劇場公開日 2025年9月5日

「少女から女性に一歩踏み出すベイリーの「かけがえのない4日間」」バード ここから羽ばたく TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 少女から女性に一歩踏み出すベイリーの「かけがえのない4日間」

2025年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

カンヌ出品作品で、米国映画レビューサイトでも評価が高い本作。映画.comのサムネイル画像を一見した印象では正直「微妙かな?」とネガティブに感じつつも、観逃せない俳優の一人であるバリー・キョーガンが出てるし、『アメリカン・ハニー』も観たら結局大好きだったし、今作もアンドレア・アーノルド監督を信じて劇場鑑賞を決定。今回も前情報なし(トレーラーも未見)で、新宿ピカデリーにて貯まったポイントを利用して鑑賞です。
まず本作、「複雑な家族構成」を把握するのになかなか苦労するのですが、その全てと日常的に接点を持っていて中間的な存在であるベイリー(ニキヤ・アダムズ)と言う12歳の少女/女性が本作の主人公。父親・バグ(バリー・キョーガン)の下で異母兄・ハンター(ジェイソン・ブダ)と同居をしていますが、父から突然の再婚宣言と同時に“父の女”とその連れ子が押し掛けてきたことに反抗します。とは言え、離れて暮らす母と弟妹の元にも“母の男”が居座っていて行く当てがありません。また、日中も2歳上のハンターは年頃になりガールフレンドと過ごしたり、仲間と徒党を組んでビジランテ(自警団)を気取っていたり、金魚の糞のように妹が付きまとうことをあまりよく思っていないため、こっそり兄たちのビジランテ活動の後をつけるベイリー。ところが、パトカーのサイレンがきっかけで一目散にその場を離れざるを得なくなって人気のない草原へ逃げ込み、そのままそこで一晩野宿することになります。すると翌朝、何とも言えない雰囲気と共にベイリーの目の前に現れるバード(フランツ・ロゴフスキ)と名乗る男性。警戒しつつも何故か抗えずにバードに引き込まれ、話を聞くうちに彼に協力することを約束するベイリー。そこから“ベイリー&バード”の友情の物語が始まります。
12歳のベイリーは環境や身体の変化など、少女から女性に変わりつつある年頃。自我も強くなって父の横暴に抵抗しつつも、目配りが出来て自分なりの倫理観も持っており、何より自分の家族を愛しています。また、独りでいるときは鳥や動物、虫など生き物に興味を惹かれ、気になればスマホで動画を撮ることが趣味。そんなベイリーだからこそ出会うこととなるバードは、誰にでも見える存在でありつつ、誰の目にも止まらない存在で、ベイリー自身バードに「言い表しようのない何か」を感じています。
そして二人の出会いからの別れるまでの僅か4日間は、ベイリーが精神的にも大人への一歩を踏み出すきっかけとなるかけがえのない時間。終盤のシーンは涙を誘われ、ベイリーの人生に幸多からんことを願って温かい気持ちになれます。拍手を送りたくなる一本。いやぁ、やっぱ観て良かったわ。

TWDera