「タイトルは「サユリ」ではなく「春枝」が適当」サユリ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルは「サユリ」ではなく「春枝」が適当
前半は、「呪怨」のような、家に取り憑いた地縛霊によるホラーとして、そこそこ楽しめる。特に、小さな少女が徐々に巨大化しながら近付いてくる描写などは、結構、背筋が寒くなった。
ただ、霊感のある同級生から警告されても主人公の則雄が家に住み続けるところにはイライラさせられたし、始めから新居の異様さに気がついていた弟が殺されてしまうところにも釈然としないものを感じてしまった。
やがて、認知症だった婆ちゃんの春枝が正気を取り戻し、則雄とともに怨霊のサユリに立ち向かっていく展開になると、映画のトーンが陰から陽へと転調して、俄然面白くなってくる。
特に、則雄が、春枝の指導を受けて、命を濃くするために、太極拳を練習し、家の掃除をし、よく食べ、よく寝るくだりなどは、「ベスト・キッド」を彷彿とさせて楽しめた。
則雄の「元気ハツラツ・・・」の掛け声は人を食っているし、春枝が除霊師を叩きのめすところには「誰と戦っているんだ?」というおかしさがあるし、掘り起こしたサユリの頭蓋骨を卓上に置いて2人でそばを食べるシーンには何とも言えないシュールな味わいがある。
さらに、春枝が、拉致してきたサユリの家族の足や頭をハンマーで打ち砕く姿は、ある意味、サユリよりも恐ろしく感じられて、思わず笑ってしまった。
ラストで、小さな少女の正体と、サユリの悲しい過去が明らかになり、彼女のことを、単なるモンスターではなく、同情すべき存在だと思えるようになる展開も心憎い。
実際、「地獄に叩き落とす」のではなく、母親の愛情によってサユリの魂を鎮めるという結末には納得することができるし、則雄の家族と共にサユリが成仏する姿には、思いがけず目頭が熱くなってしまった。
その一方で、霊感のある同級生の少女には、何か裏があるに違いないと疑っていたのだが、結局、「そのまんま」だったのは物足りないし、彼女がサユリに拉致されるという展開も、則雄が愛の力=生命力で彼女を取り戻すという見せ場はあるものの、あまり、その必要性を感じることができなかった。