「ヨルゴス・ランティモスによる、今回も観る人を選ぶ、奇妙で不思議な不条理オムニバス。」憐れみの3章 ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
ヨルゴス・ランティモスによる、今回も観る人を選ぶ、奇妙で不思議な不条理オムニバス。
「聖なる鹿殺し」「ロブスター」「哀れなるものたち」のヨルゴス・ランティモス監督・脚本・製作。
本作も、ちょっとエログロな不条理ミステリーの短編集。
どの話も、残酷で、不思議で、なぜかユーモラス。
確かにこれらの話で1本作られても観るのがつらい。
やっぱ、エマ・ストーンが主役だと光る。
ウィレム・デフォーも変わらず好演。
キャスト陣の競演を観ているだけで楽しい。
3本とも同じキャストで違う役なので、混同しそうになるけれど面白い。
R.M.F.を除く。
R.M.F.って何者?
chapter1:「R.M.F.の死」
選択肢を奪われた男が、自分の人生を取り戻そうと奮闘する。
食事から結婚まで人生のすべてが、ウィレム・デフォー上司の言いなりのジェシー・プレモンス。
見放されてしまったら、些細なことも自分で決められない”恐ろしさ”。
エマ・ストーン宅に壊れたラケットがあったとき、ゾッとした。
結局言う通りにして元に戻ったのを観て、ほっとした自分がいました。
よかったね、ってハッピーエンド。
独裁者の言う通りに生きることの何と幸せなことか。
余計なことを一切考えないで従っている限りは。
それに引き換え「自由」の何と残酷なことか。
全て自分で考えないといけないなんて、なんてね。
chapter2:「R.M.F.は飛ぶ」
海難事故で失踪した妻が、別人となって帰還。夫は恐怖に駆られる。
この話だけサブタイトルが不明。
ここでも翻弄されるジェシー・プレモンス。
帰ってきてからおかしくなったのは妻エマ・ストーンの方か、自分の方か?
自分の命に関わることでも、どんなことも言うことを聞いてくれる妻。
彼女が死んだことで、本当の妻が帰って来た、夫にとってはハッピーエンド。
正気でなくなったとしても本人にとっては幸福。
彼の「心が和む」ビデオも見もの。
なぜか「犬の世界」も見もの。
chapter3:「R.M.F.サンドイッチを食べる」
卓越した宗教指導者になるべく運命づけられた人物を探し求める女。
双子の姉妹マーガレット・クアリーの姉を「奇跡の教祖」にするために、空のプールに飛び込む妹。
超痛そう。
豪快な運転が超カッケー、エマ・ストーン!
まさかそれが伏線とは。
なぜか、この話だけバッドエンド。