劇場公開日 2025年5月16日

「一方的な価値観で女性を定義してきたハリウッドが自己批判をし古い価値観を思いっきり嘲笑っているが、振り切りすぎて「阿鼻叫喚」なので要注意」サブスタンス Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5一方的な価値観で女性を定義してきたハリウッドが自己批判をし古い価値観を思いっきり嘲笑っているが、振り切りすぎて「阿鼻叫喚」なので要注意

2025年5月17日
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鑑賞方法:映画館

"substance" とは「物質」とも、「薬物」とも訳せるが、今回は後者。

若さと美貌を保ちたいという欲望は多くの女性の願いなのであろう。ましてや、それを売り物にしている芸能人であれば尚更だろう。

その欲望が歪んだ形で表れることを描いた作品としては、1950年のビリー・ワイルダー監督作品『サンセット大通り (Sunset Boulevard)』などの古典的な作品も思い出されるし、「不老不死」のようなモチーフであれば、それこそ世界中の神話や古典の中に見出せる。

私自身はアンチ・アンチエージングな立場で、別に自然に任せればいいじゃないか、と思っている人間なのだが、世の中的には、メディアなどの刷り込みの結果、きっと強迫観念のように「若くあること」に固執し、重きをおく価値観を持った人々の方が一般的になのだと思う。

プロデューサーのハーヴェイが大晦日特番(日本なら紅白的な位置付けだろうか)が始まる前にホストを務める女優のことを「私が作り上げた傑作」という表現をしていたが、まさにこの特番の舞台に登場するのはこのようなメディアそのものが作り上げたもの。そしてそれは、メディアにある意味洗脳され、「こうあらねばならぬ」と思い込むようになった一般大衆の姿でもあるのだろう。

とは言え、外見に左右されずに中身を大事にしろ、というメッセージであれば、古くは『エレファントマン』、近年では『シェイプ・オブ・ウォーター』なども当てはまるだろう。

さらに、映画好きであれば「ハーヴェイ」という名前を聞けば、現在は投獄されている大物映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインを思い出さずにはいられないのではないか。自分の思い通りにするために多くの女優を蹂躙してきた人物の事件は、その後に世界中でMeToo運動を引き起こし、そこから数年遅れて日本の芸能界でも問題が表出するようになった。

型にはまった一方的な価値観で女性を定義してきたハリウッドが自己批判をしながら価値観の転換を迫り、古い価値観を思いっきり嘲笑っているのが本作なのかも知れない。

ただ、それが振り切りすぎて、後半は思った以上に「阿鼻叫喚」だったので、鑑賞は要注意。

Tofu
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