劇場公開日 2024年9月27日

「人間の表層と深層」傲慢と善良 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間の表層と深層

2024年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

奈緒はさほど美形ではないけれど、演技力が有り、主演に必要な華も有る。
奈緒主演の作品ということだけで、観賞を決めた。

【物語】
架(藤ヶ谷太輔)は30代で、小さいとは言え会社の社長。収入にも容姿にも恵まれている架は異性に苦労することは無かったが、長年付き合っていた恋人に予期しない別れを告げられたところから、歯車が狂い始める。マッチングアプリで婚活を始めて多数の女性と会うが、満足できる女性には巡り合えず、婚活にウンザリし始める。 そんなとき、真実(奈緒)という女性と出会い、交際を始める。

真実と1年間交際した頃、架は真実からストーカーの存在を告白され、その直後に恐怖におびえた声で助けを求める着信を受ける。真実を守る使命を感じた架はそれをきっかけに結婚を決意。ところが結婚の直前に彼女は忽然と姿を消す。

真実の行方を追う架は、彼女の両親や友人、過去の恋人などのもとを訪ねるうちに、真実の過去とうそが明らかになって行く。

【感想】
ある意味ピュア・ラブ・ストーリー。
ピュアというと、普通は“美しい恋愛”を連想してしまうが、本作は人間の負の部分に焦点が当たっている。

普段自分は気付かないが、他人からは見える“傲慢”。他人から見える“あざとさ”、“薄汚なさ”が、当人の心情を深く理解したいときに「そんなに非難されることか?」に変わる。

人間の表層と深層。人を表面だけで理解するか、深くまで理解しようとするか。 架の女友達は真美の行為の表面を見て嘲笑の目を向ける。しかし、彼女達の見立ては間違っていなかったし、彼女達の言動もまた真美の視点で見れば酷いが、彼女達の目線で言えば「そんなに非難されることか」になると思う。
人生で出会う人の99%の人は表面しか知り得ず、深く理解するなんて不可能。いや、夫婦でさえ、完全には理解し切れないのだから、99.99%の人は表面しか知り得ないと言って良いのかも。そう考えると、出来ることは他人の深層まで知ろうとすることではなくて、知っているごく表面の言動からその人を“決めつけない”、ってことか。

そんなことを考えた作品だった。

落ち着いてじっくり観賞できる作品で脚本・演出・役者とも良かったと思う。

泣き虫オヤジ