「ファンタジーではない。あくまでリアルだと思う。」ルート29 haradonさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーではない。あくまでリアルだと思う。
監督のデビュー作『こちらあみ子』があまりに衝撃的だったのでチェックしてたものの、映画.comでの評価の低さが気になった。そんな前情報で鑑賞。
結果、とてもとても良かったと思った。
主人公の2人を含め、登場人物がみんな奇妙。セリフも風変わり。生きてるのか死んでるのかもわからないキャラもいる。それと、執拗に繰り返されるシンメトリックな画角。風景はリアルなのに、モブを含めて人間の見え方がやけにファンタジック。たしかに、序盤では観客として軸足をどこに置けばいいかわからず混乱した。
だけど、あの湖のシーンでふと思った。
もしや、この映画全体が、カメラワーク、音、言葉の全てが、主人公2人から見える世界なのではないか。そう思ったところから見え方がガラッと変わった。
とても緻密に練られた脚本。多用されるのはシンメトリーではなく、話者を真正面から見据える主人公の目線。そうすることでしか相手と向き合えない主人公たちから見えるリアル。なのではないか。
観客がわかりにくいと感じるとすれば、「〝(敢えて使うが)障害者〟を扱ううえで普通ならあるはずの〝健常者〟との接触でどちらかが困惑する様子」が描かれていないからではないか。だけど、そのわかりにくく感じることが「健常者」の目線で、映画全体が「健常者」たる観客を「ちゃんと」困らせていたのではないかと思った。
『こちらあみ子』に続く主演の大沢一菜はもちろん、〝トンボ〟役の綾瀬はるかの好演が美しさも込みで光ってた。赤い服のばあさん、じいじ、川にいた親子、妹、時計屋、母親。みんなよかった。
映画館で観られてよかった。
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