劇場公開日 2025年3月20日

「現実、の闇深さ」教皇選挙 BDさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現実、の闇深さ

2025年3月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

自分の悪い癖でして、どんな映画も前情報をあんまり入れずに鑑賞しちゃうと言う…その結果、序盤で混乱。

登場人物が多く、同じような格好で区別がつきづらい。これに参った。誰が誰だか分からん。眠気モードか?
しかし、間一髪救われたのが絵の美しさ。そして、整然と動く枢機卿やシスター、教徒たちの荘厳さ。静けさと一瞬を貫く音。投票シーンの流麗なカット割。脚色賞、何を評価した賞なのか知らずに書きますが、言葉通りに取るととても納得。とりあえず序盤はこれ見とこ。

そして、脚色に見惚れているうちに、朧げにストーリーが明らかになっていく。どうも中心人物らしい、純粋な主席枢機卿のローレンス。なんとなくヒール役っぽい保守派のテデスコ。カラード、リベラル、さまざまな価値観と思惑の中で行われるドス黒い選挙戦。現代的なモチーフを取り入れたドロドロエンターテイメント。ワンパターンな私の発想で恐縮ですが、なんとなく海外版アウトレイジを感じました。駆け引きと権力闘争、ローレンス枢機卿による候補者の追及はある種ヤ⚪︎ザの追い込みにも似て…

こんなエンターテイメントを見る中で、逆に少し感じてしまったのは、現実って闇だよなぁ、ということ。

映画の中でヒールだったテデスコ。ちょっと嫌いになれない。なぜかというと、お前らが何と言おうとも俺は変わらん(映画的には「確信」でしょうかね。良いものとして扱われてはいませんでしたが)というものを感じたから。
支持するかしないかはともかく、当然これはこれで一つの主張なんですよね。そして、それが途中までしっかり支持されたのは、カトリックという文化にはそれなりにマッチしているんだと思います。

やいのやいの言うけど、現実そこまでリベラルな方向にいかない。でもみんな、現実って意外と保守的だよね〜、を口に出すと色々言われることを分かってる。だからこそ、声に出ない票数としてそれはカウントされる。

オピニオンの世界では、「ああしたいこうしたい」と議論が繰り広げられていても、現実では「いやいやそうは言ってもね」の繰り返し。エンターテイメントの世界で正義と扱われることは、現実世界ではいつだって夢物語。ですし、「耳障りが良いこと(裏を返せば人気取りのために媚を売っている)」として処理されることもありますよね。

この映画は極上のエンターテイメントであるからこそ、支持される価値観はこれで構わないと思います。しかし、サラリーマン生活を20年くらいやってしまった40代のおじちゃんは、何やら複雑な気分と共に帰路に着くことになるのです。やっぱり40代のおじちゃんにはトップガンマーヴェリックの方が良くないか?ねぇねぇマーヴェ、もう一回マッハ105 でフライトしてよ。でもそこ含めていい映画だったので星4つです。

渋谷のシネクイントのレイトショーで見たのですが、帰り道は酔っ払いの若者、ボイパの路上演奏、桜を撮ろうとしたらピースで映り込む若者で相変わらず元気でした。なぁ、お前らのような感性ならこの映画を正面から受け止められたのかな(そもそも見ない)。
以上です。すいませんひねくれてて、いい映画ですよホントに!

BD
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。