ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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期待度◎鑑賞後の満足度◎ アノーラは『花』…イゴールは『戦士』…切ないエンディングに胸を衝かれ忘れ難い印象を残す…
①上手い、と思う。基本的には、身体をはって生きている貧しい女の子が、大金持ちの御曹司に見込まれて(騙されて)結ばれるが、結局捨てられてしまう、というよくある話なんだけれど、前半は妖しく艶やかに楽しく、中盤は一転ドタバタ劇の様になって笑わせ、最後にアノーラが抱えていた悲しさ・寂しさ・脆さが溢れる哀切さで締め括る、という構成。
アノーラは精一杯肩肘張って生きてるし、言葉使いは汚いし(あまりの汚さに英語ネイティブでないこちらでも笑ってしまう)で、うるさいし(ここも笑ってしまう)で、なかなか感情移入しにくい女の子だが、「一週間の専属彼女」になるのの1万ドルのオファーに対して1万5千ドルと吹っ掛けながら、直ぐ後に『本当は1万ドルでも良かったの』と言ったり、プロポーズに最初は『ウソでしょ』という態度だったのが絆されて結婚したり、ロシアから飛んできたイヴァンの母親に優しく微笑みかけたりと、根は優しい女の子だと言うのがだんだん分かってくる。
そしてラスト、したたかそうで突っ張っていて決して上品とは言えない仮面の下に、傷つきやすい女の子が隠れていたことが分かる。
誠に胸を衝かれた。
②現代のプア・ホワイトの生きづらさ・夢・希望・挫折・絶望・哀切さを、しみったれた映像ではなく、明るく華やかな色彩の映像で活写されたら右にでるものの無いショーン・ベイカー監督。(『レッド・ロケット』はややしみったれていたので印象がも一つなのかな
)
本作でもその作風は遺憾なく発揮されている。本作では逆光が効果的に使われている。
エンディングの哀切さも『フロリダ・プロジェクト』のエンディングの哀切さに通底しているものがある。
③最初は単なる用心棒に思えたイゴールの存在感がだんだん大きくなってくる描きかたも宜し。
赤ちゃんのカメラ目線はNGじゃない
最初に申し上げておきますが、ショーン・ベイカーの作品が大好きです。
ボンクラの生態を描いたら、世界一です。
映画では題材として、暴力的なボンクラ、性的なボンクラ、依存症のボンクラ、心が病んでいるボンクラなどが良く取り上げられています。自分はボンクラではないと思っている観客は、興味をもって見るからです。その結果、ボンクラ立ちは、嘲笑の対象になり、破滅にむかったり、よくても牙を抜かれてつまらない人間になり、消費されていきます。これが本当は嫌いです。ショーン・ベーカー作の登場人物は、程度の差はあれ、みんなボンクラです。しかし、彼らにはダメ人間であり続ける理由があったり、わずかながらまともなところが残っていたり、嫌いになれないところがあるわけです。それを、丁寧に、優しく、少し引いた位置から描いているところが本当にうまいと思います。本作でも、アルメニア人Toroとか、オルガルヒのお父さんとか、お掃除のLuluとかとっても魅力があります。
本作は、(昨日みた)ブルータリストと同様に3幕構成ですが、こちらはまともに3幕あります。ボーイミーツガールの第1幕、ドタバタコメディーの第2幕、エピローグの第3幕です。私的には、はっきり演出を変えているなと思いました。それぞれのパートの味を良く味わえました。そして、短いエピローグは、まあ、そう終わるだろうなと思った通りかと思ったら、最後の1分→ブラックアウト→エンドクレジットで泣きましたさ。星4つから格上げしました。二人が何やっているのか(まあ、やってるんだけど)良く分からないんだけど、良く動きを見て下さい。おそらく、ちゃんと演出してやっていると思います。
撮影監督のドリュー・ダニエルズも、前作レッド・ロケットにつづいて良いですね。Wavesのときから最高。
あと、冬のコニーアイランドで泳いでる人がいるよ。Robot Dreamsはうそじゃない?僕が行った時も、正統派ユダヤ人が黒いコート着ていっぱいいたもの。
と言うことで、皆さんにショーン・ベイカー好きになっていただいて、フロリダ・プロジェクトもみて頂きたいです。
来た!今年の暫定ベスト!
絶対気に入る予感しかしてなかったから
どうしても公開初日に行きたくて。
腰振りに始まり、腰振りに終わる。
途中、笑いとt.A.t.uアリで。
いや、もっと言いたいことや感じたことはあるのよ。
でも言語化が難しい。
久々だゎ、この感覚。
だから取り留めのない感じで徒然なるままに。
素敵な映画だったな〜
エロは多めに盛り込んでるのに、それ以外は必要最低限。
なんか今の時代に凄く合ってる気がする。
「この描写から察して」的な。
当然若いんだよね。
ヴァーニャもアノーラも。
でも周りのオトナもなんかコドモ。
かと言ってアタシ自身もそんなオトナってわけでもないから
なんか映画の渦中の人になった気になる。
不思議な追体験。
かと思えばあの落ち着き払った三十路…いる?あんな人?
居たら是非お近づきになりたし。
見た目もシリル・アビディみたいで良き。
ってか、助演男優賞ノミニーぢゃん!
陰ながら全力で応援しちゃう。
そしてなんだかやたらと煙草が吸いたくなる。
光の戦士
“シンデレラ・ストーリーのその後”というキャッチコピーがついているが、ラブストーリーでもなければサクセスストーリーでもない。
「ANORA/アノーラ」は最初から最後まで権利の物語であり、個人というものがいかに蔑ろにされているのかというテーマを痛々しく表現する映画だ。
ストリッパーのアノーラが御曹司のイヴァンに気に入られ、衝動的に結婚…というあらすじは確かにあっているのだが、事は単純な若い2人のラブストーリーとは様相を異にする。
むしろアノーラにもイヴァンにも純粋な恋愛感情は皆無なところが面白い。
周りの大人、主にイヴァンのお目付け役であるトロスは2人の結婚を「グリーンカード目的」「金」などと、自分の理解できる範疇で語りたがり、ボーッとしていると観ている側もその表面的な理解に踊らされそうになるが、本当の2人の結婚理由とはモラトリアムと契約である。
イヴァンはロシアに戻って親の仕事をさせられるのが嫌で、抵抗する為にアメリカ人になろうとした。
大人になりたくない、いつまでも子どもでいたい。渡米して親元を離れたことも、享楽的に過ごす毎日も、アノーラとの結婚や逃げ出して泥酔したことと同じく、決められた人生からの逃亡なのだ。
一方のアノーラは、全てにおいて自分で人生を決めるキャラクターである。イヴァンの契約彼女になる取引も、社会保険・失業保険・医療保険を保障してくれる職場であれば断ったかもしれない。
自分が最も高く売れる時、という見極めに従って、最も高く買ってくれる相手に売った。それは大人として責任ある決断であり、彼女が守りたいものとは契約の正当性なのだ。
アノーラにとって最もショックだったことは、愛が無かったことでも金を失うことでもなく、2人の成人が合意の上で合法的に行った結婚という契約を軽んじられていることだ。
いつの間にかアノーラがイヴァンとの間に愛情を感じている、と思った人が多いみたいだが、アノーラは愛なんか感じていない。裁判所で「愛し合っている」と述べるのは、一応結婚とはそういうものと認識されているからであり、結婚の合法性を主張するための抗弁である。
思い出して欲しい。2人の結婚後イヴァンがゲームに興じる傍らで、イヴァンに寄り添うアノーラの退屈で不安そうな表情を。あれが愛する相手と一緒に過ごす表情だろうか。
この映画で興味深いのは、イヴァンの現状を確かめに来た2人組の片割れ、イゴールの存在だ。登場人物の中で1番まともで1番優しく、イゴールだけは他の人物のことを「1人の人間」として扱う。
アノーラにスカーフを差し出したり、鼻を折ったガルニクの為に薬を取りに行ったり、常に相手のことを気遣う姿勢を見せる。
「家はおばあちゃんの家で、薬もおばあちゃんのものだ」「薬は売らない。商売じゃない」という発言も、イゴールの自身に対する責任感と他者に対する尊敬を感じさせる。
イゴールはアノーラのことを「クレイジーだ」と評するが、クレイジーなくらいじゃないとアノーラはアノーラ自身と彼女の権利を守れない。
襲われる、と思ったら全力で抵抗し、合法的な権利を侵害される、と思えば全面的に闘う。
「アノーラじゃなくてアニー」と呼ばせるアノーラは、闘う為の鎧として「アニー」という人格に「アノーラ」という本当の自分を守らせているのだ。
しかしイゴールはこうも言う。
「アノーラの方が良い」と。
最後の最後まで弱音を吐かず、涙も見せず、事態を切り開く為に闘い続けたアノーラを、1人の人間として見続け、接し続けたイゴールの偽らざる本心なのだと思う。
イゴールという名前は「戦士」という意味だ、良い名前だ、とイゴールは言うが、まさしくイゴールは戦士なのだと思う。
暴力を利用して事を成すという意味ではない。主義や信念の為に活躍する、の方が近い。イゴールの信念はきちんと他人と向き合うことであり、力も金も同情も関係なく、自分が正しいと思うことを行う事だ。
戦士イゴールはアノーラの助けになりたい、と思い彼女がその思いを受け取ってくれるまで静かに待っている。アノーラが助けを求めないなら、それは彼女の決断であり、求められないのに助けようとする行為は相手のことを軽んじている行動だからだ。
イゴールとNYに戻ったアノーラは「アニー」のやり方でイゴールと接しようとする。イゴールを突き放し、言いたい放題罵ったり、一転して性的なコミュニケーションを取ろうとしたり。
でもそれは「アニー」の枠を出ないし、アノーラの本当の心を表現しない接し方だ。
根負けなのか、それとも限界だったのかはわからないが、アノーラは最後の最後にやっと本当に自分自身をさらけ出して、ずっと見せなかった涙を見せ、イゴールの腕の中で泣きじゃくる。
アノーラの涙が枯れるまで、イゴールはアノーラを抱いていてくれるだろう。
闘う女の物語は少し前まで勝利のエンドで女性たちを元気づけるものだったが、今求められているのは傷つきながら手にする勝利ではなく、負けても傷ついても「素の自分」を受け入れてくれる相手や世界ではないだろうか。
アノーラの涙を拭うように、動き続けるワイパーの音がとても印象的だ。
0.8g
ニューヨークのストリッパーとロシアから来た実業家の御曹司が結婚したら、ダンナの親が大激怒して結婚を無効にしようとする話。
ロシア語が判るアニーが良客ヴァーニャの接客をし、ホントは禁止のアメリカバンザイなサービスをしたら、プライベートでお呼ばれする関係になって巻き起こっていくストーリー。
パパの金を散財しまくり、約束のパーティーが終わり、あらすじ紹介に記されている1週間の約束からの結婚、となかなかテンポ良くみせてくれたけれど、ガルニク&イゴール登場から親父降臨までの一つ一つの行がまー長いこと。
話しの内容はコテコテな分わかりやすいし、みんななかなかないかれっぷりだし、どう収束させるのかと期待も膨らみ面白いんだけどね。
そして今度はおまけの一夜の長いこと(*_*)
それが長いせいで、まあこんな落とし方なんだろうなと言うのが読めてしまうし、結果それほど意外性はないしそれ以外のものもないし。
もうちょっとスッキリみせてくれるとか、ヴァーニャのもう1リアクションとかあったらねという感じ。
ヤバいのはママだったのは個人的には良かったかな。
【”ストリッパーが、夢みて何が悪い!”今作はショーン・ベイカー監督ならではの、社会格差、職業差別を浮き彫りにするドタバタコメディ劇であり、ラストシーンは心に沁みる作品なのである。】
■ニューヨークでストリップダンサーとして働くアノーラ(マイキー・マディソン)はロシアの大富豪のボンボン、イヴァン(マイク・エーデルシュティン)に気に入られ、彼がアメリカに遊びに来ている一週間の間、恋人契約をし、更に盛り上がった二人はラスベガスに行き、結婚式を挙げる。
だが、その事を知ったイヴァンの監視役のアルメニア人司祭のトロス(カレン・カラグリン)は、怒り狂ったイヴァンの両親がロシアから来る前に、用心棒のイゴール(ユーリー・ボリソフ)とガーニック(ヴァチェ・トヴマシアン)を連れ、二人の結婚を無効にしようとするのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、アノーラが働くストリップ店での”ウヒー!エッチー!!”というシーンが描かれ、大変に宜しい。序でに、アノーラとイヴァンが恋人契約をした後に、ヤリまくる姿も大変に宜しい。(痛いから、石を投げないで下さい!)
それにしても、ショーン・ベイカー監督は「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」の可愛いムーニーや、そのお母さんハーレイを演じた鮮やかな紫色の刺青を入れたブリア・ヴィネイトなど、ほぼ素人さんを起用するのが上手い監督である。
今作で、アノーラを演じたマイキー・マディソンも、ほぼ無名の女優さんであったが、この作品での身体を張った演技は素晴らしい。
そして、この序盤での彼女の”イヴァンに気に入られようと頑張る姿”が、後半に効いてくるのである。
・愚かしきボンボン、イヴァンは、用心棒のイゴールとガーニックが、両親保有の豪華な家に来た途端に、アノーラを連れずに慌てて一人でほぼパンツ一枚で逃げ出すのである。
そして、アノーラは二人に対して、部屋の中の装飾品を投げつけ激しく抵抗するも、イゴールに捕まってしまう。だが、この時にイゴールとガーニックは、自分達は散々に痛めつけられながらも、アノーラを傷つけたりしないのである。電話線で手は縛るけれど。このシーンはとても可笑しい。だが、特にイゴールはアノーラを後ろから抱きかかえつつ、そのまま動かないのである。この姿がラストシーンに連動しているのである。
・その後、到着したトロスも含めた4人はイヴァンを探しまわる。個人的には”あんな、甘えたバカ息子は、撃ち殺してしまえ!”と思いながら鑑賞したのだが、イヴァンは捕まり、到着した両親に”バカ息子!”と罵られながら、プライベート・ジェットでラスベガスに行き、”結婚は無かったこと”にして貰うのである。
その際に、イヴァンはアノーラに対し詫びの言葉を一切掛けずにロシアに帰ろうとするのである。”アメリカなんて、来るんじゃなかった。”と言って。
だが、その時にずっと無口だったイゴールは初めてイヴァンに対し”アンタは謝るべきだ。”とボソリと喋るのである。このシーンはちょっと沁みたなあ。イゴールはずっと、アノーラの身の上を黙って聞いていたからである。
■そして、イゴールがアノーラの、線路の直ぐ傍のボロアパートに、彼女の荷物一式を持って行くシーン。彼は彼女がイヴァンから貰った4カラットの結婚指輪を(そして、その後無理やり外されていた。)ポケットから出して彼女に渡すのである。
アノーラはそれまで悪態を付いていたが、その彼の行為を見てイゴールの上に騎乗位になる。そして、彼の胸に顔を埋めて、初めて激しく泣きじゃくるのである。お金持ちに成れず、富豪のロシア人達にいいようにされた悔しさと、イゴールの優しさが綯交ぜになり感情が爆発したのであろう。イゴールはそんな彼女を胸の上に乗せたまま、黙っているのである。イゴール、とても良い奴である。
そして、このラストシーンは、私は実に沁みたのである。
<今作は、ショーン・ベイカー監督ならではの、社会格差、職業差別を浮き彫りにするドタバタコメディ劇であり、ラストシーンは心に沁みる作品なのである。>
登場人物がちょっとポンコツなのに、現実的な終わり方には違和感を感じました
登場人物がちょっとポンコツな人ばかりです。特に、出来の悪い息子を見張ってる人たちが、とてもロシアの大物から指示を受けてるような凄腕には見えないです。
出来の悪い息子が引き起こした騒動だけでもドタバタ感が酷いのに、その人たちを絡めることで、さらに映画全体(ただし前半のみ)がドタバタ劇化します。彼らの役目は、逃走した息子を探し出すだけ。彼らのポンコツぶりがストーリーに活きてこないです。そのくせ、最後まで、徹底的にポンコツぶりを見せてくれるのかと思えば、エンディングは、極めて現実的でした。
お笑い劇でなくてもいいし、無理なハッピーエンドである必要はないけれど、あのポンコツな人たちを絡めることで、息子の所業の酷さを増そうとしているような演出には、ちょっと違和感を感じました。
脳が支配されるほどのラストシーン
第97回アカデミー賞において、「作品賞最有力候補」の呼び声が高い本作。公開初日のTOHOシネマズシャンテは思ったほどの混雑とはならず、ほどほどの客入りです。なお、R18+のレイティングを踏まえますと「過激」と言うほどではないものの、性描写や言葉遣いについて不快さを感じる方はやはりご注意が必要です。或いは見方を変えると、この作品が「作品賞最有力候補」と言うのがにわかに信じられない気もするのですが、個人的にはかなり好きな作品でした。
序盤はまずアノーラ(マイキー・マディソン)とイヴァン(マーク・エイデルシュテイン)の出会いから二人の関係の急接近、そしてまさかの結婚まで発展する展開。セックスワーカーという仕事柄、間違った言動が一瞬で自らの身を亡ぼすことを解っているからこそ、しっかり見極めて判断をするアニー(アノーラの通称)。スーパーリッチで、子供のまま大きくなったようなイヴァンと彼の取り巻き達の「浮世離れ」に戸惑いつつも、決して浮かれることはなく、常に相手の本心や出方に細心の注意を払っています。
ところが中盤、イヴァンの母親(ロシア在住)の耳に「息子に女の影」の話が伝わり、それまではラブラブだった二人の周辺は一転きな臭い雰囲気に。母親の差し金で急遽捜査するように命じられたトロス(カレン・カラグリアン)は、早速イヴァンが暮らす家へガルニク(ヴァチェ・トヴマシアン)とイゴール(ユーリー・ボリソフ)を派遣します。ところが話は決着を見るどころか一層こじれておかしな展開に。母が米国に向かっていることを聞かされたイヴァンは逃走し、アニーだけでも取り押さえてイヴァンに戻るよう促そうとしますが、当然いろいろ納得がいかないアニー。そこからはアニーの「全身全霊の抵抗」に翻弄される男たちの構造が可笑しく、劇場は笑い声が絶えません。
「負けを認めたらそれが最後」と本能的に解っているアニーは決して引き下がることをしませんが、当然勝ち目がないと判れば無理を通さず最善を探る思慮深さも持ち合わせています。終盤以降の展開は伏せますが、最後まで自分を貫き通すアニーは凛々しく、特にラストシーンは思わず涙が込み上げてくるのを抑えるのが必死。帰路も繰り返しシーンが甦って思い出され、しばらくは「脳が支配されている」と感じるほどアニーを想ってしまいました。
やっぱり私、ショーン・ベイカー好きだなぁ。作品賞は判らないけど、監督賞は必ず獲ってほしい!
主演女優もいいけどロシア人若手2名も良かった
やや期待外れ。気の良い娼婦は結局、何も手に入れられないっていうことになっちゃいませんか?
この映画に関してはセックスワーカーへの差別的な発言がチラチラ漏れ聞こえてきて嫌な感じはしていた。(ストリップダンサーが主役の映画が何でカンヌのパルムドールを取るのかとか、セックスシーンだらけで作品自体のクオリティが低いとか)そのあたりについては主役のアノーラを演じるマイキー・マディソンの突き抜けた演技でかなりぶっ飛ばしてくれている。彼女は可愛く、そしてたくましくもあって、アノーラの造形については全く文句はない。
でも相手役のイヴァン(役者は可愛らしい)のクズ息子ぶりやそのロシア人両親(特に母親)の非道は本当にお約束通りであってハッピーエンドでもなく、アノーラが一矢報いるといった展開にもならないところが哀しい。気の良い娼婦は割を食うっていうことになってませんか。「べらぼう」みたいだよね。だから全体の筋としてはあんまり共感できなかった。最後のシーンについても納得しかねる。何故彼女が泣かなくてはいけないの?
シーンとして面白かったのは2箇所あって、最初はアノーラがイヴァンの家に出張してきてセックスする前にみせるストリップダンスのシーン(短いチェックのスカートをはいてる)。これは立派な芸です。
もう一つは皆さんも同様だと思うが、イヴァンの両親の手下3人組を相手に、イヴァンの家のリビングでアノーラがみせる大立ち回りのシーン。実にメストラのような暴れ方でこれは凄いです。(撮影に数日を要したとのこと)
この2つのシーン以外はちょっと期待外れだったかな。
(補足)
ご存知の通りアカデミー賞の作品賞と監督賞まで取りました。主演女優賞はまあ当然かなとは思っていましたが。
少々、グダグダな部分もあったけど、これがこの監督の味というところで、業界内愛されているんだなという印象です。
パルムドールとオスカー両方とったのは「パラサイト」以来でほとんど事例がないハズ。凄いね。
それはそうとこの映画、トランプ大統領が観たらどんな感想をもつのかな?上映禁止の大統領令にサインしたりして。
幸せになりたい人達
監督は味方なの?嗤うだけ?
セックスワーカーの映画公開をこんなに心待ちしたのは『プリティ・ウーマン』以来である。
(娼婦のシンデレラストーリーで王子様がリチャード・ギア。
いくら映画だからってブッ壊れてんじゃん、と憤っていたが、それをファンタジーにもするのもハリウッド。
その御伽話にひれ伏した。)
でも「ANORA アノーラ」にリチャード・ギアはいない。
脚本監督は底辺の味方・ショーン・ベイカーである。
とことんブチ壊して勝利の愛に変えて欲しい。
その一心で花粉で痒く涙を流す目を庇いながら劇場へ。
そうだね、ショーン・ベイカー。
貴方はいつも味方のふりをしてハッピーエンディングでは結ばない。
人は変わらない、変われない。それを描きたいだけ。
愛という言葉の意味も人それぞれ。
男は女にハメるのが愛。
男は女に金くれるのが愛。
それが愛じゃないなら、愛ってなんなの〜
ってアノーラちゃんは叫ぶのでしょうね。
ね?言っても駄目でしょ、ってショーン・ベイカーさんは苦笑いしているようですね。
アノーラちゃん、Fuckの言葉ぱかり。
いっそのことFuckちゃんに改名すればいいのに。
とすら思うほど頭が空っぽで同情した。
日本でも『超〜』『マジ?マジマジマジマジ?』『ヤバ』しか語彙能力ない空っぽチャンが多いが、こうやって映画で観ても危機感を通り越して救いようがないことを知る。
新宿の夜の街でもアノーラFuckちゃんレベルの女性と何人もすれ違う。
よくいるセックスワーカー。
幸せになって欲しい、と思うが彼女たちの幸せ(エッチ・スケベ・金)と僕のいう幸せは意味が違うのだ。
そう、何を言ってもムダなのである。
王道ストーリーとは違う面白さ
アノーラが行き着いた場所
瞬間的な感情が詰まった哀愁コメディ
派手な演出でかなり引き込まれたし、面白くも、ちょっとほろ苦─非常に魅力的な作品だと思います。
絵的な執拗はまぁまぁ、音響なかなか、・・・と漠然としていて、しかも勝手なイメージでしかないのですが、それほど凄い質とは・・・
演出とか演技とかで魅せられたような気がします。
全て、一時の出来事や勘定の連なりといった印象で、その分、瞬間的に楽しい作品でした。ただ、最後はちょっとそれとは違う感じだったかなーと。
どうしてオスカーということが気になるし、故にこの作品もいち早く観賞したんですけど、質は間違いなくブルータリストで、面白さは断然アノーラと思いましたが、まぁまだまだ見ていない作品だらけなので、この2作だけで比較するのは早計とは思うのですが、下馬評が高いのでとりあえず─
クッタクタ〜
意気投合した相手とのシンデレラストーリーのように電撃的な結婚をしたアノーラ。
二人はかなり初めの方から所々雲行きが怪しいのだけど、恋は盲目…というかチャンスに盲目すぎた!
いや、そもそも恋でも愛でなかったんだろうね。
富豪の両親が息子の結婚を許さないところからゴタゴタが始まるが、アノーラの毅然とした態度は救いで時々スカッとしながら耐えるストレスフルな中盤。
みんなが振り回されてクタクタになっていく様子が凄すぎて誰視点なのか私も夢中でクッタクタ。
いつの間にか座席にななめにだらんともたれかかって観ていたのも久々な没入感だけど、そんなとき冷静な視線がひとつ、アノーラの内面をまっすぐとらえはじめているのに気づく!
これまでと同じようでいてちょっと違うアノーラがみえたラストは彼女の複雑な思いも伝わってきてちょっと切なくもある。
このあとの彼女ならきっと人生をやりなおせるよと励ましたい気持ちもあったな。
そして…魅力的なアノーラを演じる彼女、ふりきっていて本当に素晴らしい。
でもこれお年頃の家族と一緒に観に来なくて正解だった 😅
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