「YOU ARE ONE」サブスタンス ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
YOU ARE ONE
アカデミー賞2025作品も残り少なくなってきましたが、ルッキズムや老いをメインにした今作がどう転ぶのかな〜と思っていましたが、とんでもなく大好物、とんでもない代物に仕上がっていました。
先が見える、見えるけど絶対に面白いぞ〜と思ったら予想以上の展開を魅せてくれるのでやられっぱなしでした。
50代に突入した事により、仕事が減ってしまったエリザベスが若返りの薬もといシステム"サブスタンス"を利用して起死回生のチャンスを狙うといった作品で、どんどん悪い方向に転がっていくんだろうなと分かりつつもそのライド感からは逃れる事ができませんでした。
サブスタンスのシステムが母体と分身に分かれる機能、それぞれに流すための栄養と一見複雑そうに見えて整理すればパパッといけるやつなんですが、これを使用した直後からいきなりフルスロットルで展開が襲いかかってくるのでこれはこれは大変です。
ポップコーン食べながらの鑑賞だったので更に更に大変です。
気がついたら若返ってるとかじゃなく、使用した直後に体に異変が起こり、目もぐわんぐわんし出して体もボコボコし出したかと思ったら、背中がパカっと割れていく羽化スタイルでやってきたのでヒャ〜となりました。
苦しみ抜いた末に生まれたのがボンキュッボンが極まった若いエリザベスで、視界を横にやると50歳のエリザベスが背中ぱっかーん状態で倒れているという、よくパニックがそのくらいで抑えられたなと思うくらい冷静なエリザベスにここら辺から狂気を感じ始めました。
解雇された番組に出戻って、再びスターへの道を駆け上がっていくという道のりを辿っていき、名前もスーと名乗ってから悪態をついてきたお偉いさんを見返すところまで順調に行ってたんですが、徐々に若いスーと元のエリザベスで乖離が生まれ出してくるのでゾワゾワワクワクが止まりませんでした。
エリザベスの時はどうしても虚無感に襲われて、その分スーで味わうキラキラに飲み込まれていき、スーでいる時間を長くしたからここからヤバいぞ…と思ったら早い段階で症状が出てきて、皮膚が爛れていき、体の部位がボコボコし出していき、あれよあれよと言わんばかりに醜い姿になっていく過程は中々にキツイものでした。
しかも人格は一つのはずなのに、スーとエリザベスで喧嘩し出してしまい、スーはエリザベスのだらけっぷりを、エリザベスはスーの身勝手さを貶めていき、その結果互いを時間差で傷つけていきますし、エリザベスがもう完全に老婆になってからの暴飲暴食っぷりはもう圧巻としか。
年末年始に生放送特番が決まりました!と来たら絶対そこで大変な事になるだろう、本番中に顔がボロボロっと崩れていくんだろうと思っていましたが、そんなもん軽々と凌駕していくとんでもないものをお見せしてくれてもう慄きっぱなしでした。
いよいよスーとエリザベスが2人で一つのはずなのにそれぞれ1人になってしまったが故に取っ組み合いの大喧嘩、というかフィジカルやら体力面やらで有利すぎるスーがとんでもないレベルでボコボコにしていき、ついには絶命まで追いやるというもう観てる側はドン引きしっぱなしでした。
いよいよスーの状態でも鼻血が止まらなくなったり、歯が抜け落ちたり、爪が取れたり、視界がぐわんぐわんしたりとして、元の自分に戻ろうと最後の薬を打ったらあらあら大変、元に戻る、若返るどころか、いよいよモンスターになってしまうというその展開は流石に予想してなかった…と一本取られました。
顔はグチャグチャで体も汚く、なんなら顔が背中にあったり、どこもかしこも折れそうな状態だったりと完全にヴィランの様相でした。
しかもその状態でスーの時に来ていたドレスを身に纏い、特番の会場へ出向くというもう可愛いどころかスーを止められない!カオスさが加速していきました。
モンスター状態で行った会場でダンサーたちが笑顔を崩さないようにピクピクしているところから面白かったですが、観客が悲鳴を上げてからの会場の阿鼻叫喚っぷり、そこからの血液ブシャーで観客血まみれになるとんでもないパフォーマンスにやられ、冒頭のオーディションでの何気ないセリフ「おっぱいが顔にあればなー」の伏線回収をまさかこの場面でやるとは思わず、顔からおっぱいがボロンと落ちてきてもう心の中の変態がタップダンスし始めてしまいました。
そんな状態で会場から抜け出し、いよいよ体が全崩壊してここで終わりか…と思ったらもう顔とヘドロで動き出すのであらあらまぁまぁと。
ハリウッドでスターだからこそ作られる地面に自身の名前が刻まれるモニュメントから始まり、そのモニュメントで溶けて終わるという洒落っぷりに不思議と心地よく終わらされるのも面白いところでした。
体の破壊描写が素晴らしく、痛々しさとグロさを両立させたエグみを兼ね備えており見応え抜群でした。
とんでもない怪作を観れました。
ルッキズムや老いをなんとかしようとなるとこうなってしまうぜという反面教師なのか、フィクションだからこそできる暴力的なまでの演出なのか、なんにしろ142分あっという間でした。
今年のアカデミー賞レベルが高すぎる…!
鑑賞日 5/18
鑑賞時間 10:50〜13:25
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