「宝の海」密輸 1970 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
宝の海
1970年の韓国クンチョン港を舞台に繰り広げられる海女さんたちとヤクザ、ベトナム帰りの密輸業者、汚職役人、そして人食い鮫が入り乱れての金塊争奪戦。
おりしも同じ年の暮れにはマサチューセッツ州の全寮制高校で嫌われ者の教師と休暇を寮で過ごすことになった問題児の生徒との心温まる交流の物語が繰り広げられていた年でもあった。
当時の韓国流行歌をバックにレトロ感も満載で中身は現代風にブラッシュアップされた作品を否応なく期待する。
監督は「ベルリンファイル」や「モガディシュ」で観客の度肝を抜いてきた韓国サスペンスアクションでは右に出る者がいないリュスンワン。今回も期待値をはるかに超えてくるだろうと思っていた。
役者もそろっていて舞台も申し分ない。しかしこれがなぜか盛り上がらない。前半部がコメディ要素を入れすぎて散漫になりすぎたせいか全然没入できなかった。こんな調子が作品半ばまで続いて、いつ面白くなるんだろうかと思いながら見ていた。
後半ヤクザの出入りのあたりからいきなりエンジンかかりだすがもはや後の祭り。とにかく前振りが長くその前振りも面白くなくて作品への興味が失せてしまった。
登場人物がやたらと無駄に大声で怒鳴りまくったりと韓国映画のだめな点も目についた。クライマックスの一番の見せ場である鮫がいる海でのバトルも期待したほどでもなかった。
キャラの濃い海女さんたちの痛快な冒険活劇を期待したんだけど、この出来は残念。リュスンワン監督は昔、「ミスタータチマワリ」なるかなり微妙なコメディー映画でも痛い目にあったのだから、シリアス路線の方に徹した方がいいように思う。次回作に期待します。