劇場公開日 2024年9月27日

「謎のRMF」憐れみの3章 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5謎のRMF

2024年9月27日
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ランティモス曰く、元々1本の映画だったシナリオをわざわざ3分割してオムニバス形式にした作品だそうだ。不条理ブラックコメディというのは、見ていてなんとなく伝わってくるのだが、その不条理な中にも一応の筋を持たせるのが映画監督の腕の見せ所であって、RMFと名付けられたサブキャラ以外、ほとんど共通項のないストーリーをわざわざ3つ並べた意味がよくわからない。高市と石破の一騎討ちに、門外漢の小泉Jr.が途中で割り込んでくるような違和感をどうしてもおぼえてしまう作品なのだ。

その元凶は、一章と三章の間に挟まれた二章が作品のもつ独特の雰囲気を壊してしまっているのである。その余計な二章さえなければ164分の長尺も100分ちょっとの尺で程よくおさまっただろうし、なぜか私生活の細かい部分まで指示を与えてくるグルの存在、そのグルが見知らぬ男を殺すよう指示した理由や荒っぽい運転がキーワードとなる伏線についても、(配役チェンジはあるものの)一章と三章の間ではちゃんと回収が成立しているのである。何よりも、もしその余計な第二章さえなければ、前半後半でどんでん返しを観客に喰らわす構成があの出世作『ロブスター』に激似なのだ。

大方、エマ・ストーンのファ◯ク・シーンを、興行のために是が非でも望んだ出資者に、むりやり突っ込まされた?“第二章”だったのではないだろうか。あんな感傷的なラスト・シーンなど、監督ヨルゴス・ランティモスと脚本家エフティミス・フィリップの名コンビにはまったく似つかわしくない。コーエン兄弟の後を継げるのはこのギリシャ人コンビ以外に考えられない私にとっては、おそらくあったにちがいない出資者からの横槍には、許しがたい怒りを覚えるのである。(『籠の中の少女』を彷彿とさせる)第三章のエマによるへんてこりんダンスだけで我慢しておけばよかったのである。

エマ・ストーンが演じるキャラクターは、(聖水?以外に)不純物を体内に入れたくないわけで、自ら他の男たちとのSEXを望むというのは、物語上どうしたって矛盾が生じてしまうのだ。そこでランティモスが捻り出した裏技が、3話オムニバス&一人三役というアクロバットだったのではないだろうか。結果、(不条理ながらも)筋が一応通っていたストーリーを見事に破壊してしまったに違いない。

またありもしない陰謀説を勝手に想像してるだけちゃうの?いやいやこう推測するのにはちゃんとした理由があるんですよ、理由が。エンドロールの途中でわざわざ登場させてきたあの影がウッス~い髭づらはげおやじが着ていたYシャツロゴ“RMF”の意味を考えれば考えるほど、この“第二章”がますます余計なパートに思えて来てしまうからなのである。つまり、救世主キリストを思わせる風貌のこの男、実はこの世を救うために必要な3要素“RELIEFよりもRECOVERY(第3章)、MORALよりもMANNERS(第1章)、FOODよりもFUCK(第2章)”のメタファーではなかったのだろうか。(かなりこじつけですけどね)

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かなり悪いオヤジ