ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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性欲と金銭欲の果てにあるものは
雪が降るなか、とことこ歩いて映画館へ。アカデミー賞取ったんだから観とかないとね。そして感想文です。
アノーラの富への欲望とイヴァンの性欲が見事に一致し、それが恋愛に発展した。それはそれで偽りではない。そしてイヴァンがアメリカの市民権を欲することと相俟って結婚へと急展開。
若い2人は欲望のままに激しいSEXを繰り返す。そしてらんちきparty。もちろんこんな経験はないけど、心象風景として若い頃を思い出す。
しかしそんな愛情も長続きをするわけもなく、イヴァンの両親であるロシアの大富豪の登場でThe End。当たり前すぎる結末を迎える。恋愛というのは波がある。その二人の波長がばっちり合えば二人にとってその恋愛は映画(小説)のようなロマンチックな状況にもなる。しかし掛け違いが起こると苦しみや喧嘩、そして坂道を転げ落ちるような結末を迎えることもある。その繰り返しだ。そんなもんだ。
性に溺れるバカ息子イヴァンも性風俗で働く尻軽なアノーラも、批判する気には到底なれない。そしてあの嫌みったらしいロシアの大富豪も彼らからすれば当たり前の行動だ。あの程度の横槍で止めてしまえる恋愛なんて長続きをするわけないからね。
そして見事なラストシーン。最後のアノーラの心の痛みはよく分かる。あれは本当に切ない。がんばれアノーラです。
全部わかってしまう、そして認めてしまえる僕は年をとりすぎたのかな。いや、映画監督の手腕というやつだろう。だってこの映画に出てくる人達、誰も憎めないんだから。
ラスト3分は見応えあり
少し心離れてしまった
18禁は勿体無い
いつもは満点なのに
タンジェリン以来「この人が撮ったなら無条件で観る」監督なので、オスカー獲得は全くご同慶の至りではありますが、いつものベイカー節は若干不足気味と感じました。
ドラッグ、同性愛、移民など貧困層の悲哀をカラッと描くのがこの人の真骨頂で今回も定番の移民を扱ってはいるものの、室内場面が多くてスラムなどの屋外描写が殆どないので、いつもの「アメリカの現実」感が希薄な印象です。
全体的には前半がやや冗長、後半はドタバタ気味ってとこでしょうか。
尤も、アイリッシュ、イタリア、ユダヤ、ポーランドなど国籍ごとの移民に対する明確なイメージを持ち得ない他国人には直感的な理解は無理、とするのが本当のところでしょう。
とはいえ個人的には「ベイカー・メーター」は期待の水準は十分満たしています。
ただ、これがオスカー、すなわち2024年を代表するアメリカ映画なのか?という疑問も残りますし、2000年代以降のオスカーはどんどん三大映画祭に近付いていますね。
面白いから観てみなよ、ってオススメできる作品かどうかは微妙ですし、どこが面白いの?って感想を持つ人がいても不思議はありません。
前半はパリピ映画過ぎてアウェー感ビシビシだったけど 途中からアニー...
賞を取れても日本で理解するのはかなり難しいか(補足入れてます)
今年74本目(合計1,616本目/今月(2025年3月度)8本目)。
賞を取ったという事情もあり、大阪市は小雨も降る中8割埋まりが印象的でした。
ストーリーとしては、ロシア系にルーツを持つアメリカ人のカップルが成り行きで結婚したらそれを許さない家族が介入して結婚するのしないの、離婚するのしないのといったお話。もちろん多くの方か書かれている通りR18なのでエッチなシーンは結構多めです(違法薬物を勧めるようなシーンはなかったかな?あってそちらはPG12程度か)。
結果的に賞を取ったことは客観的に評価できるし、ただ日本でいうR18相当でいう「エッチな映画」という点はあるものの賞を取っただけのことはあり、それ以上の深みのある内容になっています(まぁ、前半からそのシーンが多すぎてアレなんですが…)。ただ、最終的に大賞を取るほどか?というと微妙かなぁ(特に去年と比較として)という感想を持つ方が少なくはないと思うところ、アメリカ映画であり、日本で見る場合、相当な知識が要求される点がそうそうきついかなという印象です。
個人的には、ロシアが今リアルで置かれている現状等も勘案しても、政治とエンターテインメントを区別して作成されていた点も良かったところです。
個々気になった点を触れつつ採点いきましょう。
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(減点0.4/日本で見るにあたり特殊な知識が必要な点が2点存在する)
このことは後述します。
(減点0.2/分離不定詞について)
「あなたにやっと会えてうれしいわ」というシーンが
> It’s so wonderful to finally meet you.
…となっていますが、不定詞(ここでは to meet )の中に他の語句(通常は副詞。ここでは、finally )を入れるのは文法的には分離不定詞といって(日本語では「ら抜き表現」にあたるような立ち位置)、非文法的とされます。もっともこれ以外の解釈はそもそもできないし、許容するネイティブもいますが(ここは個人差が出る)、少し配慮が欲しかったです。
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(減点なし(上記の0.4に相当)/深い知識が必要なシーン)
・ ネバダ州で結婚したのからそこでないと離婚できない
日本では離婚などを扱う家庭裁判所に相当するシーンですが、アメリカではある州で結婚すると、その州でしか裁判上離婚ができません。このことを指しているのですが、このことは日本人には常識扱いではないので少し工夫が欲しかったです。
・ 「「トッシュ」して」について
ここは「フランス語じゃなくて英語で話してよ」のようにフランス語です。フランス語の toucher (英語:touch)は英語のそれと同様に「触る」の意味がありますが、フェンシング用語で「(剣などで)突く」の意味があり、その過去分詞形です。そこから転じて「(相手のいきなりの言動から)一本取った・取られた」の意味があります。
※ この点は先行上映された海外などで「トッシュって何?」の質問に関して回答があり、この回答で正しい模様(フランス語を話すカナダからのレビューアもこの点触れている)。
ただ、英語の touch から類推は可能だとしても発音は全然違うし、ここはある程度誘導が欲しかったです(ロシア系映画ともいえるこの映画ではロシア語ネタも出るし、かなりの言語ネタが登場するので、ここでフランス語ネタが出ると尽きる人が続出しそう)
タンジェリン、フロリダプロジェクト
「タンジェリン」で高評価を得、
ウィレム・デフォーを招いた「フロリダプロジェクト」は、
力が入り過ぎたか、
メッセージが先行して、
シナリオ、演出ともにキャストに頼り過ぎている感は否めなかった。
本作も期待薄だった。
しかし驚いた。
メッセージをストーリーに、
キャラに馴染ませて、笑わせて、グルーブして、
言葉と行為でF〇〇Kの連打、
レニングラードカウボーイズがゴーアメリカするような、
間の抜けたタンジェリン風広角レンズも良かった。
「T-34」のバキバキのイゴール(ロシア語で兵士)も、
おばあちゃん子の一面を強調し、
キャラに柔らかさを加えることで物語に奥行きを持たせている。
ソ連崩壊後のロシアの闇社会とアメリカンドリームの対比を、
オリガルヒ風の息子イヴァンとダンサーアニーの結婚を通して、
描き出す本作は、
ショーン・ベイカー得意の、
社会風刺と人間ドラマを融合させている。
EDロール中に流れるおばあちゃんの車のディーゼルエンジン音も、
この映画のエコーチェンバーのように作品全体を締めくくっているのも印象的だ。
ディーゼルエンジンという、
東西の文化的背景が織り込まれた音響の選び方が巧妙で、
この音に物語の全てが詰まっているような気さえする。
東側と西側の対立や対比というテーマを強調する一方で、
それが全体のメッセージに、
あるいは二人のストーリーに、
どう繋がるのか、
観る者に考えさせる余地を残している。
西側では避けられがちなディーゼルエンジンが東側では主流であるという設定を、
物語の本筋と巧妙に絡めることで、作品のテーマ性が自然と深まっていく。
このように、本作は、
シナリオや演出、キャラクターの深みが融合した作品であり、
力が入り過ぎた前作とは多少は異なり、
ショーン・ベイカーの今後に少しは期待を持たせる作品となっている。
【蛇足】
アニーとイヴァンがゲームをしているシーン。
ホームヘルパーのクララが掃除機をかける、
脚を上げるアニー、
ドラッグをクララにすすめるイヴァン。
このシーンは、一見何気ない日常の一コマのように見えるが、
監督はその背後に潜む微妙な感情の機微を描こうとしていた気がする。
非常に無邪気でありながら、同時にその無邪気さが持つ危うさ、
一見すると軽い冗談のようにも見えるが、
その無邪気さには何とも言えない緊張感が漂う。
無邪気さと無責任さと邪気が、
ギリギリと交錯する空気そのものであり、
安易に共感し合う事もできない、
そこを描ききれない、伝えきれない、
撮影はしたが編集でオミットしたのかもしれない、
はっきりとした答えは映画の中で提示されることはない、
これをやりたいんじゃないの?監督。
こういう細かい繊細な積み上げも
シナリオと演出で描写していければショーン・ベイカーも、
名実共にオスカー監督としてリスペクトされるだろう。
これが、天下のアカデミー賞5冠作品!?ってのが正直な感想^^;
auマンデー『アノーラ』
アカデミー賞2025作品賞は #名もなき者 だと思ってけど・・・
R18指定のアノーラが、作品賞と主演女優賞含む5冠!!って事で、名もなき者から予定変更して観て来ました🎬
ストリップダンサーが、ロシア超金持ちのバカ息子の道楽に翻弄され・・・
相手家族巻き込み大騒動になるエロチックコメディ
R18なんで、それ相応のシーンが、ジャブのように組み込まれてますが、会話が面白いので飽きずに観れます
ラスト、ずっと損な役目だったお目付け役のイゴールの至福に思わず頷いた^_−☆
ただ監督は、大勢の人に劇場で観てって語ってましたが、R18やし単独行動の映画好きオジサン向き(๑˃̵ᴗ˂̵)
私的にこれが、天下のアカデミー賞5冠作品なの!?ってのが正直な感想^^;
祝!アカデミー賞5冠! とびきり魅力的な女優の演じる、最高のタフ・ヒロインに乾杯!
祝! アカデミー作品賞&主演女優賞(他)受賞!!
というわけで、さっそく行ってきました。
いや、マジで普通に面白かったは面白かったけど……
よくコレで獲れたな、アカデミー賞!!!
ファ●クって叫ぶか、
ファ●クしてるかだけで
ほぼ出来てるような映画で(笑)。
でも、まあ一周回って、
これがポリティカリー・コレクトの
最前線なのかもしれないと思ったりもして。
「ど真ん中の女性映画」って意味では、
きちんと近年の流れを汲んでる気もするし。
とにかく、アノーラによる、
アノーラのための映画。
あるいは、
マイキー・マディソンによる、
マイキー・マディソンのための映画。
このとびきり魅力的な女優による、とびきり魅力的なキャラクターを堪能するためだけに供される140分。いろいろ面白いこともあれば、意外なことも起きるけど、一本「アノーラを見せる/アノーラで魅せる」という部分では、しっかり筋が通っている。
生命力にあふれ、逆境に負けない、不屈のヒロイン。
彼女はたしかにストリッパーだし、エスコート・ガールではあるけれど、間違いなく、グロリアや、ウォシャウスキーや、サラ・コナーや、リプリーや、フュリオサにも負けない「タフなヒロイン」だった。
アノーラは、タフだけど、思いっきり女としてふるまう。
(男のように強い一世代前のタフ・ヒロインとは毛色が異なる)
アノーラは、セックスを一切タブー視することなく、
コミュニケーションの手段として用いる。
(男性を寄せ付けないようなタフ・ヒロインとは対極の存在)
アノーラは、刹那を愉しみ、ピンチにひるまず、状況の変化に即応する。
これこそはある意味、「強い女」の「最新形」なのかもしれない。
― ― ― ―
お話としては、『プリティー・ウーマン』かと思って観に行ったら、途中でタランティーノみたいになったでござる、といった感じで、一見かなりの「変化球」にも見える。
だが、考えてみると、
ロシアのバカ息子も、アノーラも、
大富豪の子分たちも、アノーラの同僚たちも、
出てきたときからキャラクターには嘘偽りがない。
ずっと、そのままのキャラクターだ。
お話の都合でキャラ変したり、隠されていた秘密が明かされたりはしない。
契約恋人としてのバカ息子も、
結婚相手としてのバカ息子も、
ビビッて逐電するバカ息子も、
親の前でしおしおのバカ息子も、
ちゃんと一続きのキャラ付けになっている。
どのキャラも、それぞれのシチュエーションで、そのキャラが取るであろう行動を必ず取る。事前にインプットされた性格と個性に反した行動を決してとらない。そのせいで、最初に期待されたラブ・ストーリーは、オフビートな捜索劇へとおのずからツイストしてゆかざるをえない。
要するに、本作のキャラクターは脚本の傀儡ではない。
ドラマツルギーの奴隷ではない。
むしろ、キャラクターに合わせて、
物語が脱線し、妙な方向に地滑りを起こし、
先読みの出来ない方向へと突き進んでゆく。
そんな感じだ。
この映画では、ストーリーがキャラを動かすのではない。
キャラクターがストーリーを動かすのだ。
― ― ― ―
昔から「聖娼婦」「無垢なる娼婦」が出てくる文学や映画は結構あった。
それこそ、大昔の小デュマの『椿姫』やモーパッサンの『脂肪の塊』だってそうだし、僕の大好きな映画でいえば、『カリビアの夜』のジュリエッタ・マシーナとか、『ケーブル・ホーグのバラード』のステラ・スティーブンスとかだってそうだ。
だいたい、レオーネやペキンパーの映画に出てくる女は娼婦で、ただ男を包み込み癒してくれる、都合の良い母性的な存在として描かれる。
本作のアノーラは、さくっと仕事としてセックスするし、追いつめられるとヤマネコのように暴れて抵抗するし、いざ「イヴァンを捜索する」となったら先頭に立って探して回る、痛快でパワフルな女性である。
しかしその一方で、彼女は最後までイヴァンのプロポーズと誓約を信じようと努力するし、結婚という手に入れた紙切れ一枚の幸せを必死で守ろうとする。
彼女は一見すると、世慣れていて、計算高く、打算的な女性に見えるかもしれないが、同時に、純で、夢見がちで、ピュアなところが色濃く存在している。
彼女のまっすぐさと、まつろわない独立心と、恋を信じる乙女のような純情さは、彼女もまた「聖娼婦」の系譜に連なる存在であることを示唆している。
― ― ― ―
この映画の特徴を一言でいうと、
前半はとても70年代的。そして、後半はとても80年代的だ。
とにかく、この作品の登場人物は、のべつタバコを喫う。
浴びるように酒を飲む。罪の意識もなくドラッグをやる。
やって、やって、やりまくる。
刹那主義。快楽主義。反道徳。乱痴気騒ぎ。
思いつきでの行動。その日暮らしの逸楽。
このはちゃめちゃなノリは、僕たちに60~70年代のロックスターや、グルーピーや、ラス・メイヤーに代表される幾多のエクスプロイテーション・ムーヴィーや、ヒッピー・ムーヴメントの時代を容易に想起させる。
アノーラとイヴァンが過ごす蜜月を描く、アッパーで、カラフルで、夢のようなシーケンスは、『ゾンビ』で主人公たちが、無人のスーパーマーケットを満喫するシーンを彷彿させる。
自由と、快楽と、解放の正当性を信じた時代の香りがする。
一見すると、最近の息苦しいポリコレへの痛烈な皮肉を思わせる部分があるが(考えてみると、『ブルータリスト』の主人公も、異常なチェーン・スモーカーで、飲んだくれで、ドラッグ中毒だった)、ああ見えて酒もタバコも一切やらない、ドナルド・トランプへのシニカルな当てつけの部分もあるような気がする。
セックスワーカーを主人公に据える大胆さや、しきりに「避妊」を強調するところ、「結婚」という制度自体を徹底的に軽んじるような作りなども、共和党的な宗教保守の道徳観・結婚観をひたすらおちょくっている気配がある。
ここでショーン・ベイカーがやりたかったことは、きっと70年代的な理想主義の復権と、宗教保守の立場から切り捨てられるような人々の復権なのだ。
ただ、この夢のような時間は前半であえなく終わり、中盤にさしかかると、アノーラとイヴァンのもとに切実な現実がふりかかってくる。
ただし、その現実は必ずしも重々しくはなく、むしろ滑稽で、テンポ感があって、それはそれで賑やかである。
徹底した軽口の応酬。ドタバタのスラップスティック。
コワモテ連中のぶっとんだ、ずっこけ演技。
このノリは、まさにタランティーノやコーエン兄弟、あるいはその先達としてのスコセッシのテイストに近しいものだ。
すなわち、70年代の「子供じみた夢」が醒めて、
80年代の「ひねくれた笑いと暴力」の波が押し寄せてくる(笑)。
― ― ― ―
中盤戦の、三バカコンビとアノーラが繰り広げる渾身のコントは、最高に笑える。
個人的にこういうバカな映画は大好物なので、あのあたりは本当に面白かった。
他のお客さんも、結構楽しんでいた気がする。僕の観た調布の映画館は、ふだんからあまり反応の良い映画館ではないが、それでもそこかしこで、くすくすと笑いが起きていた。
基本は、おバカなスラップスティックなのだが、意外によく考えられているとも思う。
今のアメリカから見た、ロシアの立ち位置とか、オリガルヒの立ち位置とか、ロシアン・マフィアの立ち位置とか、ロシア正教の愚かしさとか、そういったものが結構生々しく反映されているし、そういった有象無象をニューヨークの街がどう受け入れていて、ラスベガスの街がどう受け入れているかという社会批評にもなっている。
女性映画の観点でいえば、ロシアン・チームは3人ともアノーラの反撃に遭ってボコボコにされながらも、専守防衛に徹して、決して怒りに任せて殴ったりはしない。最後のラインで彼らがコミックリリーフとして「観てほしいタイプの観客のヘイトを集めない」よう、ぎりぎりの一線を保っている。
(僕が普段好んで観ているようなクズ映画では、反撃した瞬間に殺されるかレイプされるのが落ちである(笑)。)
かわりに「ヒロインもボコボコにされる」という結果を引き出すために、「男に手を出させるわけにはいかないから」あのストリップ・バーでのダイヤモンドちゃんとのキャットファイトが挿入されるというわけだ。ね、考えられてるでしょう?
トロスのキャラクターも絶妙だ。コミュニティで尊敬される名士でありながら、ボスのロシア人富豪ザハロフには絶対服従。自分の管轄下でイヴァンがバカをしでかしたことに本気でビビりまくっている。ああ、なんかこういうの観たよなあと思ったら、たぶんこれ日本の任侠映画に出てくるNo.2とか意識してるんだろうなあ。
あと、相手につっかかるように同じセリフを何回も繰り返す演技プランは、スコセッシ映画におけるロバート・デ・ニーロや、タランティーノ映画におけるハーヴェイ・カイテルのそれを想起させる。
ちなみに僕はアカデミー賞助演男優賞にノミネートするなら、イヴァン役のマーク・エイデルシュテインやイゴール役のユーリ・ボリソフより、トロス様役のカレン・カラグリアンに一票を投じたいと思う(笑)。
― ― ― ―
後半戦について何が起きるかについては、ここでは敢えて触れない。
なんとなく「浮かれ立った70年代」が、本当は幼稚で子供じみた夢に過ぎなかったという現実が明らかになり、代わりに、暴力を笑いに転化する80年代的なシニズムが台頭する、といったところか。とあるキャラクターの「不在」と、再び現れたときの幻滅するような「オーラの陰り」は、そのまま70年代の栄光と失墜のメタファーのようにも思える。
そのなかで、ヒロインは翻弄され、抗い、叩きのめされる。
現実はシビアで、残酷だ。
だが、救いもないではない。
一生懸命に生きている人間には、
それなりに、見ていてくれる人もいたりするものだ。
あのラストシーンについては、フェミニスト寄りの論客のなかで、意見が分かれるかもしれない。男性性へのすり寄りだとか。最後に男にああされて、ああなっていいわけ? みたいな。
でも、僕は、あれはあれでとても良い終わり方だったと思う。
アノーラは、とにかく頑張った。
頑張って、頑張って、頑張って、最後はああなった。
でも、あれは「負け」ではないし、
「すがった」わけでもない。
彼女は、ああいうコミュニケーションしか取れない。
だから、身体を使う。相手は、それを最初、拒まない。
でも、途中で辞めさせる。
彼は、彼女を「使った」わけでもないし、
「なぐさめた」わけでもない。
だけど、なにかがふっと腑に落ちて、アノーラは●●のだ。
ちゃんと見てくれていた人がいて。
名前の由来まで気にしてくれていて。
なにより、ヤマネコのような彼女が、
相応に傷つき、ボロボロになっていることをわかってくれていて。
そんな彼を、「アノーラのほうが」使った。
そういうシーンだ。
僕は必ずしもあれが、二人に新しい物語が始まるエンディングだとも思っていない。
むしろ、あのあと、車のドアを開けて「じゃあね」――それでいいような。
傷ついた自分を自認して、ひとしきり胸を借りて、すっきりして、またひとりで歩いていく。それでいいのではないか。
そのほうが、アノーラらしい終わり方のような気がする。
ちょっと驚くようなエンドロールの演出も含めて(あと短いのが良い!)、くっだらないおバカな映画のわりに、とてもちゃんとしたものを観たように錯覚させる、ずるがしこいエンディングだったようにも思う(笑)。
― ― ― ―
この映画の本当に良いところは、人を責めないところだ。
セックスワーカーを責めない。
オリガルヒを責めない。
適当な奴、逃げる奴、イエスマン、バカな奴を断罪しない。
自分と違う人間を貶めない。
なんでも断罪する。右にせよ、左にせよ。
これこそが、いまの世の中が息苦しくなっている最大の要因だ。
そんなあり方から逃れているからこそ、『アノーラ』は最終的に賞を獲れたのだと僕は思っている。
期待しすぎた?
受賞記念に急いで見に行ったところ、個人的には刺さらず期待を下回りました。
賞を取ったと思って観ると高く評価出来なくもないのですが、その情報なしだと星3.5でいいかなと思いました。(おそらく自分が見逃しているだけで、光る部分がたくさんあるのでしょうが…)
エロティックで華やか、コメディもあり、シリアスさや感動もあると良い要素は詰まっているのですが、そのせいでちょっと長い気もします。
ストーリーも想像通りの展開で、アカデミー賞受賞作品でなければ深い考察をしようとも思わなかったです。
傑作とはいえないと思うだけで、つまらないわけではないです。
アカデミー賞受賞作が気になる人、シンデレラストーリーが嫌いな人にはおすすめ出来ます。
個人的には必見ではないので、別部門の受賞作や別のノミネート作品を観たり、アカデミー賞に価値を感じない人は、全く関係ない気になる作品を観てもいいと思います。
R-18でこんな笑える映画がアカデミー賞取ったんだ
R18なのに最高でした
現代版「プリティウーマン」のリアル版
「プリティウーマン」のように上品ではなく下品でおバカ、
ストリッパーたちの喧嘩やFワードの乱発、R18なのでもちろんHシーン盛りだくさん。
Z世代は「プリティウーマン」のような「おとぎ話」なんて要らないのです。
コメディ要素多くて笑うシーンもたくさんあり、ラストはほんとにジーンときます。
色使いも監督ショーンベイカーらしくてお見事。
主役のマイキー・マディソンの宛書で作られた本作、
カンヌでパルムドールを取り、なんとアカデミー賞でも5冠になってしまった。
夫婦で観に行きましたが、最高に楽しみました。
初デートでもこんな映画が観られる関係性が良いな。だって、映画の本質ってそこじゃないんだから。
見事なラストシーン
今年のアカデミー賞で最優秀作品賞&監督賞&主演女優賞&脚本賞&編集賞の5部門を制した「アノーラ」
大金持ちに見初められた娼婦が右葉曲折した結果幸せになる令和のプリティウーマン的なシンデレラスーリーを想像してたら、なにこれ、全然違う!令和のシンデレラにはやはり厳しいリアルな現実ですか
世相を反映しちゃって夢物語なんて甘々なストーリーなんか受け入れられないって事ですね
過去はほとんど語られないけど多分移民のシングルマザーの貧困家庭育ちのストリッパー、アノーラちゃんの泥沼人生
23歳の若さで男をみる目なんてないアノーラちゃんは、どう見ても駄目男案件の金持ちドラ息子とノリのベガス婚しちゃう
信じてない表情に現れる夢と希望と愛を感じさせるアノーラの巧みな芝居が素晴らしい
案の定の展開で2人のおままごと結婚を邪魔する父親の手下達の登場
彼らのデタラメさが予想外で笑っちゃうレベルの無茶苦茶かげん
これがあちらの国での倫理感のリアルなんでしょうね
映画でしか見たことないけど世間にのさばっているロシアの金持ちと手下達はこんな風に傲慢で無法地帯さながらの行動をとりそう
付き従う手下もみんな嫌なヤツ
なんて杓子定規じゃないキャラクター設定もリアルでほのぼの笑っちゃう後半戦
ここは法治国家アメリカだぞ!
なんてツッコミ入れたくなるほどめちゃくちゃな行動をとりまくるし、若者に説教しだす辺りがもうね、笑いねらってますよね?
強いアノーラが男を信じてハチャメチャに戦う姿も好感もっちゃうし、キャラクター設定と脚本の捻りが凄く効いていて魅力満載
昨年のアカデミー賞の大作オッペンハイマー
歴史に残る殺戮兵器を生み出した科学者の苦悩に比べるとやはりインディペンデント系だけにスケール感の小さい物語
だけどそこにはストリップダンサーの受ける差別と権力者の傲慢さが簡単に人を踏みにじる様コミカルに描き出したのは凄い
かすかに見えた愛の光を掴み取り、偽りの幸福からまたどん底に舞い戻るアノーラの感情の起承転結の見事さ
ラストシーンのアノーラの行動
独りぼっちで戦っていたアノーラに唯一味方してくれた彼
優しさのお返しに、強がるアノーラのあげられるものの悲しさ
娼婦扱いされるたびに「私は娼婦じゃない!」と強がっていた小さなプライドが砕け散る瞬間
全てが集約されているラストシーン
突きつけられた現実に心の堤防が決壊した瞬間
お見事です
2人はこの後どうなるの?
そんなの関係ねー!
夢なんかないよ!の無音エンドロールですね、はい
私ここでゴリゴリヒップホップなエンドロールが聞きたかったです
色んな味のするスルメ映画でした
祝 アカデミー賞受賞
観よう観ようと思いながらも観る前に第97回アカデミー賞5部門受賞。
マイキー・マディソンが主人公アニーを文字通り全身全霊で演じています。
彼女は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に10代の頃、セイディ役で出演していたんですね。
そしてイゴール役のユーリー・ボリソフがいい味を出していました。常識人で普通の彼が一番まともなのが逆に浮いてしまうという図式が面白い演出でした。
作品トータルだと少し上映時間が長いかと(139分)。
また作品のアピールポイントが「シンデレラストーリーのその先」を描いているとの事ですが現実的な分、男女間の性やらドロドロがこれでもかと映し出されているので決して万人向けの作品ではないです。
正にBitter End、現実は厳しい🤣
面白かった‼️観終わったら、カンヌのパルムドールに加えて、今日アカデミー作品賞を受賞したと知り、納得👍
(W受賞ってこれまで3作しか無いんですね)
映画冒頭Bitter Endと表示された通り、プリティウーマンのようなおとぎ話はありませんでした😂
登場人物すべてがキャラ立ちしていて面白かった!
コメディーっぽい内容の中にリアリティもあって、没入感がある
この映画のショーン・ベイカー監督の前作「レッドロケット」もそうですが、男女の関係性のネジれや辛い部分を描いた後に、ドタバタ劇が入ってきて、最後は本心を曝け出した上で一つの方向性を示した終わり方がなんとも後味がいいです。
「24時間ホワイトチャペル」から突然ギャグパートに入った感じで、ある意味悪ノリしたような展開になって、カオスな会話劇になるのですが、合間合間のシリアスなシーンにぽろっと大事なホンネの台詞が挟んであるのがたまらない。
女の体の価値をよく理解していて、それをお金に変えていたアノーラは、資産家の息子に見初められて結婚まで漕ぎ着くが、根本の所では遊び楽しむための価値でしかなかった事に気付かされて傷ついてしまう。
一方で冴えない平凡な男で、さらに女好きでもないのでアノーラの価値を全く理解しないイゴールに、優しさを感じて泣いてしまう。
信じていた価値が実は重要なものではなかったので、ショックを受け傷ついてしまった。
だけどそんなものが無くても優しくしてくれる事を知って、嬉しくて泣いてしまった。
シーンとしたエンドロールでそんな事を考えさせられるいい映画でした。
長い
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