劇場公開日 2025年3月20日

「神の息吹を感じながら」教皇選挙 asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5神の息吹を感じながら

2025年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

 我ながら陳腐な見出しやと思うんですが、しかしシスティーナ礼拝堂を舞台に起こる出来事は、神の御意思が働いているかのような・・・そう思わせるに十分な見ごたえある映画です。

 タイトルが指し示すように、ローマ教皇を決める選挙「コンクラーヴェ」がテーマの物語。先代の教皇が亡くなり、新たな教皇を擁立するため世界中の枢機卿がシスティーナ礼拝堂に集結。執り行うのは本作の主人公で首席枢機卿:ローレンスとなった。選挙は誰かが教皇選出条件である3分の2の得票を得るまで缶詰め状態にて投票を繰り返すシステムなのだが、そこは野心と陰謀が蠢いていた・・・てな感じのあらすじです。

 観てて、もはや政治の世界。

 教皇に選ばれればキリスト教で最も高い地位に就き、また後世に名が残る。その権力や今でも絶大であることから、選挙期間中、派閥やら野心やら過去の粗探しやらと、誰もが自分が教皇になりたいと感じているのがよくわかる。主人公の首席枢機卿:ローレンスは「自分がならなくても」と思いながら、また彼の旧知の仲であるベリーニも「自分はなりたくない」と言いながらも、結局は心の底に野心を持っている。やはり人間とは利己的な人間であると変に納得してしまう。

だが、神はそんな彼らの心を見透かし、教皇の器に非ずと言っているかのように騒ぎが起こり始めます。荘厳な舞台背景と格調高いカメラショットが、次々に起こる出来事を“神の御意思”かのように感じさせるんです。そして次々に起こる騒動の中で起こる一人のスピーチが、「ここでくるか!」と思わせるんです。このスピーチ、まさに教皇にふさわしいと感じさせ、「神はこの人を遣わしたか」とまた感じさせる。人間が執り行う教皇選挙なのに、

 神が教皇を選出したかのような展開。

 しかもクライマックスになってさらに一悶着あるのですが、これは現代に対するメッセージであるのでしょう。自分としては、

“多様性に対して寛容に”というものではないだろうか。

 なんと格調高く、かつミステリックな面白さを兼ね備えた作品か。主演のレイフ・ファインズを含め全員が風格を纏っていて、さらに神の息吹を感じさせるような演出をしたエドワード・ベルガー監督。もちろんカメラマン:ステファーヌ・フォンテーヌの撮影があってこそ。そして訴えてくるは現代で最も叫ばれているであろうテーマの一つを、最も伝統的な行事の一つに取り入れたのも面白い。世の中は絶えず変化していて、そのままでいいものなどない。伝統に凝り固まらず、常に現状に対し疑念を持ち、前進という名の変革こそ大事であると訴えているのではないか。たしかに、“神は万人に対し寛容である”とも言うしなぁ。

 コンクラーヴェを題材にしたミステリー作品である本作、その見ごたえは十分でした。これは、面白い!

asukari-y
asukari-yさんのコメント
2025年4月11日

ノーキッキングさん、コメントありがとうございます。

なるほど、そういう見方もあったんですね。たしかに前教皇がローレンスを引き止めたのも、シナリオに欠かせなかったからかもしれませんね。

自分としては、あのガレキを浴びせるシーンを見て、「全て神も見ているぞ」と見えない力が可視化されてるように感じました。

asukari-y
ノーキッキングさんのコメント
2025年4月10日

途中、色気を出したローレンスに天上からのガレキを浴びせ、シスターアグネスに軌道修正させ、ベニテスの演説でゴール。すべては前教皇のシナリオ通りでしたね。

ノーキッキング
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