「敵か?味方か?」密輸 1970 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
敵か?味方か?
キム・ヘス&ヨム・ジョンア、私とも同世代であり長く第一線で活躍を続けるお二人の競演を楽しみに、サービスデイの角川シネマ有楽町の午前回へ。客入りはそこそこで年齢層はやや高めな雰囲気です。
1960年代後半以降、韓国は「漢江の奇跡」と言われる経済成長期に入ります。国家主導で工業化が進められ、急成長に付き物の「公害」と「格差」という煽りを受ける1970年代半ばの漁村クンチョンが物語の舞台。当時、韓国はまだ輸入が自由化されておらず、海外製品には高い関税がかけられていた時代です。そこで、漁師たちは生きていくための手段として「密輸」に手を出すわけですが、、、
終始「敵か?味方か?」が判断し兼ねるバランスの登場人物たち。時系列が行ったり来たりする作りで、一度で完璧な把握は難しいですが、起こることのダイナミックさが「そんな細かいこと」を気にすることを忘れさせてくれます。そもそも、「その日暮らし」だったところからの「金遣い」や「急な出世」など、税関でなくても「怪しい」のはお見通しなのですが、そこには当然「裏」があるわけです。そしてまた、別の「鼻が利く」人間が裏をかこうと現れれば「混沌」は必至です。状況やその時の立場によって態度が変わる姿の滑稽さについつい苦笑が止まりません。
キム・ヘスとヨム・ジョンアのカッコよさは本作においても健在ですが、どの立場からも絶妙な距離感で、「敵か?味方か?」の関係性を曖昧にするトリックスター的な役割を担うオップン役、コ・ミンシがとてもいい仕事をしていると思います。またクォン軍曹役のチョ・インソン、あんたカッコよすぎるぜ。そしてまた、リュ・スンワン監督、脚本の観客の心をつかむ「そつのなさ」で満足度の高い一作となっています。