「なぜか横一線」ルート29 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
なぜか横一線
本作公開の報を目にしてから期待していた作品です。まず、怪作とも言うべき『こちらあみ子』で鮮烈な監督デビューを飾った森井勇佑の第2作であること。次に、同作で「何じゃこの子?」とやはり驚かされた子役・大沢一菜さんが再び出演する事。そして、奇妙な映像空間になるに違いない森井作に綾瀬はるかさんが起用された事です。特に大沢さんは『あみ子』があまりにはまり役だったので、「この子はこれ以外の役は出来ないのでは」と思っていただけに、期待半分・不安半分と言った思いでした。
人との交わりが苦手で鳥取で清掃員として一人ぼっちで働く女性が、「姫路にいる娘を連れて来てほしい」と頼まれて彼女を連れて国道29号線沿いに北上するロード・ムービーです。
まず、大沢さんがすっかり大人っぽくなった事に驚かされました。でも、独特の目力はやはり本作でも健在で、映画の中で輝いていました。また、本作ではかなり言葉少ない綾瀬さんも、静かでどこか奇妙な作品の空気を纏って新たな一面を見せて下さいました。
そして、この作品自体は「監督は何を言いたかったのか」と言う事を言葉にしたら忽ち崩れてしまう世界に映りました。僕も何だかよく分からないのですが、それが監督の独りよがりとは感じられず、唐突に飛び込む「なんじゃこりゃ」の映像が強く印象に残るのです。
横一線にならんだラバー・ダック、横一線に並んだ池のボート、横一線で夜空を見上げる街の人々、横一線に延々と並べられた小石。映像の中から伸びた手に脳みその裏側をくすぐられた様な思いがしました。これも映画でしか味わえない経験です。
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