「まさに阿鼻叫喚だが、やるせなさも」サブスタンス nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに阿鼻叫喚だが、やるせなさも
女性に若さや美しさを求める価値観を露悪的にコミカルにグロテスクにぶつけてくるホラーで、とても面白かったです。
ビビッドなビジュアルに不穏感を煽る音響や、容赦ない肉体変容描写など、映像的にも見応えがありました。
主人公二人、体当たり演技はもちろんのこと、台詞がなくとも表情や仕草で伝える演技も素晴らしかったと思います。
「かわいいが暴走して、阿鼻叫喚」というコピーを見た時は、今時「阿鼻叫喚」って、久し振りにこの四字熟語見た、などと思っていましたが、クライマックスはまさに阿鼻叫喚と呼ぶに相応しい狂いっぷりで度肝を抜かれました。
シニカルなコミカルさもありますが、やはり価値観に囚われた主人公の末路はやるせないです。
旧友に会おうとするくだりは本当に痛々しいですし、主人公同士で争うのも、自己嫌悪、自己否定、自傷行為ということになると思いますし。
若く美しくなければ価値がない愛されない、という価値観の呪いに心の底から苛まれているのだろうと。
女性に若さや美しさを求める男性の方はこれでもかというくらい能天気で醜悪で、クライマックスはそんな価値観を育んでいる男性や世間に対して痛みをぶちまけてやるという怒りもあるように感じました。
作品は日本でいう昭和の時代の話のように見えますが、こういう価値観は今でも根強く続いていますし、SNSの流行もあり、ショービジネスの世界に限らず一般人や子供にまで広く強く刷り込まれるようになっていると考えると、気が滅入ります。
ついでに、シネコンではこの作品の宣伝用の大きなパネルが飾ってあったりしましたが、ドラえもんのパネルの横に並べてあったりして、子供向け作品と並んでいるのは何だかシュールな感じで笑いました。