「本質はホラーではない」サブスタンス ののののさんの映画レビュー(感想・評価)
本質はホラーではない
この映画をホラーやスプラッタだった!と見るのも間違っていないし、若さへの執着で身を滅ぼすホラーコメディだ!と見るのも間違ってない。
監督はむしろそういう演出を過分に入れているし、映像としての衝撃性を出す為にもかなりボディーホラー要素を盛り込みまくっていると思う。
ただ個人的には、この作品は「差別される苦しみ」「自分を愛せないことの苦しみ」が本質のように思う。
年配の権力のある男性たちからは露骨に若い女性が持ち上げられ、老いた女性のルックスには価値なしという世界。それによって思考も毒され、どんなに着飾っても自分が醜くてたまらなく感じ、愛せない。
現実世界ではここまで露骨ではないし、女性のビジュアルを売りにしている職業ばかりではないので、必ずしも現実世界そのままの話という訳では無い。ただどうしても現実世界の風刺的な意味合いは大きくて、例えば企業の受付、事務職、接客業は若い女性がいいよね、みたいな職場も多く存在する。そういう社会の中で生きていくと、女性側も思考がそれに毒されて「若さや見た目や愛嬌を売りにする」「それが衰えたら一部の仕事が無くなる」という思考に刷り込まれていくのはよくある話だと思う。
女性に限った話でもなく、男性の中にも自分の衰えから自己否定に走る人も少なくない。
そういう社会風刺、若いルッキズムへの批難提唱みたいな真のメッセージを描きつつ、ポップな色味とホラー要素で彩った作品に感じた。
そしてやっぱり、映画を見ていくとスーがとてつもなく魅力的に思えて来るのが怖い。最初はエリザベスはとても美人と思うのに、スーのダンスシーンなどを見ていくと本当に目が奪われて、エリザベスが劣った存在に見えてくる。意図的にそう描かれているにしても、差別する側の思考に染まるのはよく出来た映画だと思う。
最後は逆に振り切ったボディーホラーコメディでしめつつ、冒頭でもでてきたハリウッドの道端の描写が重なる演出がとても良かった。
全体的に演者の演技、監督のメッセージ、作品の色味や演出のオシャレさ、世界観はとても好きだった。
ただ誰しもにおすすめできる作品でもない事と、1部どうしても安っぽく思えるB級ホラー的な要素を感じたため、星は4つ。
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