「原題は「KINDS OF KINDNESS」。 やさしさの種類、と...」憐れみの3章 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
原題は「KINDS OF KINDNESS」。 やさしさの種類、と...
原題は「KINDS OF KINDNESS」。
やさしさの種類、という意味だろうが、ここは「やさしさの三つの顔」とでも訳したい「やさしさ」の三様を描いた中編集。
第1話は、飼い主に見捨てられた忠犬の話。
忠犬くんも飼い主も人間。
飼い主(ウィレム・デフォー)は、忠犬くん(ジェシー・プレモンス)に理不尽な命令をし続け、忠犬くんは人間味を出して反抗するが捨てられてしまう。
飼い主の手を噛むことなく、最終的には理不尽な命令を実行して、自分の存在意義を確かめるが・・・
と、わかりやすいが、その分、平凡。
第3話は、新興宗教教祖の命令に従って、奇跡の女探しをする女性宗徒(エマ・ストーン)の物語。
別れた夫に強引に身体を奪われ、「汚れている」として破門に。
幸い、奇跡の女は見つかるが、理不尽にも奇跡の女の双子の妹が頓死してしまう。
さらに・・・
と、これまた、わかりやすい。
触れるだけで、傷を治し、死者おも蘇らせる人物の話は、スキート・ウーリッチ主演『タッチ』を思い出した。
最終的には、皮肉な結末を迎えるが、まぁ、わかりやすいブラックジョーク。
終盤、エマ・ストーンが奇妙なダンスを披露するが、この手のダンスが出てきた映画で、感心したことがないので、本作もゲンナリ。
順序を飛ばした第2話は、行方不明の妻戻る話。
海洋研究のため仲間と行方不明になった妻(エマ・ストーン)を迎えた夫(ジェシー・プレモンス)。
見た目は元の妻なのだが、どうも些細なところが違っているような。
彼女は元の妻のままなのか・・・
と、神経を病んだ夫は残虐味を帯びた理不尽な要求を妻に出すが、帰還妻は唯々諾々と従い、遂には自分の命まで差し出すことになる・・・
と、諸星大二郎の漫画『ヒトニグサ』を思わせ、「ボディ・スナッチャー」ものの変型っぽい。
その伝でいけば、従順な宇宙人が地球人にスポイルされる『地球に落ちて来た男』を思い出したりもする。
わかりづらいが、不気味な味わいが好みで、ちょっと面白い。
全体には、奇抜なようでいて常識的な範囲のシニカルコメディで、全編通しての評価としては平凡といったところかしらん。
なお、各エピソードで同じ演者が異なる役を演じているが、狂言回し的な「R.M.F.」なる謎の人物は共通。
「R.M.F.の災難」というダブタイトルを付けてもいいかもね。