「最新の映像を駆使した「不条理劇」を堪能するならこれ!という一作」憐れみの3章 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
最新の映像を駆使した「不条理劇」を堪能するならこれ!という一作
約50分の中編3作が織りなす物語は、何についての話か理解できそうになったとたんにするりと指の間をすり抜けて去っていくようなとらえどころのなさ、余韻を残します。
本作が気になるけど、ポスターからは内容がよくわかんないし、長そうだし……、と躊躇している人には、ひとまず鑑賞して、3つの作品のつながりや不可解な描写の意味をあれこれ考えたり、R.M.Fって何者?って推測するなど、いろんな楽しみ方がありますよ、とお伝えしたいところです。
言い換えれば、本作の賞感が、すっきりとはかけ離れたものとなるのはほぼ間違いないので、もやもやを抱えても大丈夫な程度に心の余裕があるときに観るのがおすすめです。
本作はランティモス作品の原点回帰的な色合いが強いので(盟友の脚本家、エフティミス・フィリップの復帰が大きいのでは)、ランティモス監督の前作、前々作である『哀れなるものたち』(2023)や『女王陛下のお気に入り』(2018)よりも、さらにそれ以前の作品群、たとえば『聖なる鹿殺し』(2017)がおすすめかも。これらの作品を通じて、「掟に縛られる人々」、「掟に縛られたがる人々」をランティモス監督が繰り返し描いてきたことが明確になると思います。
ただし『聖なる鹿殺し』は本作以上にショッキングな場面を含む(冒頭から!)上に、やっぱり不条理というか後味が微妙な結末のため、こちらも心にある程度余裕があるときの鑑賞がおすすめ。
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