「こっちに催眠術かけてこないで」悪魔と夜ふかし おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
こっちに催眠術かけてこないで
1970年代のテレビのオカルト番組を忠実に再現。
画質の感じや番組内の演出が昔のテレビそのまんま。
昔のオカルト番組をただ観ているだけの感覚だった。
オカルトに全く興味が無い人間としては、ちょっと会話シーンが長くて退屈な感じがあり、番組の視聴率が伸び悩むのも納得してしまった。
TBSの安住アナウンサー風の番組司会者・ジャックが、ガンで闘病中の妻をゲストとして番組に登場させる場面。
序盤に出てくるちょっとした場面なのに、セリフやさりげない仕草の演出が上手く、かなり感動してしまった。
映画開始数分で泣かされるとは思わなかった。
その場面の最後にさりげなく出てくるナレーションも地味に衝撃的で、そこでも涙。
番組内で起こる超常現象の数々が番組スタッフによる演出ではないかという疑いがある中で、死者が出るような人智を超えた超常現象が起こってしまった、というストーリー。
だけど、この映画を制作している時は本当の超常現象が起きているわけでは無くそう見せかけているだけ。
この映画全体が「嘘のような本物のような嘘」という構造。
そんなことを考えていたら頭が混乱してきた。
あどけない感じだった少女リリーが、悪魔に取り憑いた後はおっさんみたいな顔になって度肝抜かれた。
少女の顔芸が、個人的にこの映画で唯一ビビったところ。
少女が悪魔に取り憑かれている間、その事態を深刻な表情で見つめるジャック。
少女のことを本気で心配しているのかと思ったら、実は別のことを考えていたことが後に判明。
ということは、妻がゲストに来ていた時も、同じようなことを考えていたってこと?
感動して損した気分。
ジャックが最終的に良い人なのか悪い人なのか、よくわからなくなってしまった。
超常現象懐疑論者のヘイグが番組アシスタントのガスに催眠術をかける場面。
ヘイグが画面のこちら側にいる映画観客に向かって催眠術をかけ始めたので、「催眠術にかかったらどうしよう」と本気で不安になってしまった。
怖くてちょっとだけ画面から目を逸らしてしまった。
ヘイグが少女に起こった超常現象に対して「こういうトリックが使われていたはず」と説明する場面。
かなり説得力を感じてしまった。
視聴率が欲しくてたまらないテレビ番組だったらやりかねないなと思った。
ラストは意味不明で余計だったと思う。
番組の終わりと共に映画も終わっていれば、スマートで綺麗な終わり方だったのに…