劇場公開日 2025年5月16日

「度肝を抜くとはこういう事」サブスタンス Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0度肝を抜くとはこういう事

2025年5月17日
iPhoneアプリから投稿

近年、承認欲求というワードを耳にする様になったのも、誰もが手軽に使えるSNSの影響からだ。本作はそれを50代となり人気も衰えたタレントに置き換えて描いている。年齢や性別関係なく、誰もが認められたいと思うものであり、それは勿論叶うならば若くいたいと思うものである。それが、過去に数多くの栄光を勝ち取った人間ならば、よりそれを強く感じてしまうはずである。芯強く芸能界に残るという意思と、年齢、時代遅れという現実に苦しめられる主人公を、デミ•ムーアが好演している。間違いなくこれは彼女にとって代表作になるだろう。それらの思いが狂気に満ちていくのはすぐに予想できる物だが、本作はそれを大きく裏切る形で爆発するのである。どんな映画好きでも、こんなオチを予想できた人間が果たしていただろうか。アカデミー賞受賞という大きな話題を呼んだ本作だが、映画作品として最高のエンターテイメントを提供してくれる、本年度No.1の作品だ。
人間の狂気を描くにあたり、心理描写や人間描写に主眼が当たるとどうしても絵的には地味になってしまうが、それをポップな表現や、セクシーなお姉様方で彩ってギャップ的に描くのかと思っていたが、それだけでなく映画ファンは勿論、話題作だからと気軽に鑑賞した人間らを怒涛の如く楽しませるか、ドン引きさせるかの作品だ。
設定上"生まれ変わる"の定義も出だしから驚かされたが、それらのシーンでは素人がやって良い事なのかと思う様なツッコミどころもある。細かな取り扱い説明書も無い箱に入った薬なんて自分なら絶対に使わないが、まるで知っているかの様に手際よく出来ちゃうのはイマイチ現実的では無いが、この映画で現実を語るなという事だろうか笑

また、"生まれ変わった"バージョンの「スー」はあれだけ"自分自身は1人だけだ"的な注意喚起をしていたにも関わらず、主人公の意思とは異なる様な動きをしており、お互いに目覚めてびっくり的な展開が多く、「君の名は」の様になっていた。そこら辺の描写ははっきりとは描かず、どこまで自我が効くのか疑問に思った。
そんなモヤっとした展開も、今までの世界観無視と言っても過言では無い展開で綺麗に吹き飛ばしてくれる。ラスト15分位になるとリアリティだとか怖さを吹き飛ばして無双状態に突入していく。そんな中で劇中のセリフである、「鼻の代わりにおっぱいが付いてれば良いのに」を見事なまでに伏線回収してくれる。このシーンには笑ってしまった。特徴的な建物や、主人公以外の人物らを気持ち悪く描いたり、食べ物をやたらと不快に描く様な演出など、どこか異質な作風は、デヴィッド・クローネンバーグを彷彿とさせる様に思える。と言ってもあそこまで不親切な映画では無く、先述の通り最高の映画体験が出来るのは間違い無い。こんな作品には滅多に出会えないだろう。

Mina
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