「大人も楽しめる秀作」がんばっていきまっしょい こべっこさんの映画レビュー(感想・評価)
大人も楽しめる秀作
実写版を見たり、原作の小説を読んだり、作中に登場する選手ともボート競技を通じて知り合いであるものとしてのコメントであり、純粋に作品としての映画の評価ができていないかも知れませんがそういうものとしてお読みになってください。
当然ですが原作が一番実話に近いわけですが、実写版では今は廃部となってしまったボート部を回想する場面から始まる訳ですがアニメ版では回想するという設定ではありません。実写版では主人公たちの通う高校が県下でも有数の進学校であるあたりや恋愛沙汰をからませないあたりは原作にも忠実で好感が持てました。
また、主人公の悦ネエの揺れ動く気持ちや1人1人のボート部員やライバル校の部員までキャラクター設定が丁寧で上手く描き分けられていて実写版では怪我で休むことになる悦ネエはアニメ版では気持ちがしんどくなって休むことになるあたりの話の持って行き方も違和感がありませんでした。
愛媛の海はお好み焼きや喫茶店なども美しく描かれており2時間近くがあっという間でもっと見ていたいなと感じました。合宿の場面や、みんなでする花火、3年生の春最後の大会に向かう気持ちなども共感できました。学生時代の部活動は優勝する1校以外はみんなどこかで負けていくわけですがどういう負け方をして終わって行くかが大事でそういう意味ではよく戦ったわけだし、実写版では負けてばかりだったのが、少なくともビリでなかったり、県代表まであと一歩だったりといい場面がたくさんあったのも良かったです。アニメということで若い人のために作られたものかと思っていましたが、大人が見てもいい作品だと感じました。
ここからはボート経験者としてのコメントになりますが、1つめは学校内でのクラス対抗ボートレース大会では舵つき4人漕ぎスカルではなくてナックルといってより重くて安定性の高いボートを使うことが主流で救命胴衣などつけてレースをする形になります。未経験者だけで4人漕ぎスカルは漕げないと思います。
2つめは悦ネエたち4人が初めてボートを漕いだときの感想が「進まネエ。」ということでしたが競走用ボートは公園の池のボートとは全然スピードが違うので「凄い、速いねえ。」という感想が自然でしょう。
3つめはボートの練習としては実際に漕いでみる乗艇練習よりも筋トレや走り込みが大切で、黙々と体力作りをすることが次の春のレース結果に反映されます。そのあたりやせっかくレース場面もたくさんあるのだから最後の大会の場面では優勝校と僅差で優勝を争う場面などボート選手に相談すれば詳しく教えてもらえますのでスクリーン上で表現して頂くと良かったなと感じました。
この映画を通じて一人でも多くの人がボート競技(ローイング)に興味を持つことを願っています。ちなみに僕は「いちご白書」を見てボート部に入ろうと思いました。
高校の近くに湖があり、漕艇部はそこで練習していました。
こんな映画を見ると、高校の時、漕艇部に入ってみるのもよかったのかなあ、と思いました。
その意味でこべっこさんの経験はうらやましい気がします。
大人になり、日曜朝の戸田公園を何度か散歩しましたが、とてもよい雰囲気だったのを思い出しました。
自分はボートはボートでも、小型船舶操縦士免許持ちの方なんですが、クラス対抗のレースの時にライフジャケットを着ていなかったのは、やっぱりちょっと危ないなぁと思っていました。こういう細かい演出って大事ですよね。