アプレンティス ドナルド・トランプの創り方のレビュー・感想・評価
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非アメリカ人が描くアメリカ
本作を描いたアリ・アッバシ監督はイラン系デンマーク人である。祖国であるイランがアメリカと仲が悪いことは有名だが、その理由をよく調べてみると、1979年のイラン革命によって起きたイランアメリカ大使館人質事件がきっかけになったらしい。翌年に国交を断絶して、これが現在まで続いている。さらに、彼は非アメリカ人でもある。それだけにトランプという人物の枠を超えて、アメリカという国、そして、その国の資本主義システムに対して批判的である。代表作「聖地には蜘蛛が巣を張る」は未見だが、″スパイダー・キラー″と呼ばれる娼婦連続殺人犯サイードが、聖地を浄化する英雄として祭り上げられていくプロセスを生々しく描いているという。これは、イスラム社会における女性蔑視・男性支配を鋭く暴いているようだ。つまり、アッバシ監督は、トランプやサイードという怪物を描き出すだけでなく、その根底にある社会システムの歪みを批評するという映画をつくっている。
本作は、70年代から80年代のニューヨークを舞台に、ドナルド・トランプとロイ・コーンの師弟関係に焦点をあて、ビジネスマンとしての若きトランブの実像を赤裸々に描く伝記映画である。ロイ・コーンとは、ジョセフ・マッカーシー上院議員の主任弁護士として赤狩りを主導した政治フィクサーである。常に攻撃し、決して不正を認めず、負けても常に勝利を主張するという「勝つための3つのルール」をトランブに伝授し、彼をモンスターとして洗練させていく。とにかく攻撃的で、自らの非を認めずに徹底するコミュニケーションの仕方は、現代においては、アメリカという国の特有の考え方ではなくなり、SNSなどでは今やありふれた光景になっている。
選挙の結果はご存知の通り、トランプが圧倒的勝利をおさめた。この映画のメッセージは、届けたかった人たちに届かなかったということになる。そもそもこういう内容の作品を鑑賞する人たちは、トランプ支持層には少なかったのだろう。
あくまでも客観的
SWなどの世界同時公開作品を除いて洋画の公開が世界一遅い日本(嘘)、クリスマス映画を夏にやったりしているが、今作に関しては本人の大統領就任とほぼ同時というまさにグッドタイミング。そのおかげで日本では映画好き以外は知らない俳優しか出てないのに場内満席でビックリ。
話はトランプがまだ青年の頃からあの悪趣味なトランプタワーを建てるあたりまでを決して批判的でも好意的でもなく描いている。
トランプは次男坊でお兄さんがいたんだね。父親も権威主義者でそれが合わない長男には悪影響だったが、兄を反面教師にこそしていたとしても人格形成に影響を与えるほどにはトランプは高尚な人間ではないと見た。
セバスチャン・スタン自身の顔がパッと思い浮かばないせいもあってか、演じているトランプを「誰かに似ているなあ」と思いながらずっと見ていた。誰だ、タカアンドトシのタカ?いや、似ているのはトランプか。
しかし、こんな品性下劣なヤツが単なる不動産王じゃなくて政治家というか一国というか大国の大統領って、ほんま世界は終わってる。
プロパガンダか、問題提起か? これがトランプの実像なのか?
日本橋の映画館は公開3日目でほぼ満席。最前列での鑑賞となった。アメリカ新大統領、そしてこの映画への関心の高さを感じる。
鑑賞前の懸念は、多くの報道やメディアで知識人たちが強調するトランプの「悪魔性」を一方的に強調するものではないかということだった。多くの問題を抱える毀誉褒貶の激しい人物であるのは周知のことだが、2回の民意の支持を受けた人物である。そこには、多様な価値観の渦巻くアメリカの複雑な人々の意思が反映されている。
単純に断罪する視点で描くのは、彼に託された民意を矮小化するものになりかねない。そんな映画だとイヤだなと思ったのだ。
イラン出身のアリ・アッバシ監督のこれまでの作品は未見だが、調べてみると、単純な善悪の二元論でわかりやすく描く監督ではなく、「人間の複雑性」や「真実と言われるものの曖昧さ」を描いてきたという評価のようだ。期待を高めつつ、座席に座った。
冒頭で、弾劾され辞任したリチャード・ニクソン元大統領の記者会見を引用し、明快にテーマが提示される。
「もし、大統領が悪魔なのであれば、国民はそれを知る権利がある」
そして若き日のトランプの物語が始まる。
序盤では、権力とお金にしか興味がない若き日の彼の姿が描かれる。デート相手の女性が彼の軽薄さに嫌悪感を抱き、トイレに向かう姿が象徴的だ。
記録映画と見紛うほどトランプ本人にそっくりな主演俳優の演技がリアルで、エピソードも戯画化されつつリアリティ抜群だ。
物語は、資産家2世としての初々しい野心を持った若者のトランプが、悪魔的な能力を持つ弁護士ロイ・コーンに気に入られるところから進む。コーンはトランプに勝利の方程式である「3つの原則」を叩き込む。
1. 攻撃は最大の防御である
2. 決して謝罪するな
3. 現実を作り出せ
トランプはこの行動原則を武器に、欲しいものを次々と手に入れる。障害となる人物を社会的にも経済的にも「抹殺」することにためらいはない。
映画で描かれるトランプの実像は、徹底的に醜悪だ。恩師も、父母も、兄妹も、妻や子供すらも愛せない人物として描かれる。そして、自らの醜さを覆い隠すために整形手術を受ける場面では、その醜悪さがさらに強調される。
彼にとって「愛」や「絆」は重要ではなく、「3つの原則」のみが彼の人格を形作っているという印象が残る。
また、映画では政治家になる前の彼のルーツが描かれるが、何らかの社会課題認識や志に基づく政治的野心の原点は描かれない。本当に何もない空虚な人物ならば描きようがないのかもしれないが、これまで「人間の複雑性」をテーマにしてきたという監督の作風とは異なるのではないか。紋切り型に善悪の二元論で描く、ピカレスクエンタテイメント作品と私には見えた。
ラスト近く、伝記作家と思われる人物とのインタビューシーンで、トランプには語るべきルーツも思想もなく、彼の中にあるのは『3つの原則』だけの空虚な人物であることが重ねて描かれ、映画の締めくくりとなっている。
最後まで飽きさせない、強烈に面白い映画であった。
しかし、アメリカの複雑な民意を反映して選ばれた人物としてのトランプには一切触れられない。もちろん、政治家になる前の彼のルーツを描く映画だから、触れようもないのかもしれない。現代アメリカの複雑な現実に触れることなくストーリーが終わる点は物足りなさを感じるが、それこそが監督の狙いでもあったのだろう。
冒頭で投げかけられた問い――「もし大統領が悪魔ならば、国民はそれを知る権利がある」――は、映画全体を通じて、その悪魔性が補強される。
一方で、この映画には監督自身が「自らにも繰り返し問いかけた」作家的な深い問いではなく、観客を啓蒙しようとする意図が感じられた。まるで、「愚かな大衆の1人であるあなたにも、これでわかったでしょう?」と言われているような気さえした。
この映画を見たトランプ支持者はどう感じるのだろう? 本作は対話を生まず、分断を加速するのではないか?
とても面白く、よくできたプロパガンダ映画だ。これが観賞後の率直な感想である。私は何かを見落としているのだろうか?
明日就任するのは本当にこの人?
大体の悪徳弁護士ものは、倫理的にどうなの?とか、違法すれすれ!というものだが、ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)は完全に違法。
それでも、挙げられないのは、声を上げれば自らも破滅してしまうという人間の弱みをがっちり掴んでいる「勝者」だからなのか。ウツボのような澱んで微動だにしない瞳が恐ろしい。
そんなコーンに助けを求めたトランプ(セバスチャン・スタン)は、ウツボに飲み込まれて消化されてしまうのかと思ったら、大き過ぎてウツボがゾウの形に変形していく。
水をちびちび飲みジジババ相手に集金していた冴えないトランプが徐々に自信をつけていくところは応援したくなるような部分もあったが、増長し過ぎた彼は人間として醜悪極まりない。ラスト近くの手術はあえてグロテスクな描写が、フランケンシュタインのような怪物を作っているようにも見えた。
彼が超大国の主となるこれからの4年間、日本も相当強く出ないと滅茶苦茶にされてしまう。それにしても、次期大統領になろうという人を題材に日和らず忖度せず、よくこういう映画を作れるな、とアメリカの表現者たちのバイタリティは本当に尊敬に値する。
それにしても、コーンはどうしてあんなに力をなくしてしまったのかが分からず。年と病気が原因としても、愛人1人良い施設に入れられないなんて、お金は使い果たしちゃったの??
終わりがあっさりしすぎて、もっと見たかったので少し物足りなかったけれど、全体として怖さとストーリーがしっかりしており、見応えあり。ジェレミー・ストロングとセバスチャン・スタンの演技も素晴らしかった。
現役のトランプ氏の映画を作れる米国の強み。日本も見習うべき。
就任直前のタイミングバッチリの公開
就任の3日前に公開というタイミングバッチリなせいなのか、珍しく満席だったように思います。
まだ頼りなさのある若いドナルド・トランプが弁護士のロイから3コの教えを守りビジネス界でのし上がっていくストーリー。
まさに「ドナルド・トランプの創り方」でした。
なかなか興味深かったです。
観て思ったのは、ドナルド・トランプは自分が成功する事だけが目的で、そこに人としての暖かさとか、人との繋がりを大切にするとか、そういう人間味を感じる事がなかったって事。
何でも自分ファースト。
ニュースで見る彼そのものでわかりやすい人間のようでした。
どこまでが事実かわからないけど、この作品のように目的のために手段を選ばない人なら、大統領選も何か裏工作があったのかも?とか思ってしまいました。
それを演じたセバスチャン・スタンがメイクで寄せてるのもありますが、だんだん似てきててすごかったです。
アメリカでは去年の10月公開って、その時期にこんな作品が公開されるとはさすがアメリカです。
トリックスター
素晴らしい作品👍敢えていう 個人的に嫌・感。 ほぼほぼ権力者容認の 【俺の個人的感じ方にすぎない】大・・・会映画。人による 政治的な映画では無いよ
あっ イイ映画ですよ アリ・アッバシ監督 イラン🇮🇷アメリカの手のひら返し 経験者
主役 セバスチャン・スタンさん ルーマニア革命 目前
ジェレミー・ストロング さんも 特異な弁護士好演
星に関係なく 皆さんおススメ
そもそも 大統領就任目前の人の権力は絶大です。万歳 アメリカ🇺🇸万歳。頑張って欲しいし
他国の政治に介入する意見はここではしてはいけないです。
だから 民主主義で選ばれた 人 応援📣してます。トランプ🃏さん 頑張れぇ❗️
ただ 前の敗戦は認めようね。矛盾している。❓科学的に
アタック アタック 非は認めない 勝利を宣言 事前無料フライヤーに掲載
それは それで他国だから 意見は無いです。意見すべきで無い。
ただ 絶大な権力者だから 本作は容認はせずとも ほっておく
という意向が無いと 上映は厳しいと思う 前記入 勝利の3法則に従えば
この監督が上手く作ったとも言える。権力に取り入りつつ 好作品 政治メッセージ無し。
よって 本作は トランプさん🟰比較的良心的 純朴な青年 それが事実
AIDSで散った 悪徳弁護士 ロイ・コーンさん🟰この人が全て悪い
という描き方デス。でも 俺が脚本家 監督でも 同じ描き方するよ❗️全く同じに作ります。
極めてまともな 誠実な 大・・・会 映画 ワシも 新大統領支持する。
悪いのは ロイ・コーン弁護士のみに決まっている。ロイ・コーン🟰荒木貞夫さん東條英機さんひ弱なとこもそっくり
トランプ🃏さんは 器がデカくて最高なのだ❗️贅肉除去手術どうなった気になるわぁ❓
有料🈶有料パンフは 考えるきっかけ となるので是非購入を。
史上初の 政治も 軍隊も関係なかった 大統領 最高😀デス。
有🈶有料パンフでは 何気に ロナルド・レーガンさん 比較してるが
トランプ🃏さんはそんな小物じゃ無いって。レーガンさんと違い アイビーリーグの ペンシルベニア大学出てるし
まさに 好きでは無いが 人生の一部に共感できる 名作。ゼロサム思考は正論。見習 から 師匠へ
政治的な映画ではありません。 是非 トランプさんを良く知りましょう 誰でもおススメ
前3列除き 満員🈵も納得の 好作品 俺も 彼に『お前はクビだ❗️』と言われたい 気持ちの良い
トランプさん 実は良い人作品
【驚いた点】
・トランプ様 1946 この作品の前に見た 『敵』の設定 上回る年齢層 長塚京三さんは1945だから先輩
・弁護士役の ジェレミー・ストロングさん 1978 俺より年下にビックリ🫨
・俺 個人的に トランプさんの 3人目の奥さん 今のメラニアさん好き😍😍なのね 結構古女房 失礼 にビックリ。でも好み😍😍😍
・アメリカ🇺🇸さんの学歴は複雑 前の前の オバマさんも最終はハーバード院だけども カレッジ経由
トランプ様も フォーダム大学経由 で ペンシルベニア大学学部 トランプさんは超優秀なのだろうが リクルーター
ほぼほぼ 新入社員採用的 に違和感。 ボランティアって見返りがないからボランティアなんだよ アメリカさん❗️
トランプ様 素晴らしい 他国民ながら期待大❗️最高❗️皆さんも観て
ただ 『力とは 行使できるのにしないこと【by スピルバーグのシンドラーのリスト】』なので 偉大なる大統領
素晴らしい 👍よろしく あっ❗️日本の政治家は全員全て全員政党に関係なく無能小物なので 大目に見てください。
ドナルドとロイの物語
次期アメリカ大統領ドナルドトランプが、まだ世間知らずのお坊ちゃんだった頃から、アメリカの、世界のトップへと登りつめていくまで、いかにして“怪物”は作られたのかを描いた本作。
主人公はドナルドですが、彼のビジネスマンとしての人格形成に多大な影響を与えたロイコーンもまた、主人公の一人でした。
敏腕弁護士ではあるけれど、汚い手も使いまくる強烈な人物ロイが、ドナルドを見出し育て上げていきますが、想像以上の逸材だったドナルドが頭角を表していくのは、サクセスストーリーとして面白い一方、ドナルドの良い面はほぼ描かれてないこともあり、ビジネスマンとしては優れているけれど国のトップとしてはどうなのか…と、どうしても思ってはしまいます。
インタビューで冗談混じりに大統領選立候補を語ってはいたけれど、どうして本当に大統領になろうと思ったのか、そのあたりの心理は読み取ることはできませんでした。
そして何より、現役の政治家をここまで赤裸々に描き切るアメリカは、やっぱり凄いです。色々初めて知ることも多く、衝撃的でした…どこまでが真実かは分からないけれど。
面白いけど驚きは無い
3つのルール
ダークヒーロー誕生物語
トランプの創造主の栄光と没落
2025年1月20日に2期目のアメリカ大統領に就任したドナルド・トランプの若き日を描いた作品でした。不明にして知らなかったのですが、”アプレンティス(Apprentice)”というのは”見習い”を意味する単語であると同時に、2004年から2015年までの間、アメリカNBCテレビでトランプの司会で放映されていたリアリティ番組の番組名だそうです。有名な「You're Fired!(お前はクビだ!) 」というトランプの決め台詞は、この番組で発したものだということを、この作品を観た後に初めて知ったところでした。
ご存じの方にとっては何の驚きもないところでしょうが、この番組は企業経営者の片腕として働きたい十数人の候補者=見習いが番組内で課題に取り組み、毎週1人ずつ”Fired”されていき、最後に残ったものが採用されるという内容らしいのですが、本作のトランプの見習い時代を描いており、英語による原題”The Apprentice”もさることながら、邦題の副題である”ドナルド・トランプの創り方”というのも秀逸な題名だと感心しました。
さて内容ですが、まず驚いたのがトランプ役のセバスチャン・スタンがトランプに無茶苦茶ソックリということ。勿論40年ほど前の若き日のトランプの姿は直に知らないのですが、容貌と言い振る舞いと言い、本人が演じているんじゃないかと思えるほどの再現度でした。
また演技の凄みを感じたのは、本作でトランプを創造した創造主として描かれたロイ・コーン役のジェレミー・ストロング。最初にトランプと出会った頃のロイ・コーンは、触ったら切れそうな強面弁護士で、まだ青さのあるトランプを叱咤しながら彼が不動産業界でのし上がっていくのを手伝います。しかしながらトランプが一角の不動産王になった頃には逆に没落するロイ・コーン。この時の弱々しく衰えた姿を演ずるジェレミー・ストロングの演技はまさに絶品でした。というか、本作はトランプの物語と言うよりも、トランプの創造主たるロイ・コーンの栄光と没落を描いた作品だったと言っても過言ではないように思いました。
続いて本作のキーワードであるトランプの「勝つための3つのルール」について。一つ目のルールは「攻撃、攻撃、攻撃」、二つ目は「絶対に非を認めない」、三つ目は「譬えどんなに劣勢でも、勝利を主張しろ」というものでしたが、これはロイ・コーンがトランプに教えたものとして描かれていました。確かにトランプの政治姿勢は、この3原則に従っており、トランプを表すのに最も適した言葉だと感じました。
因みに2016年のアメリカ大統領選挙にトランプが出馬し、あれよあれよと共和党候補になり、最終的にヒラリー・クリントンを破って本選でも勝利しましたが、当時彼に対して思ったのは、「アメリカにも橋下が出て来た」ということ。橋下とは勿論大阪府知事及び大阪市長を務めた橋下徹氏のことですが、彼は著書の中で「正直に自分の過ちを認めたところで、何のプラスにもならない」(『図説 心理戦で絶対負けない交渉術』日本文芸社)、「交渉では“脅し”という要素も非常に重要なものだ」(同)、「嘘つきは政治家と弁護士のはじまりなのっ!」(『まっとう勝負!』小学館)などと述べており、トランプ3原則とかなり被っています。
本作を観た結果、トランプと橋下氏の同質性を改めて感じたところでした。
そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。
この映画を観れば、君もトランプになれる!
監督の過去作『ボーダー 二つの世界』は公開当時に鑑賞していたが、『ボーダー 二つの世界』は重厚な映画だったなあという印象を持っていたため、今回のオープニングがド派手でノリノリな感じだったことに戸惑い、冒頭から不意打ちを喰らった気分になった。
序盤、若き日のトランプと弁護士のロイ・コーンが高級クラブで初めて出会う場面。
ここでの政財界の実力者たちが交わす会話が、差別に満ち溢れたリベラル批判に終始。
彼らが下品な笑いで盛り上がる様子を見て、この映画は2023年公開の『レッド・ロケット』みたいな、最低な人間たちの振る舞いを観て楽しむ映画という認識になった。
この映画はトランプとコーンの「師弟関係」がメインの話。
コーンがトランプに伝授する「勝つための3つのルール」が、今のトランプそのものを表していて笑ってしまう。
この3つのルール、知的にはとても思えないが、そういうことをする人が今の世の中には増えてきているように感じるし、それが通用してしまっていることを考えると、社会はどんどん劣化しているんだなと思えてしまう。
本作でトランプの半生を観ていると、いろいろなことわざが頭の中に浮かんできた。
「勝てば官軍」「恩を仇で返す」「因果応報」。
セバスチャン・スタン演じる若き日のトランプが、「本当に若い頃はこんな感じだったのでは」と思ってしまうぐらい説得力のある演技だったが、歳をとるたびにどんどん今のトランプに似ていくのが凄い。
ジェレミー・ストロング演じるロイ・コーンの方は見た目や振る舞いがオバマ元大統領っぽいなあと思った。
なんて意地悪な演出。
トランプとコーンの共通点は見た目を気にしているところだが、違うのはコーンが筋トレなどで体を引き締めているのに対して、トランプは努力せず金の力でなんとかしようとするところ。
トランプの脂肪吸引と薄毛対策として頭皮を手術するシーンが、リアルでグロかった。
ここは『ボーダー 二つの世界』っぽいと感じた。
イヴァナに一目惚れした後のトランプの行動が完全にストーカー。
金を持っているだけに厄介すぎる。
イヴァナがたまたま「お金大好き人間」だったから上手くいっただけに思えた。
トランプは外見、イヴァナな財産目当てで結婚するわけだが、歳を取れば破綻するのは容易に想像できる。
コーンの「結婚=財産を半分取られる契約」という解釈が新鮮。
結婚前から「離婚した時にどうするか」の話し合いを持ちかけるのも凄い。
「離婚したらそれまでに渡したプレゼントは返すこと」って、せこすぎる。
トランプとイヴァナが口論中、イヴァナに何を言われても平然としていたトランプが、髪が薄くなったことを指摘された瞬間激怒するのは思わず笑ってしまったが、その後すぐにトランプが性暴力によってイヴァナを黙らせるシーンで、劇場内が凍りついた感じがした。
この映画を観ていると、トランプのやりたかったことが「富裕層への優遇(具体的には減税)」ということがよくわかる。
法案を通そうとするときは「庶民のためにもなる」みたいなことを言っていたが、いざ法案が通って大儲けした後、目に付くのはトランプのケチな体質。
日本でも「トリクルダウン(今回調べるまで「トリプルダウン」だと思っていた)」といいながら、富裕層や大企業を優遇する政策を取り続けた結果、企業の内部留保は過去最大を記録する一方、給料はたいして上がらず、実質賃金は低下の一途。
おかげさまで、貧富の差は超拡大。
物価上昇で庶民がどんなに苦しもうが、金持ちにとっては対岸の火事。
どう考えてもおかしいと思うのだが、そうは思わない人が世の中には大量にいるのが辛い。
余談。
映画館が6階にあったので、そこに向かうためのエレベーターに乗る時に起きた出来事。
1階でエレベーターをしばらく待っていたら、エレベーターが到着。
扉の前で待っていた人が一気に乗り込んだ結果、エレベーターはすぐにほぼ満員状態。
そんな中、一人の老人がエレベーターにやって来て、コントロールパネルの前に立っていた20代ぐらいの男に「上行くの?下行くの?」と質問。
ところが、男はガン無視。
老人が再度尋ねてもガン無視。
近くにいた女性が「上行きますよ」と返事を返した結果、老人も乗り込んで、エレベーターは出発。
エレベーターが上昇中、コントロールパネルの前に立っていた男が突然、老人に向かって「何で俺がお前みたいな身分の低い人間の質問に答えなければいけないんだ」と意味不明な発言。
「うわ、何このネトウヨっぽいやつ」と思っていたところ、エレベーター後方にいた女子高生二人組のうちの一人が「意味わかんない」とぽつり(みんなに聞こえるぐらいの小声で)。
一気に高まる緊張感。
その後、沈黙で進み続けるエレベーター。
6階に到着。
降りるのは自分一人だけ。
降りるのが、ものすごく気まずかった。
映画を観ながら「あの男もトランプの影響かも」と思った。
サブタイトル通りの作品
実業家としてのトランプの、何を描きたかったのかがよく分からない
トランプに似ているというイメージのなかったセバスチャン・スタンだが、特徴的な口元をうまく再現していて、そのうちトランプ本人に見えてくるのだから、やはり熱演と言って良いのだろう。
内容的には、トランプと、彼に影響を及ぼした弁護士との関係が描かれているのだが、確かに、弁護士は、成功するための三原則なるものを教示しているものの、それで、トランプが、純粋な若者から「怪物」に変身したのだとはとても思えない。
攻撃的で、自分の非を認めす、勝つことに執着する実業家なんて、それこそ五万といるだろうし、生き馬の目を抜く実業界では、そういうキャラクターこそ求められるに違いないと、逆に納得してしまった。
トランプがのし上がっていく手口にしても、相手の弱みにつけ込んで脅迫し、人種差別の訴訟を取り下げさせたり、ホテル建設に伴う税金を免除させたのは、あくまでも弁護士の方で、トランプ本人があくどいことをした訳ではない。
あるいは、積極的な不動産事業の展開で資金繰りが苦しくなったり、結婚生活に行き詰まったり、脂肪の吸引や薄毛対策の手術を受けたりはするものの、それで、トランプの人格に大きな問題があるとも思えない。
むしろ、エイズに罹患した弁護士を、一度は切り捨てようとしたものの、最後は、死期の迫った彼を自宅に招いて、感謝の気持ちを伝えるところなどは、トランプが「善い人」に思えてしまった。
結局、実業家としてのトランプの出自は分かったものの、そんな彼の何を描きたかったのかは、最後までよく分からなかった。
トランプが、国民的な人気を獲得する契機となったリアリティ番組への出演のエピソードは描かれないし、自らが政治家になるよりも、金を渡して政治家を動かした方が良いと考えていたトランプが、どうして大統領になろうと思ったのかも分からずじまいで、観終わった後には、大きな物足りなさが残った。
MBTI起業家わかりみ
トランプ氏の言葉を信じる?
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