「美魔女」サブスタンス なつ F列さんの映画レビュー(感想・評価)
美魔女
エリザベスは綺麗でボディや姿勢、輝く笑顔でエアロビクスをする様はとても素敵で決して醜いものではない。その身につけたものはスターとして、スターであるが為の彼女の努力の証。
それを踏みつけるのはプロデューサー。
この男のトイレやエビのシーンなどかなり醜い世の中によくいる「若くて綺麗な娘」しか認めない下心ではなくむしろオープンクソ野郎すぎて、嫌悪感を煽る煽る。アップになる画面も音もヤダヤダ。
そんなこんなで50才の誕生日すっかり仕事も干され、えぇー!ってなったらガシャーン!と交通事故。
とんだ50代の始まりだよ。
薬に出会う為の病院設定はいいけどあんな衝撃シーン使う?って位で序盤からしっかりハイカロリー。
巨大看板からエリザベスの看板は撤去され、本当に彼女の時代は終わったのか?しかし若い男から手渡されたUSB。若さと美しさ、完璧な自分。
番号をたよりに到着した薄暗い通路から入ると真っ白な部屋。ドキッとした。
そして、説明書を読み白いバスルームで…注射を…
ここからがもうしんどいというか、速く激しく光る画面、激しくうめき、苦しみ、身をよじり、見開く瞳。この光景をしっかりじっくりと見せつけてくるので、そこで私はエリザベスになっていた…苦しい苦しい…背中がゆっくりと裂けていく、苦しい…エリザベスの痛みを完全に擬似体験していく私は今度はスーになっていた。ボコボコと水の中にいる様な音、羊水から産まれでたボディ。
交替するのは1週間
美しく若いスーの姿でエリザベスの後釜をしっかりキャッチ。その辺りはまだスーも1週間を守る。交替したエリザベスも1週間をきっちりチェック。
そこはまだまだ2人は1つ!と思っていた。
若さと美貌を褒め称えられ認められたスーはだんだんとエリザベスを老いたおばさん扱いする。エリザベスの荷物をまとめ、隠し扉をDIYしてエリザベスを突っ込み男を連れ込む。そりゃ20代と50代なら洋服もセンスもまるで違うよ。スーの服はポップなカラー。
ショッキングピンクのレオタードを身に着けてエアロビクスを踊る彼女をカメラは胸、腰、お尻と舐める様に追う。健康的な朝のエアロビクスがまるで夜のエッチな番組に早変わり。
エリザベスが飾っていた巨大看板もセクシーなスーの看板に。揺れるヤシの木。
誰かに認められたい、見つめて欲しい。人間誰でも思う欲求である。特に彼女はトップスターで常に賞賛され続けていたのだ。1番でなくてはならない。歯牙にもかけてなかった元同級生、世界一可愛かったと言ってくれた彼。彼なら褒めてくれるのでは?自分の美を、存在を。めかしこみ鏡を見る。出るとスーの大きな看板。胸元が、頬が、肌が、全てが違い過ぎる絶望を看板1つでエリザベスの心を砕いていく。
だんだんと狂気に堕ちるエリザベス。ストレスから過食し、フランス料理をテレビの中のスーを観ながら作る様はまさに狂人。半身がミイラ化。
スーはそんなエリザベスから脱却しようと安定液を搾り取る。
この映画は本当に男がクズ。
代表格のプロデューサー、隣人、スーの恋人はバイクで嫌がらせ。寄ってきた元同級生も泥水に浸かったメモをよこす。ルッキズム野郎共で吐きそう。
スーの晴れの舞台の日、遂に安定液がなくなり慌ててもエリザベスは空っぽ。安定液を作るには入れ替わる必要がある。変わった途端、エリザベスは老女の様な化け物の姿になる。もう終わりにしようと例の場所で薬をゲット。この辺のエリザベスの行動は超速くて面白い。
注射を打ち込みゆっくりと入る終わりの液体。
その瞬間、エリザベスはスーを目覚めさせる。
「あなたは私なの!」
えぇーーーー。さんざん歪みあってたじゃん!もう他人じゃん!こだわる理由がわからない。しかし、自分の中から産まれた美貌。老いてしまった自分よりスターである分身…
目覚めたスーにボコられて殺害されてしまう。鏡に顔を打ち付け老いた顔と美女の顔が交互に映る。怪力スー
衣装を纏い本番に近づくスーに異変が起きる。そら、本体殺したしね。歯が抜け耳が取れ。家にあったもう1本!打ち込んだ途端ブクブクと膨れ上がり、あらゆる器官があらゆる場所に。
胸と鼻が…
モンステロエリザベスーがリ・ボーン!
え?まだ続くの?!
エリザベスの切り抜きを顔に貼り、青いドレスで舞台に立つ。肝心の本人の顔は見えない所にあるんだな。スーが得た大舞台=私の舞台。私が得た大舞台。さあ賞賛を!
今までよく気づかなかったな…ってタイミングでバケモノー!するとエリザベスーから血がブッシャーーー!!
こ、これは…いやもういい、血液はお腹いっぱいだよ〜ってなってもまだまだ吹き出す!最高にハイってやつだー!
もう笑うしかないほど出てくる。
そしてエリザベスーは道路を這い己の名前のウォークオブフェームの上で賞賛の中、微笑みながら。
美と賞賛に固執した哀れな女は清掃マシンでその名を終える。
全体的に観ていてしんどい。
音もエクササイズのドンって重低音が要所で鳴るし、カメラもアングルも面白くあちこちをアップで撮るので楽しいけどドキッとする。カメラのフラッシュなどもあるのでしっかり観ないとふり飛ばされてしまう。
お腹の下辺りがずっしりと重くなり息を詰めて画面を見つめながら、老いってなんだろうと考えた。
追記:サブスタンスからの指示カードなどのフォントがシンプルで無機質な所が生々しい内容と反比していて恐怖を煽る…細かい所までしっかり不気味。
白く閉鎖的な空間ってのも湿度高い。
これはR15じゃダメだよ〜
なんかこっちが搾り取られた。脊髄から。
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