「ジャッキー、七十にして心の欲する所に従えども、矩を踰えず! 龍馬一体、花道を駆ける!!🐎💨」ライド・オン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャッキー、七十にして心の欲する所に従えども、矩を踰えず! 龍馬一体、花道を駆ける!!🐎💨
老スタントマンのルオと愛馬チートゥの絆、そして疎遠になっていた娘シャオバオとの心の交流を描いたヒューマン・ドラマ&アクション。
香港映画界で活躍していた伝説的スタントマン、ルオ・ジーロンを演じるのは『ラッシュアワー』シリーズや『ベスト・キッド』の、レジェンド俳優ジャッキー・チェン。
2024年はジャッキー・チェン生誕70年、および映画初出演から50周年というメモリアル・イヤー!🎉
…初出演作とされる『タイガー・プロジェクト/ドラゴンへの道 序章』は1971年撮影、1973年公開の映画ということのようだから厳密には50周年じゃないんだけど、まぁそういうヤボな事は言いっこなしということで…。
本作は「ジャッキー・チェン50周年記念アクション超大作」と銘打たれているが、アクション超大作とは真逆の父と娘、そして愛馬を巡るハートフルストーリー。
今まで観てきた…といってもそれほど多くの作品を観ているわせではないけど…ジャッキー映画の中で、これほどストーリーに重きを置い作品は初めて。スカッとバカバカしいアクションコメディだと思っていたのだが、その予想はスカッと裏切られた。
ジャッキーと娘の家族再生物語という観点だと、本作は言っちゃ悪いがちょっと陳腐。演出といい展開といい古臭いというか、あまりにもベタすぎる。なんか一昔前の韓国ドラマみたい。
ジャッキーの娘シャオバオを演じるリウ・ハオツンはとても可愛らしく、日本でも人気が出そうな華のある女優さん。彼女のキュートさのおかげでまあ観ていられたのだが、「娘とのことはどうでもいいからもっとスタントマンとしての活躍を見せてくんないかな…」と思ってしまったのもまた事実である。
スタローンが『ランボー ラスト・ブラッド』(2019)で老いたベトナム帰還兵を、イーストウッドが『クライ・マッチョ』(2021)で老カウボーイを、トム・クルーズが『トップガン マーヴェリック』(2022)で時代遅れのパイロットを。近年、往年のアクション・スターの多くが自身の映画人としての歩みを反映した作品、曰く「総括映画」を撮っている訳だが、ジャッキーも例に漏れずこのジャンルに挑戦することを選んだようだ。
本作はジャッキーがどのような映画人生を歩んできたのかを2時間に凝縮したものであり、さらにその人生への幕の下ろし方についてまでも描いてしまっている。こんなんやられてしまったら、彼の作品とともに育ってきた世代の人間としては涙を流すしかないですやん…😭
このことを念頭に置くと、本作はまるでジャッキーと彼の息子ジェイシー・チャンの物語のように思えてくる。仕事三昧で家庭を蔑ろにしたせいでジェイシーとの確執を抱えたジャッキーが、彼の人生そのものである”映画”という媒体を通して贖罪の意を示そうとしている。こう考えると、かったるく思えた父娘のストーリーもなんだか感動的なものとして胸に迫ってくるようだ。
最も感動的だったのは、ジャッキーと娘が並んで過去のスタント集を鑑賞するシーン。我々が何度となく観てきたあの映画この映画の名場面が、まさかこういう形で蘇るとは…。
ジャッキー映画にはつきものの、エンディング後のNG集。落ちるジャッキー、燃えるジャッキー、流血するジャッキー…。我々を心底怖がらせたこれらのNGシーンをメタ的に映画に取り込み、それをジャッキー本人が望郷の眼差しで眺めている。
ここでの娘とジャッキーのやり取りが良い!「痛かった?」と聞く娘と、「ああ」と呟くジャッキー。2人の目にスッと涙が落ちる…。そりゃこんなんこっちも泣くわ!😭
このシーンの何が良いって、娘とジャッキー、2人の涙を流す理由がそれぞれ違うということ。
娘の涙には知られざる父の姿に対する畏怖と尊敬、そして若干の憐れみがあるのだが、ジャッキーの頬を流れた涙は、かつての栄光の懐かしさ、第一線で活躍していた頃の自分への羨望に満ちている。ここに仕事一筋で生きてきた男の哀しさと、スタントに取り憑かれた男の狂気のようなものが感じられ、また同時に娘との間にある埋めようのない価値観/人生観の違いが表現されていた。
この親子の分かり合えなさを両者の涙でそれとなく演出する。ここは素直に上手い!
こんな描写があったからこそ、クライマックスでの「飛ばない」選択がグッと胸に迫ってくる。
普通の映画なら最後に特大のジャンピング・スタントシーンという大見せ場を用意するはず。近年ジャッキー化の著しいトム・クルーズの『ミッション:インポッシブル/デッド・レコニング PART ONE』(2023)も、クライマックスはバイクでの大ジャンプでしたよね。
しかし、本作でのジャッキーはあえて「飛ばない」という選択をする。事前に難しいジャンプ・スタントをクリアーする描写があり、それが最後のスタントを成功させることへの布石なのかと思いきや、まさかその予想の逆を突いてくるとは。
誰もが認めるスタント気狂いジャッキー・チェン。どんな危険なスタントにも、どんな困難なスタントにも果敢に立ち向かい、そしてそれを乗り越えてきた彼の姿を我々は嫌というほど知っている。
だからこそ、最後の最後にスタントをやめてしまう彼の決断がどれほど大きなものだったのかがわかるし、そして「やっとスタントマンという呪いから自由になれたんだ…」とほっと安堵さえしてしまう。
ジャッキー・チェンというパブリック・イメージを逆手に取った見事なエンディング。そして秀逸な卒業宣言でありました。龍馬一体、花道を駆ける!!🐎💨
鮮やかな引退宣言…さらば永遠の綺羅星ジャッキー・チェン😭
なんて思ってしまったが、実は本作の後もバリバリ映画出演が決まっているジャッキー。『カンフー・ヨガ2』とか『THE MYTH/神話2』とか『ベスト・キッド2』とか…。ぜんぜんアクション・スターをやめる気持ちは無いようだ。ジャッキーちゃんはアクションをやめへんでー!!!
まだまだジャッキーは我々を楽しませてくれる!ジャッキー・チェンよ永遠なれ✨
※2023年、ジャッキーのフィックス(専属吹き替え)として知られる石丸博也さんが引退。引退後に公開されたアニメ映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』(2023)では、ジャッキーが声を演じたスプリンター先生を石丸さんではなく後輩の堀内賢雄さんが演じられていました。
石丸さんも高齢だし、これも仕方ないか…と思っていたのだが、なんと本作に限り完全復活!石丸ボイスでジャッキー映画を観られる!!ヤッター♪───O(≧∇≦)O────♪
それなら当然吹き替えでこの映画を観るわけでね。
最初の方こそちょっと声が弱々しい感じがして「大丈夫か…?」と心配になったのだが、それは映画内のジャッキーがそうゆう役どころだったからであって、その後は引退前となんら遜色のないレベルで見事に吹き替えられていました。まだまだやれるやん!!
石丸さんの引退は日本の大きな損失。90歳でもバリバリの現役、羽佐間道夫という怪物がいる訳だし、石丸さんも羽佐間さんのように生涯現役を貫いて欲しい。
てか、マジで石丸さん以外誰がジャッキーの吹き替えなんて出来るんだ?もうジャッキー=石丸博也でフィックス(固定)されちゃってんだから、それ以外の声は無理っすわ。
こんにちは
私も吹き替えで見ました。石丸さんが特別に復帰していただけたので!
羽佐間道夫さん、現役だったんですね。
子供の頃からテレビで見ていたほうで刷り込まれているってあるあるです。「猿の惑星」は、納谷悟朗サンの声で半裸のチャールトン・ヘストンが「ここは地球だったのか!」っていうのが私の中ではスタンダードになってます