劇場公開日 2025年5月16日

「化粧をし直す描写は女流監督ならではの視点」サブスタンス かもしださんの映画レビュー(感想・評価)

3.5化粧をし直す描写は女流監督ならではの視点

2025年5月17日
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鑑賞方法:映画館

怖い

斬新

若さと美貌にこだわった怪奇小説を彷彿とさせる大人向け御伽話。
本作の冒頭と終盤に出てくる路面に埋め込まれた名前入りの星が本作の全てを物語っておりました。
「美」に固執し、「美」によって承認欲求を満たし、「美」によって身を滅ぼす女優の姿がそこにあります。

導入の二つに分裂する卵黄、
シンメトリーになったTV局の赤い廊下、
白が基調となった清潔感溢れるトイレ、
そしてゴミ箱に捨てられるサブスタンスのUSB、
開始僅か5分足らずで描かれるそのどれもが絵画の様に美しく、観る者の目を釘付けにしてきます。
特に塵ひとつすら感じさせない映像からはスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」の様な清潔感すら感じてしまいました。
そんな中、デニス・クエイド演じるTVプロデューサーを下品に描く事に躊躇していない点に惚れました。
汚らしくエビを食べ、無節操に煙草を吹かす口元をアップにして、美の世界で生きている女性とは正反対の存在として描き、汚しい男性なのだという事を上手く印象付けていたと思います。

とにかく「美」にこだわる作品として映像は品を保っているので汚しい描写でもあまり不快感を感じない点が素晴らしく、デヴィッド・クローネンバーグの新作と言われても違和感を感じない肉質的なグロ描写でさえ「美しい」と感じてしまいました。
特にクライマックスでの「赤」の使い方は絶品!
監督の前作「REVENGE リベンジ」をご覧になっている方ならばお分かり頂けると思いますが、画面を染めていく「赤」に汚しさなどは一切なく、ひたすら息を呑むほどの迫力に圧倒されるばかりになってしまいます。

美しさとグロ、清潔感と下品、相反する価値観が巧みに混ざり合い「若さ」と「美しさ」を追求する御伽話。
生ぬるいチビッコ向けおとぎ話に飽き飽きした人には劇場入りをおすすめします。

余談ですが、クレジットにレイ・リオッタの名前があります。
どうやらクエイドの役を亡くなっていなければリオッタが演じる予定だったらしいです。
彼も品のない役には定評がありましたもんね♪

かもしだ
ノーキッキングさんのコメント
2025年5月17日

中盤までは映画らしかったのですが、なにもクローネンバーグやキャリーをやる必要はあったのか? まあ凡庸な啓発ものに思われたくなかったのでしょうが……
ポンコツのクエイドは愉快でしたが、女優二人の今後が心配。

ノーキッキング
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