「マスクは暑いし蒸れるよね、と言っている場合ではなかろう」モンキーマン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
マスクは暑いし蒸れるよね、と言っている場合ではなかろう
2024.8.28 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年のアメリカ&カナダ&インド&シンガポール合作の映画(121分、R15+)
幼少期のトラウマを払拭しようと目論む殴られ屋の青年を描いたアクション映画
監督はデブ・パテル
脚本はデブ・パテル&ポール・アングラウェラ&ジョン・コリー
英題の『Monkey man』は劇中のファイトクラブでの主人公のリングネームのこと
物語の舞台は、インドにある架空の街ヤタナ市
その地下施設にあるファイトクラブで殴られ屋をしているキッド(デブ・パテル)は、ある目的を持って金を貯めようと考えていた
格闘技のプロモーター・タイガー(シャルト・コプリー)はケチな男で、いつも八百長試合を強いていた
ある日、情報屋の少年ラッキー(Harshit Mahawar)から情報を得たキッドは、クラブ「キングス」のオーナーであるクイーニー(アシュウィニ・カルセカル)に接触を試みるために「財布の盗難」をでっち上げる
その財布を彼女の元に届け、クラブでの雇用を嘆願し、無事に雑用係として入り込むことに成功した
クラブでは、世話係のアルフォンソ(ピトパッシュ)がクイーニーに気に入られていることがわかり、彼に取り入るためにファイトクラブの八百長の話を教える
キッドの言うとおりに大儲けをしたアルフォンソは、キッドをウェイターに昇格させ、貴族向けのルームへと連れてくる
そして、そこでキッドは、目的である汚職警察署長ラナ(シカンダル・ケール)にたどり着くことになったのである
映画は、いわゆる復讐劇となっていて、宗教家の導師ババ・シャクティ(マカランド・デシュバンデ)がラナと結託して、キッドの住んでいた土地を奪ったと言うもので、その際にキッドの母ニーラ(Adithi Kalunte)が命を落としていた
その復讐のために金を貯めて情報を得て、ラナの入り浸っているクラブに侵入すると言う過程を踏んでいる
そして、銃を手に入れて、相手と二人きりになるチャンスを得たものの、他のことに気を取られてしまい失敗してしまう
そこからは追われる者となり、一度は警察に捕まるものの自力で脱出し、致命傷を負った先で「ある人物」に助けられると言う流れになっていた
この人物は「インドの第三の性と呼ばれるヒジュラ」を匿っているアルファ(Vipin Sharma)で、シャクティと対立している関係にあった
キッドはそこで鍛え直してラナに挑むことになり、同時にファイトクラブにてこれまでの鬱憤を晴らし、クラブ「キングス」を壊滅へと導いていくのである
一応、ヒロイン的な立ち位置のシータ(ソビタ・ドゥリバラ)というキャラがいるのだが、キッドとの絡みは少なめになっている
彼女はクイーニーに虐げられてきた過去があり、彼女自身もその鬱憤を晴らすことになる
この怒涛の後半に向かうまでがかなり退屈になっていて、それは「キッドの復讐の目的をミステリー要素にしている」からだと感じた
公式HPや予告編などでは「復讐劇」であることは明言されているが、映画の進行だと「キッドのトラウマ」が回想とフラッシュバックで徐々に明かされる流れになっていた
なので、母親との良い思い出を壊されたんだなあぐらいの印象から、どうやって汚職警官と繋がるのかと言うものが明かされるのが遅い
それゆえに、キッドに感情移入をする間もなく、どちらかと言えば「アルフォンソかわいそう」という感情移入の方が先立ってしまう
この構成にしたのは明らかに失敗で、回想&フラッシュバックで明かしていくよりは、冒頭15分でラナの所業を見せつけ、彼が実はシャクティと繋がりがあった、と言う方をミステリーにした方がマシでもある
映画の流れだと、すでにキッドはシャクティを射程に入れているが、ラナとの因縁が後回しに描かれるので、このバランスが物語のテンポを削いでいたように感じた
いずれにせよ、プロデューサーの名前とか、『ジョン・ウィック』の製作陣が集結!に踊らされた人が多数のようだった
俳優デブ・パテルの監督作と考えれば、これはまだ発展途上の作品であることはわかる
自身が主演をする場合にありがちなことが結構起こっていて、もう少し客観視できるシナリオに育てた方が良かったように思う
また、モンキーマンとしてのイメージはそこまでなく、それを強調するなら「マスクを被った暗殺者」という感じに仕立てないと無理だと思う
ラナの襲撃、シャクティへの復讐の際にモンキーマンになっていないところが最大の敗因のようにも思えるので、マスクをさっさと脱ぎ散らかした時は「意味ねえだろ」と心の中でツッコミを入れてしまった
色々と残念なところが多いので、もう少し作り込みを考えれば化けたのかな、と感じた