「歴史を知っているとより楽しめる」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 MP0さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史を知っているとより楽しめる
来る1/20に米国史上2人目、クリーブランド*大統領以来132年ぶりとなる復活大統領となるドナルド・トランプ。
*日本製鐵とUSスチールの買収に介入しているクリーブランド・クリフスの前者は地名だが、由来はクリーブランド大統領の親戚筋の先祖で独立戦争時の准将(後に将軍)に因む。
最初は今のトランプとは雰囲気も違うし、配役のミスマッチ?と思いますが、時間の経過と共に現実のトランプに近づいていく事に驚かされます。
インタビューで特殊メイクなどに極力頼らず、過去のトランプ氏のインタビュー映像などを研究して演技でカバーしたというから役者の凄さを感じます。
また師であるロイを抑えて、変貌…は見どころの一つ。
また個人的には父の会社に就職してトランプ・オーガナイゼーションの副社長という一方で仕事は家賃の取り立て(集金)で住民たちから嫌がらせを受けたりするシーン。まさにアプレンティス(見習い)時代といった所。
日本ではヒラリー・クリントンとの2016年の大統領選挙以降の事は報じられますが、NYの不動産王や資産家、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(BTTF,1985)の悪役ビフ・タフネンのモデルになった人物というイメージでしょうか。
米国では本作と同名のバラエティー番組『The Apprentice』(2004-2017)は米国版『マネーの虎』。BTTFでもFAXで登場する"You're Fired"(お前はクビだ)をトランプ氏に言わせる等のパロディを知っていると本作はより楽しめると思います。
特にBTTF Part2は必見でしょう。外観から内装、あの階段まで本当によく参考にしています。
本作の邦題は上記のイメージが十分にない日本向けに副題付きで描かれています。
米国やNYの時代背景、バックグラウンドの知識がないと感慨もなく、勝つために手段を選ばないエグい話に思えるかもしれません。
しかし本作のタイトルを元々の『アプレンティス』にこだわりたかった担当者の気持ちはわからないではありませんが、同番組が定着していない日本ではタイトル詐欺ではありませんが『ロイ・コーン ドナルド・トランプを創った男』としていたら評価はもっと高かったのではと個人的には思います。
作中にはドラッグ、乱交パーティやゲイのセックス、トランプの不倫や情事などが度々出てきます。
またトランプの兄のアルコール依存、トランプ自身のゲロを吐くシーン、脅迫、脂肪吸引や頭皮の薄さを頭を開いて皮膚を繋ぎ目立たなくする手術による血や肉、骨などのかなり露骨な表現があり、人によっては気分を害するかもしれません。
本作を鑑賞後に個人的に思ったのはドナルド・トランプが大統領になったのは必然的ということ。本人は「全くのデタラメ」と公開を握り潰そうとしましたが、それが殊更リアリティを感じさせるプロレスであると思わせます。
米国という世界大戦以後の覇権国家で、民主主義(共和主義)の極地とも呼ばれる国の勝者には、裁判や訴訟さえ握り潰せる…まるで大統領選挙の勝者総取り(Winner takes all)を政治やビジネスでもやっているような、米国の底堅さというか"強欲を正当化"する強さの根源を垣間見た気がします(それが日本や先進国で同じく社会的に評価されるかは別問題ですが)