「選挙エンタメの最高峰」教皇選挙 辻井宏仁(放送作家)さんの映画レビュー(感想・評価)
選挙エンタメの最高峰
我々、日本人に馴染みのないコンクラーベ。
その難解な儀式をテーマにして
エンタメとして楽しめるのだろうかと不安だったので
敬遠していたが、
公開中にローマ教皇が死去し、
現実世界でコンクラーベが始まろうとしている。
時々、未来を予感したような作品があるが
それは作り手がリアリティを追い求めた結果であって
やはり名作が多い。
そんな訳で実際に映画館に行った訳だが
想像以上にエンタメ色が強く
観終わってみれば
今年、最高の作品との出会いとなった。
難解さは無い。
選挙を描いたエンタメ作品といえば
HUNTER×HUNTERのハンター協会選挙があるが
本作もこれに類する
知的選挙エンターテインメントである。
誰が当選するのか?
このシンプルな目線一つで最後まで楽しめる。
よく考えれば選挙の構造そのものが
エンタメに最適なのである。
候補者の紹介パートから始まり
投票を通して誰か1人が当選する
そこにはカタルシスが約束されている。
本作に登場するのは数人のシスターを除けば
どこか胡散臭いおじさんだらけ。
そのため華々しさなど微塵もないが
全ての神がかったカットにより
息を呑むほどの絵画的な美しさを印象づける。
本作は次期教皇を決める選挙の裏側を描きながら
非常によく練られたミステリーの多重構造で
構成されている。
最高機密の儀式として
密室の中で行われる緊張感が故に
全てのミステリー要素が際立っていたし、
コンクラーベを執り仕切る主人公ローレンスが
目の当たりにするラストは
語り継がれるほどの名シーンと言えるだろう。
本作を楽しむために
信仰心やキリスト教への知識など必要ない。
ただエンタメを求めば与えられる。
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