シサムのレビュー・感想・評価
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現代人が心に刻むべき歴史
アイヌの方々の、大自然と調和した平和で穏やかな暮らし振りの美しさに心を打たれる。
映画では彼等とは対処的に欲にまみれた侵略者として和人(松前藩)が登場する。
かなり凄惨な映像もあるが、実際には、もっと酷い状況だったのだろうというのが想像出来てしまう。アイヌの人々を蝦夷(エゾ)と蔑み、獣を狩るようにアイヌの人々を討伐する和人の振る舞いは決して許されるものではない。
途中からアイヌ民族に感情移入して心が痛んだ。
彼等に非道を働いた大和民族の子孫の一人として誠に申し訳ないと思う。
こうした映像は後世に残すべき貴重な資料になる。
「歴史は繰り返す」?
アイヌとの歴史に刻まれた "人間" の "生きること" の本質。そこで露わになるのは、今も繰り返される "侵略" と "略奪" そして "ジャーナリズム" の意義。
アイヌ、松前藩、幕府は、パレスチナ、イスラエル、アメリカ。孝二郎は差し詰めアミラ・ハスか?
人間の愚かな振る舞いが続く限り、この映画の輝きは失われない。これは悲しむべき悲劇か、笑うしかない喜劇なのか
しなやかな、風、もう一度見たい
映画完成時の中尾浩之監督のコメントに「目指したのはやわらかな風のような映画です。寛一郎さんはそのしなやかさを見事に表現してくれました。予想を遥かに超えたところへ映画を引きあげてくれました。類稀な才能に出会えた。」
と言っておられましたが、主演の寛一郎くん、そのとおりだと思います。
はじめはいささかか弱い主人公(終わりまで武芸は弱いまま)ですが、自身の身に起こることをしなやかに受け止め、しなやかに考える感受性、純粋さを持った主人公でした。この主人公に惹きつけられました。
緒形直人さんの上役も映画をとても引き締めていたと思います。
舞台挨拶などでは、アイヌの文化を伝えたい、今の世の中だからこそアイヌと和人の歴史を知ってもらいたいと寛一郎くんもサヘル・ローズさんも言っておられました。
往々にして、そういうメッセージ性がこの映画の評価の前面に出る要素もありますが、映画としてとっても正統派な映画だなーと思いました。
映像も美しく映画館でこそ見る映画だと思いました。
昨今人気漫画原作のエンターテインメントに振れた大作シリーズが流行るようですが、大手ではないところで、しかも初めて映画製作されたプロデューサーのもとでこの「シサム」のような映画が作られたことは素晴らしいと思います。
もう一度映画館で見たいと思っていましたが、上映館数や上映回も少なくてとっても残念です。
ハワイ国際映画祭で上映されたとか、公式ホームページでもその報告などなどもっと宣伝してほしいなーと思っています。
アイヌ=人間という意味を知らなかった
シサム
邦画をほとんど観に行かないのですが、中島みゆきさんがエンディングということで映画館に行きました。『糸』とかまだ観てないけど。
俳優は知らない人ばっかりで、こんないい役者がまだまだおったんか、富良野塾?って思ってエンディング見たらけっこう知ってました。緒形直人とか、そういえば緒形直人に似てるなって思ってたけど、サヘル・ローズとか要潤は、言われてもまだ信じられない! 途中雄大な自然を前にして寝てしまったのですが、和田正人も僕が寝る前後でキャラが変わってて素晴らしかったです!
戦闘シーンは予想もしないくらいの迫力で、弓矢が迫ってくる恐怖を感じました。『英雄/HERO』の一斉発射以来のインパクトです! よく、カメラレンズに水しぶきや雨粒が付いて臨場感を出す、っていのは目にしますが、血がこびり付いたのははじめて見るかも?
無力感漂う結末ですが、せめて書き残すことが「アンネの日記」のように後世の人を諭すことになる、という希望になるのでしょう。
中島みゆきさんファンとしては、♪「一期一会」合う?って思ったけど、『世界ウルルン滞在記』とは違う重みを与えてくれました。この歌で泣いたのはじめてです。 ♪「伝説」とかでもよかったかも?
歴史を語る事
江戸時代に、蝦夷地のアイヌとの交易を独占していた松前藩の藩士が、和人(シサム)こそがアイヌの非道な収奪者である事に気付いて行く物語です。和人とアイヌの物語というと今年は『ゴールデンカムイ』の年ですが、本作はあれほどの振り切ったエンタメ性はありませんが、その分、問題の本質により真正面から向き合った物語でした。
松前藩とアイヌはやがて武力衝突にまで発展するのですが、このお話の大きな特徴は、この男が「藩士の筋を通してアイヌを成敗すべきか」「アイヌの側に立ち、藩に弓を引くのか」を煩悶する点です。観る者は、「あなたならどうした?」の問いに自然に導かれます。そして、彼の下した決断というのが、「歴史を語る」という事の本質に迫るものでした。
尚、これは仕方のない事なのですが、アイヌの人々の面立ちがやはり和人のものだったのですが、そんな中、サヘル・ローズさんの配役が妙なリアリティを生んでいました。政治家すら「日本は単一民族」などと言ってのけるこの国に暮らす以上、琉球民族についてもアイヌ民族も在日コリアンの人々もシサム(それとて殆どは渡来人)の人間が学ぶべき事は沢山あります。
令和の今にも改めての反省材料
支配者が被支配者に自分の価値観を押し付けることは、古今東西の歴史に珍しいことでは、決してないのですけれども。
本作の場合は、採取・狩猟生活を営んでいたアイヌの人たちは(例え遥かに豊かな精神生活を営んでいたとしても)、すでに交換経済という文明を確立していた松前藩の人たち(和人=シャモ)の目から見れば「遅れた生活」「原始的な生活」をしている人々と映ったことでしょう。
あるいは、自分たちが支配してやることで、彼らも文明の恩恵に浴することができるのだという、ある意味で尊大な考えがあったのかも知れません(ちょうど、太平洋戦争中に、「五族協和による大東亜共栄圏の建設」を錦の御旗に掲げ、東南アジア諸国に対して軍事的支配に基づく同化政策を採ったのと、根本的な考え方は同じなのだろうとも、評論子は思います。)
そう考えることができて、初めて、アイヌの方々を「北海道旧土人」(かつてアイヌの方々を指した法律用語)などと呼べたのだろうとも思います。
孝二郎という一人(和人=シャモ)の人物を基軸として、令和の今にも共通する反省点を浮き彫りにした
という本作は、その点において、充分な佳作だったと思います。
細かいところまで行き届いたままならない現実の話
お花畑
なラストにモヤモヤしたまま映画館を後にした。
話せばわかるとか自分たちが正しければ誰かがなんとかしてくれるとか、
そんな世迷い言を世界情勢がこんな時に・・・・。
アイヌに興味を持ったことはほぼない。
蝦夷(えみし)の土地に住むものとしてその苦難の歴史は容易に想像できる。
だから、途中までは興味深くこの若者がどう活躍してくれるのか観ていた。
だが、どんどんトーンダウン。
特に何もしないし、何の力もない。
剣術でも負けっぱなしなのに、なんだか偉そう?
途中からはアイヌが今の日本に思えてきた。
そして、あのラスト。
そんなことをしても何の救いにもならない。
マスターベーションに過ぎない。
折角2人のヒロインがいたのに、それを生かすストーリーにはできなかったのだろうか。
アイヌの娘の方は面差しはYUIに似ているような気がして、特に印象に残った。
世界は救えなくとも、身近な人の力にならなれように。
チタタプもヒンナヒンナも無い
寛一郎カッコいい
侍所属の男がアイヌと触れ合い人間になる
予想をうらぎる素晴らしさ。
和人である主人公がアイヌの村で暮らして未知の世界観と出会い自分の生き方や価値観を問い直すというのは「ダンスウィズウルブス」以来のお決まりのパターンみたいなところがあってまたかと思いながらも家族が北海道のアイヌの村を訪れて交流してとても良かったと聞いて以来、アイヌの人たちの事が気になっているので見に行きました。
舞台となった北海道の自然と役者さんたちの演技が素晴らしく物語の世界に引き込まれてしまいました。役者さんたち皆さん素晴らしかったですが特にサヘル・ローズさんの彫りの深い顔がアイヌの人のようで同じサヘルさんのことが同じアジア人として身近に感じられました。予告編にもあるように戦いの場面もあるのですがいわゆる残虐なシーンはなくてほっとしました。
少し残念なのは食べ物は分かち合って食べなくてはならない、独り占めして分かち合おうとしないのは神の教えに背くといった思想などの紹介などもあったらもっと良かったかなと思いました。
普段はパンフレットを買うことはしないのですがパンフレットを買ってみると写真がきれいで買って良かった額に入れて飾ろうかと思うほどです。映画を通じてアイヌの人たちの事をもっと知ることができればと思い行った映画でしたが映画そのものが素晴らしく映画館で見て良かったなと感じました。
シサムはアイヌ語で「隣人」という意味だそうです。世界のあちこちで戦争や対立が起こっている現在。大事にしないといけない言葉ですね。
いろいろな違和感を感じながら。。
松前藩の武士とアイヌの人達を描いた映画。
主演は、寛一郎。
頼りない、情けない感じの演技をさせたら天下一品の役者さん。
そんな彼が気になって見に行ってみた。
直近だと、『ナミビアの砂漠』、『せかいのおきく』に出ている彼を映画館で見ていた。
今回の映画もいつもの感じの彼でした。
最近思うのは、いろんな役をカメレオンのように演じる必要は無いのかと思う。
あるYouTubeを見ていて、昔の名優と言われる人は同じ役を同じように演じていたという話を聞いて、演技が万能である必要は無いと思うようになった。
ひとつ人より秀でた味というか個性があれば、それだけでも名優と呼んで良いんだと思うようになった。
役所広司や菅田将暉、綾野剛や松坂桃李のようにいろんな役を演じられなくとも、味のある演技が一つできればそれだけで良いんだと最近考えるようになった。
野球でいうと昔は落合や清原のような右も左も打てる打者が一番だと思っていたが、今は原や松井のように引張り専門でも良い打者に変わりはないと思うようになった。
(野球で例えてしまい、分かりづらくなってしまったかな。。)
話はそれたけど、そういう意味で今回の寛一郎も良かったです。
松前藩の兄を殺された武士が仇討ちをしようとする話。
アイヌ文化を知らない私は驚く点がたくさんあった。
・アイヌの民族衣装がオシャレ
・刺青をこんなにみんな入れてたの?
・アイヌ語があるのを知らなかった
見ていてずっと違和感を感じていた。
史実映画だとしたら、年号を入れるとか時代が分かるようにして欲しかったし、松前藩の場所とアイヌの村の位置関係が分かるようにして欲しかった。
(松前藩は北海道の下の方の函館の近く)
その位置関係が分からないから、話が見えない部分があった。
松前藩の悪行を描くにしても中途半端だったと思うし。。
史実として描いていないのであれば、もっとアイヌの人達、生活をシッカリ描いて欲しかった。
違和感の理由として一番は、民族衣装とか刺青とかアイヌ語を私が映画を見ている最中に適当な演出なんじゃないかと思ってしまっていたから。。
帰ってから調べてみると、確かに女性たちは口の周りに刺青をしていたみたいだし、きれいな模様の衣装を着ている昔の写真が出てきた。
夜に鮭を取るのも実際の話なんですね。
見せ方でもっとアイヌの村を別世界として表現出来なかったのかな。
めっちゃクリアな映像だったので、質感を変えるとかして欲しかった。
このストレートな映像にも違和感を感じた。
カメラすれすれに矢が飛んでくるところは良かったかな。。
レンズに血が付いてそのまま移っているシーンもあった。
日本語が話せるアイヌの人がいたり、長髪に髭なので皆同じ顔に見えたり、なんとか有名な役者が出ているのは分かったけど。。
坂東龍汰にはなんとか気づいた。
ホント、要潤とか緒方直人とか富田靖子とか出演陣は豪華でしたね。
サエル・ローズも出てたんだけど、めっちゃ怖い顔をしていました。
役者も出来るんですね。
その分なのか、戦闘シーン等はショボかったです。
低予算映画という感じの作り。
それに、私が感じてしまった違和感のせいで映画を楽しめなかった。。
こればっかりは、しゃーないですね。
今の時代に、シャクシャインの戦いの「史実」から何を伝えたかっのか…
入場記念に平本アキラのイラスト葉書を貰ったので、漫画が原作なのかと勘違いした。
エグゼクティブプロデューサーの嘉山健一氏は元漫画編集者だとのことで、彼を応援する多数の漫画家がイラストを描いたと…。
手塚治虫の「シュマリ」の映画化が最初の案だったようだが、そっちの方が良かったのか、そっちでなくて良かったのか…。
史実に基づくなら起きた戦とその結果は変えられないから、物語はその悲劇に向かわざるを得なかった人たち、あるいは巻き込まれていく人たちの運命を描くのが常套。
この映画は、アイヌの村で暮らすことになった松前藩士・高坂孝二郎(寛一郎)の目を通して、歴史に残るアイヌと松前藩との戦争を止めようとして止められない人々、望まざるも戦になだれ込んでいく人々の様子を見せていく…のだが、なんとも焦点がボヤけているような気がした。
孝二郎は松前藩士の次男坊で、藩のお家の事情をまだよく理解していない。アイヌとの交易が生業の高坂家にあって、兄(三浦貴大)について初めて上陸したシラヌカの地で事件に巻き込まれる。
孝二郎がアイヌの生活に触れカルチャーショックを受けるとともに、アイヌの人々に心を寄せていく展開だが、松前藩側が収奪行為に至った理由はついぞ説明されない。
せっかく、高坂家で息子の帰りを待つ母(富田靖子)と孝二郎の幼馴染(古川琴音)というキャラクターを置いているのに、ただの待つ人で終わっている。
津軽藩は善助(和田正人)を隠密として派遣して松前藩のアイヌとの交易の内実を調査させていた。孝二郎は兄を善助に殺されていて仇討ちを本懐としていたが、和人を恨んでいるはずのアイヌの女(サヘル・ローズ)が善助を助けようとしていることに協力する。
ここで、善助の調査報告が津軽藩に届かないことで歴史のうねりが止められないという状況が見えないのが痛い。
(平本アキラのイラストは善助を描いたものだった)
戦争が終わって、アイヌの人々がどうなったのかも曖昧だ。
孝二郎の目線だけで語るなら、戦後の松前藩側の様子とか、戦後のアイヌの人々の暮らしとかを孝二郎に見させたほうが、彼の決断に説得力があったのではないだろうか。
白糠町が全面協力して、高いレベルでアイヌの生活を再現しようとしたのはわかるのだが、集落の単位はあんなに小さかったのか、村の規模感が今ひとつ伝わらなかった。
台詞をアイヌ語で通したのは意義ある挑戦だったと思う。
鉄砲と弓矢のVFXは迫力があった。
恐らく現地で撮影したのだろうと思われる大自然のロケーションも見応えがあった。
松前藩の部隊長を演じた緒形直人が、旧知の後輩孝二郎を慮りながらも藩命大事の立場を貫く藩士の悲哀を、短い出番で説得力をもって見せていた。
シサム
若者の成長物語
北海道が舞台で、アイヌ文化も描いている時代劇って珍しいし、テーマ曲が大好きな中島みゆきだったので観に行きました。
多くのロケが白糠町だったようで、白糠町にこんな風景が残っていることに、まず驚きました。
アイヌ民族と和人との戦いがメインなのかと思っていましたが、そうではなく、一人の若き武士がアイヌ文化を知り体感することで理解し、成長していく物語で、その中に人間の良心のようなものを感じました。
アイヌ文化についてとても丁寧に作られている映画で、日本の歴史の一端を知ることができるので、文科省指定でも良いのではないかと感じます。
オリジナル映画でも、ここまで作れるのだと感心しました。
世界の多くの人々に観てもらいたい映画です。
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