「誰も幸せじゃないのに進み続ける未来」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
誰も幸せじゃないのに進み続ける未来
アプレンティスとは、弟子とか師弟とか見習いとかって意味らしい。
若いドナルド・トランプは成功を夢見つつ、良心があって受身な青年として描かれていた。
そんなドナルド・トランプを、ロイ・コーンが育てるが、やがてドナルドはロイが予想もしなかった怪物になるという話。
ドナルド・トランプとは、アメリカの超富裕層の傀儡であるって描き方なのかなーって思ってたけど、そうではなかった。そういう面もあるだろうけど、そこが主ではなく読めた。
ロイの勝利の三原則?(攻撃攻撃攻撃・非は認めない・勝利を主張し続ける)を実践し続けることによって、その成功体験から降りられなくなった。
でも悲しみも喜びもあまり感じていない様子で、ドナルドは全然幸せそうじゃない。
だけどそれを辞めない。
何とかの一つ覚え的に、自らハマった地獄の沼の中で、溺れていることに必死で気付かないふりをして、未来に進む。その未来が全然キラキラしてないのに。
ラスト付近で、ドナルドの自伝を書くために雇われたライターが、めちゃくちゃあきれてた感じのシーンがすごく面白く、恐ろしかった。
コーンは自分が作り出した怪物に、冷たく袖にされて世を去る。
彼も、同性愛者でありながら、ホモフォビアを隠さず「アメリカの男」という虚構を演じて、犯罪も犯しながら弁護士をやってきたけど、あのおとなしい青年がよもやここまで化けるとは思ってなかったのだろう。
最初っから、コーンが標榜する世界は民主主義ではないと思うけど、あれを民主主義と本気で思ってたのかなって思う。
ドナルド・トランプ役の人、後年になればなるほどすっごく似ててよかった。
2025年2月。ドナルド・トランプが2期目のアメリカ大統領に就任して十日余り経過した。
彼は正気を疑うような大統領令を出しまくってて、流れてくるニュースに気が滅入る。
情報が溢れすぎている時代、日々に生活に追われていたら、表面的で簡潔なメッセージしか頭が受け付けなくて、ドナルド・トランプの言うようなことがインプットされちゃうのもわからなくはない。敵を仕立てて、やり玉に挙げ攻撃することで、晴れる気分があるのもわかる。
程度に差はあれ、日本でも同じようなことが起きているから。
そこに良心の付け入る隙なんてあるんかい?もうやる気が起きねーよと、厭世的になっちゃうのが、相手の思うつぼなんだろうけど、やる気が起きねーよ。
なんなんこの世界、どこへ向かうんだろかね。