろう描写を含んでいるため、鑑賞にはある程度の心構えが必要でしょう。

同じ人格のはずのエリザベス(デミ・ムーア)とスー(マーガレット・クアリー)の関係が徐々に崩壊していく過程が本作の見どころとなっていて、丁寧にこの先こうなるよ、と観客に予想が付くような要素をちりばめてくれてもいます。だが実際の展開は特に描写面において、多くの人の想定を上回るものを見せてくれる、という点で、観客の心理を大いに翻弄してくれます。

確かにスーの容姿は魅力的で、目を奪われます。そんなあなたの欲望がエリザベスに何をもたらすのか、と映画は問い続け、観客もまたこの展開の「共犯者」であることを自覚させます。

とりあえず本作の規格を引き受けたデミ・ムーアは偉い、というか、未だルッキズムが蔓延する映画界に対する怒りの告発であることは間違いなさそう。

鑑賞後は、「ジキル博士とハイド氏」といった本作が明らかに下敷きにしたであろう文学を当たってみたり、あるいは『永遠に美しく…』(1992)など、本作とテーマが共通している作品を観たくなるでしょう。中でも前述のクローネンバーグ作品は、どれも本作の感慨をさらに深めてくれること間違いないので、おすすめです!

yui
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