劇場公開日 2024年9月27日

「憐れみのフルコース」憐れみの3章 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0憐れみのフルコース

2024年9月18日
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鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

難しい

試写会にて。
2024年の個人的偏愛枠。本作もまた、ヨルゴス・ランティモス節が炸裂。相変わらず気軽にオススメ出来るような作品じゃないけど、「哀れなるものたち」に比べれば癖は抑えめで、エンタメ感が強く、率直に楽しいと思える映画だった。

いや〜、ランティモスとかアリ・アスターの作品でしか得られないゾクゾクってあるよね〜。当たり前が通用しない、現実のようで少し違う、不気味で奇天烈な世界。同じ役者、同じ作風、でも三者三様の個性豊かな3つの物語。165分とかなりの長尺だけど、意外にも時間はあっという間で、この3部構成は結構アリだなと思えた😁

第1章 〜前菜〜
1つ目というのもあって3つの中で体感時間がいちばん短い。他の章でもそうだけど、本作のMVPは間違いなくジェシー・プレモンス。悲壮感でいっぱいの表情が、ホントたまらん笑笑 1に相応しい、前菜のような口当たりの良さ。まあグロいけどあと2つに比べれば全然。命令されるのは嫌だけど、たしかにずーっとそうやって生きていけば、いずれ指示待ち人間になり、自分で選択することが出来なくなってしまうよね。わかるよ〜、親近感ナンバーワンエピソード。かなり好き。でも、壊れたラケットはいらん。

第2章 〜メイン〜
いちばんヨルゴス・ランティモス。故に、いちばん好き。R15+要素はここに全詰まり。現実ではなかなか巡り会えない、「お前のお父さんとお母さんを選びな」という、千と千尋的状況下。たま〜に映画に登場するけど、実際自分がこの場に立ったら、果たして違う!とはっきり言えるだろうか。いや、言えないだろうな。順従すぎるのは怖い。どっちもサイコパス。でも、結局おかしいのはどっちなんだろうな。壊れたものはいらない?ジェシー・プレモンスの髪がどんどん短くなってくる。

第3章 〜デザート〜
めちゃくちゃカルト。思想的に過激なエピソード。意味わからんが、ただならぬ恐怖は感じる。なんかでもこういう団体ってやたら水に命かけているよね。それもまた皮肉してるんだろうけど。性に対する向き合い方。人それぞれだけど、自分の妻が他の人としている様子をそんな平然な顔で見れないから普通!これまた宗教の恐さ。エマ・ストーンの演技が光る。サウナ、まじでキツイな...。プレモンスはついに髪がほぼ無くなった。何もかも壊れる。

それぞれかなり違う話だけど、一貫しているのは『誰かに従われている人』『人の破壊』『性の管理』というテーマ性かな。ヨルゴス・ランティモスにしか書けないよ、こんな話。唯一無二で、全くもって見たことない話ばかりだったからすっごく面白かった。鑑賞にはなかなかの覚悟が必要だけど、「哀れなるものたち」が好きだった人は間違いなくハマるはず。しかも、こんだけBLACKなテーマを扱っておきながら、独特なテンポ感と不思議な言葉選びに思わず笑えちゃうからね。ちゃんとコメディ。ん〜、満足!公開は9月27日です。ぜひ!

追記
一晩考えた。3つのエピソードにもっと大きく共通していることがあった。「自分の愛する人からの命令なら人は人を殺せるのか?」だから、憐れみの3章なんだね。邦題のセンスの良さよ...。

サプライズ
talismanさんのコメント
2024年9月27日

ご主人からの命令とあらば殺せるんですね、自分自身をも!

talisman