劇場公開日 2025年3月20日

「秘密に覆われた教皇選挙を「のぞき見」。」教皇選挙 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0秘密に覆われた教皇選挙を「のぞき見」。

2025年4月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

神に仕えるべき聖職者であっても世俗の欲は人と変わらない。むしろ、教会のトップに上り詰めようとする人達であるから、人一倍上昇志向や権勢欲が強いのは当たり前かもしれない。これはエンタメであり実際とは違うであろうが、教会からクレームが来てもおかしくないほどスキャンダルが満載の教皇選挙である。最初から最後まで息もつかせぬ展開で、緊迫感に満ちた極上のサスペンスドラマになった。
教皇選挙を取り仕切ることになったローレンスの奮闘から目が離せない。死期が近い事を悟った教皇が、次の教皇選びを信頼のおけるローレンスに託したことが物語の伏線になっている。それは「教皇にふさわしい人物」を選ぶことに尽きる。不正に関わったり女性関係に問題がある者は駄目である。「開かれた教会」をめざし、宗教・人種・性別等の多様性に寛容な考えを持った人物でなければならない。まるで自分がローレンスになって教皇選挙を取り仕切っているかのような臨場感がある。疑惑の真相を解明し、不適格な人物を一人ずつ排除していく。すべて前教皇の意志に従って物事が進んでいくように見えるのも面白い。ローレンスにとっては大変な仕事だが、使命感の為か何となく楽しそうでもある。裏方に徹しているつもりが、自分が教皇になれるかもしれないとなった時の心躍る場面も面白い。これが本心の半分だろう。
教皇選挙のドタバタの末に「教皇にふさわしい人物」が選ばれた。ローレンスはやっと使命を果たしたと安堵したものの、彼も重大な秘密を持っており、完璧な教皇とは言えなかった。ローレンスも戸惑いながら、自分にどうにかできることじゃない、すべて神の御業であると自分を無理矢理納得させたように思えた。
大多数の枢機卿が賛同するまで何度でも投票を繰り返すという教皇選挙の仕組みから、こんなに見事なサスペンスドラマを作り上げたことに敬意を表したい。日本人には縁遠いが、カトリック教関係者にとっては、秘密に包まれた教皇選びの儀式を覗き見た快感もあるかもしれない。

ガバチョ
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