「人生の時計」ルート29 hiroさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の時計
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生きること死んでいること、生と死をトンボとハルを通して描く。
非常に分かり難い、見る人を選ぶ映画。
だが、映画が持っている世界観、テーマは面白く、映像も素晴らしい。特に、山でのシーンの新緑の生命を感じる映し方は綺麗だ。
本編は、トンボとハルが母親に会うために旅に出る。
旅路で出会う人々は生きているのか、死んでいるのか分からない、不気味な雰囲気を醸し出す。
山で暮らす親子の腕時計が止まっている描写や、お姉さんとのエピソードでは、言葉で生きているのに死んでいるようと感じる話が展開される。
事件発覚後、トンボとハルが立ち寄った喫茶店では、写真で神経衰弱をしている老人がいるが、『生きてる』『死んでる』と話している、そして、トンボに映像が移るにつれて『生きている』と話す。行方不明になったハルを探す描写ではトンボ以外の人が止まってみえる。トンボの時計が動き出したように。
そして、母親との再会へ。『私は死んでいます』と話し背中を向ける母親に、ホイッスルを鳴らし『死んでてもいいからまた会おうな』と伝えるハル。
ハルはトンボに時計店で譲り受けていた、腕時計を手渡す。人生の時間が止まらないように。
警察で自首して、連行されるトンボ。その後ろ姿は母親と同じ面影がみえる。
ラストの魚は、トンボの心の砂漠の中に、ハルが、魚が、潤いをもたらしていく…。そんな希望的な展開だったと信じたい。
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