「教皇の秘蔵っ子」教皇選挙 ノーキッキングさんの映画レビュー(感想・評価)
教皇の秘蔵っ子
脚本賞受賞がなるほどと頷ける、近年の大収穫。日本的な例えなら魑魅魍魎が跋扈する伏魔殿。陰謀渦まく密室劇。居並ぶレッドハット(枢機卿)の佇まいは圧巻で絵面は良いものの、実際はムッとする加齢臭が充満した空間である。
物語は、当初から、選挙人リストには無く、最後に滑り込んで来たベニテスを逆転候補だと匂わせる。そして、次々と馬脚を露わし脱落してゆく候補者達を見せながら主題を語らせる。
我々は“理想”に仕える人間であって、”理想”そのものではない。
ある意味、開き直りに聞こえる言葉だが、亡くなった教皇は、そこに至る過程まで、全てを読んでいた。生前、誰のことも信用せず、密かに枢機卿全員の身上調査を行い、コンクラーベのシナリオを作っていたのだ。
辞任の申し出をしてきたローレンスは信用に足るとして、辞任は却下で、これを仕切り役に抜擢し、要所要所でシスターアグネスを補佐役に廻しながら、ベニテスの名言シーンへ誘導してゆくというものだ。
教皇は”彼“ベニテスの素性を知ったうえで選挙に送りこんだ、言わば、秘蔵っ子である。
ラスト、ベニテスの告白は二段落ちで、ヤラレタ感が強い。池から這い出てきた亀も教皇のお気に入りだったと得心するローレンスの表情は、久し振りに野外の風にあたった窓辺で、心無しかほのぼのとして見えた。
追記 もう一つの物語『シスターアグネス』
教皇庁職員の調査内容は、すべてシスターアグネスのパソコン内で管理され、ローレンスも度々閲覧していました。そして、彼は、あるヒントを求めて教皇の部屋に忍びこみますが、はからずも泣き出し嗚咽します。それは故人を偲ぶようでもあり、”愛“を思わせるようにもみえます。そこで、ふと壁に隠された紙片を見つけ出すのですが、その気配をドアの外で、事の”進捗“を確認するようにシスターアグネスがうかがっていました。
途中で色気を出したローレンスにはテロ?の爆破で天井からガレキを浴びせます。それは神罰のように思えたでしょう。
ベニテスの名演説の口火を切るきっかけも彼女の発言からでした。
こんなところに亀が? 亀は孵化環境でオス・メスが変わってしまう生き物。ベニテスともども教皇のお気に入りでした。亀を置いたのは彼女かも知れません。
亀を抱いたローレンスは階下の若いシスター達を見やりながら、その象徴的な結末を噛み締めます。
すべての過程で彼女の役割は大きなものでした。
ノーキッキングさん、私の方にコメントありがとうございました。マナー知らなくてすんません・・。このようにレビュワー同士の交流が活発になる前から(今見たら最初のは2008年ぐらい)思いついた時に自分の記録用に書いてきたところがありまして、コメントの活用方法等全然理解しておらず、ご迷惑おかけしました。意見が違うのは全然気にしておりません。むしろ新しい視点から映画の見方が広がったり、意見交換するうち、自分の考えている事もまとまったりもしますので。ただ、意見ではなく、感情的になられたり(ま、それも度合によりますが)、誹謗中傷目的の方は即ブロック、eiga.comに報告させていただきます。(こないだのボブディランの伝記映画、コンプリートアンノウンのレビューで、17年レビュー載せてて初めてyoutubeやXのコメント欄のような、なぜ私のレビューが気に入らなかったのか説明する能力も意図もない、ただ罵倒するだけの方が現れました。けんかには乗らず、すぐブロック、報告しましたが、ネットの民度の劣化を感じ、驚きました。)
ノーキッキングさま
moviebuffさんが、あちらのコメント欄に長い返信をされてるのでお知らせです。
※こちらのレビュー、追記した「オプンチア文学」改訂版は大正解でした😉
ノーキッキングさん、共感&コメントありがとうございます。
亀は孵化環境により雄雌が変化する生き物。それはつまり亀はインターセックスの比喩でもあり、前教皇お気に入りであることの暗喩でもあったのですね。なるほど。
レビューのシスターアグネスが選挙の成り行きに深く関与していたとの考察も非常に興味深かったです。確かに思い返せば要所要所でシスターアグネスが登場し、ローレンスの誘導役を果たしていたな、と。レビューを読むまで完全に記憶から飛んでいました。笑
それとテロの爆破で天井から瓦礫が落ち、教会に光が差し込むシーンは非常に印象的でしたが、個人的にあそこまで教皇が計算したものだったのかな?という点だけが引っかかってるんですよね。
サブスタンスへのコメントありがとうございます。私の見た回では終盤のステージのシーンで退場するお客が何人かいました。さすがに耐えられなかったんでしょう。気持ちもわからなくはないです。想像の斜め上を行く展開でしたからねえ。私は良くも悪くも観客の想像を超えてくれる作品は嫌いじゃないです。特に悪乗りしてるこの手の映画は。
ノーキッキングさま
リアルコンクラーベのタイミングで鑑賞したので、皆さんのレビューを少しずつ読んでいます😊
ノーキッキングさんのコメント、レビューに追記した方が良いのにと思うことがあります。余計なお世話だと分かっていますが、勿体ないです😅
こちらこそありがとうございます!
そこまでローレンスの心情深くまで見れれば楽しめて評価も変わると思うんですけどね~
それ以前に顔と名前が一致せずで(笑)
ベニテスは最終的に選ばれた彼ですよね!?ローレンスのお気に入りってのは見てて把握出来ました。
ノーキッキング様、共感、コメントありがとうございます!
教皇は、諜報機関的なものも持っているんですかね? 実際は分かりませんが、映画の中の教皇は二代続けて、人を見て自分で考える「疑問を持つ適切な人」だったのですね。
コメントありがとうございます。
亀にも深い意味が込められていたのですね。全く気づきませんでした。
この手の映画は、ライトな映画ファンが観ても面白いし、コアな映画ファンが観ても面白いように、2段階で楽しめるように、仕掛けをいくつか練り込んであるように思っています。
ノーキッキングさま
共感とコメントありがとうございます😃
新教皇の名前「インノケンティウス」、調べていくと「えっ!?」と固まりました。
全てはシナリオ通りなのか、あるいは最も選んではいけない人物だったのか…
私が思った以上に、奥行きの深い作品でした😓
ノーキッキング様
共感&コメント、ありがとうございました。
>コンクラーベのシナリオを作っていたのだ。
なるほどですね。そういう風に考えると、一度も姿を見せない亡き教皇がこの物語の主役ってことですね。本当に見応えのある映画でとても充実感がありました。
赤ヒゲでした。
コメント、有難うございます
ラストの亀が不意に現れるシーン
終幕の若いシスター達が、何やら話しながら楽しそうに走り去るシーン
それまでが、仰る通り加齢臭に満ちていた場面の連続だったので(笑)、一抹の涼やかな風が吹き抜けたような希望に満ちた終わり方でした
ネトフリの「西部戦線…」とは打って変わって、美しいもの・聖なるものしか出てこないはずの映像でしたが、緊張感が途切れずに、飽きずに最後まで鑑賞出来たのは、監督の手腕でしょうか?
(talismanさんがコメントしていましたが、音、特に呼吸音が、見ている人に緊張を共感させているのか??)
かなり地味なストーリーなのに、ここまで観客を惹きつけることが、この映画の最大の見どころかもしれません
コメントありがとうございました。「理想に仕える人間であって、理想そのものではない」。現代の為政者達にも共通するところがありそうです。社会集団は、成熟すると果実のように一部腐敗していくものなのでしょうね。政治も宗教も企業も同じ事…
コメントありがとうございます!
考察が深い!!なるほどと思わず声に出してしまいました。
確かに彼は前教皇を愛していたのかもしれませんね。その思いを見透かしていたからこそベニテスは、あなたこそ相応しいと言ったのかなとも。
教皇が決まった時のローレンスの表情、観る人によって解釈がわかれそうだなと思いました。
様々な解釈や考え方ができるこのような作品とても好みでした。
コメント共感ありがとうこざいます。
ローレンス枢機卿が自分の名前を書いて投票しようとした時に爆発で怪我を負いました。
気持ち的にも落ち込んだと思います。
神罰と思ったかもしれませんね。
私たちは何か起こった時にその事に対して何か悪いことしたかと思う事がありますが今は考えないようにしています。
コメントありがとうございます!
成程!神罰のように…とはまさにあの場面に相応しい表現ですね。
やはり彼にも、実は計算された野心があったのかな、と思ってしまいます。
共感コメントありがとうございました。枢機卿の名前が最初のうち頭に入らない、という事以外は分かり易いし、良く出来た脚本でしたね。紛れ込んできた亀、一瞬欲に負けそうになった所で爆発で我にかえる、とか、神の思し召し、ですかね。
映画館で空気の読めない人の近くはストレス溜まりますね。私は必ず事前に周りに誰もいない席を選び、混んでいたら前列を選びます。作品にできるだけ集中したいですよね。
コメントありがとうございます。
この映画は公開が非常に遅れましたね。
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」と
見せておいて、実は冒頭でみすぼらしい神の使徒は
前教皇により使わせられていた・・・という、
よく出来た脚本でしたね。
個人的には“両性具現“のオチはいらない。
品性が落ちた気がします。
共感とコメントありがとうございます。
すべてお見通し、全員を手のひらで転がしたはずの策士・前教皇だが、ベニテスは指の先で止まることなく、軽々と手のひらから出ていきましたね。ってかいつの頃からか、教皇を超える存在になっていたようです。
コメントありがとうございます。反キリスト教タスクフォースなるものを司法省内に設置するようですね。憲法に反するもので許されませんが、就任以降立て続けになされた洪水作戦でマスコミや議会による批判や司法判断の余地を与えずに既成事実化を狙ってるようです。そのタスクフォースを任されるのがキリスト教のやばい宗派で金持ちこそが神に選ばれしものだと拝金主義に染まる連中で同じキリスト教からも批判されていますね。
ありがとうございます。肉体的に非常に疲れた状況での鑑賞だっだのですが、眠くならず集中して観ることができたのが、私としては素晴らしい作品であることの証左になりました(笑)
ベニテスは自分の考えに従って、前教皇の思惑を超える感じでしたよね、選んだ教皇名もそういう意味ですか、やはり権力欲しいんでしょうね、ローレンスもちょっとグラついてたし。
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