劇場公開日 2024年9月27日

「不条理ホラーコメディ?」憐れみの3章 kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5不条理ホラーコメディ?

2024年10月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

難しい

映画のトーンとしては極めて正統的で社会派の映画なルックス。
ところがその内容が不条理極まりない。不条理であるが設定が絶妙で、物語の構成は先が読めずとてつもなく面白い。
鬼才ヨルゴス・ランティモス監督がとてつもない熱量で描いた傑作「哀れなるものたち」から間髪入れず製作した中編3作からなるオムニバス映画。
3作の出演者は共通しているが役柄は全く違うというアイデアが面白い。
関連性のない物語であるが、根底のテーマは共通していて「支配」と「服従」で、
第一話は支配する男と全てこの男の指示で生活する男が初めて反抗する話
第二話は遭難した妻が生還したが別人だと思い込み夫婦が崩壊していく話
第三話はカルト教団の教祖からある不思議な力を持つ神の子を探すよう命じられた女の話
物語は奇天烈で何が起こるかわからないところはホラー的展開。一方で変さ加減に思わず笑ってしまう部分はコメディー要素。
支配する者がいて、気が付かずに服従しているともいえる現代社会を誇張風刺しているのか。
各話は会社の上司と部下、結局は他人である夫婦、独裁的な国家元首に洗脳された国民、と解釈できるし、この辺りは観るものに委ねているのだろう。
相変わらず悪趣味なので観る人は選ぶ。
前作もそうであったが、今作でも動物虐待を思わすシーンがありその分マイナス評価。
ただ、物語の着想と脚本はとてつもなく面白いので映画ファンには強くお勧めしたい。

kozuka