「ウェス・アンダーソンの真似ごと」ルート29 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
ウェス・アンダーソンの真似ごと
クッソつまらん。死ぬほどつまらん。
賛否両論、というか否があまりに多かったから毒味する気分で覚悟して見たんだけど、いくらなんでもだった。これを難解だとか趣深いとか言いたくない。つまらんものはつまらん。
「こちらあみ子」で味を占めたのか知らないけど、奇を衒い続けるだけの120分間で、何見せられてるのか、何をしたいのかさっぱり分からん。意味があって間を作ったりスローテンポにしているならいいけど、中身のあるストーリーが作れなかったから誤魔化すために余白を増やしてるだけだもん。ロードムービーなのに全くワクワクしない。なに?これ?
「劇場版 奥様は、取り扱い注意」「リボルバー・リリー」といった近年の綾瀬はるか映画のように、本作が低評価なのは上記作品と同様に綾瀬はるかに頼りすぎた、彼女有りきの映画かと想像していたら、まさかのその逆だった。綾瀬はるかである意味が全く持ってない。良さが1ミリ足りとも発揮されていない。
これまでのイメージとはかなり違う役どころであり、彼女自身はすごく頑張っていたと思うしキャラとしては好きだったけど、完全に個性が消えてしまっているし、これなら別の役者を起用した方が良かったのでは?と思ってしまう。ただの話題集め。この人ほんっとに役に恵まれないな。
大沢一菜に関しては「こちらあみ子」と全くと言っていいほど同じキャラで、ちょっと可哀想に思えてきた。あの作品のインパクトは凄まじかったし、見るからにもっと色んな幅広い演技ができる役者さんのはずなのに、まるでASD的な役しか求められていないような、酷い扱いを受けている。しかも同じ監督だからタチが悪い。
そもそも、中尾太一の詩集からインスパイアを受けたと言ってるけど、結局は「こちらあみ子」の二次創作でしかなくて、インスパイア元は今村夏子の小説じゃねぇの?と思ってしまう。あまりにも引っ張られすぎている。考えが固着している。
間の多い映画にしたいのなら、メッセージもさりげなく、観客に感じさせる形で伝えればいいものの、登場人物全員何者かに憑依したかのように突然語り出し、この映画で言いたいことをパンパンに詰め込んで説明してくる。この演出がどうしようもなく気持ちが悪い。こんな羅列した文章をキャラに言わせるのなら詩の方が断然響くだろうし、わざわざ映像化した意味もまるでない。それなら役者の表情やその場の雰囲気に任せてメッセージを乗せたらいいのに。キャラに合ってないんだよ。全部。
たくさんの出来事が起きたはずなのに、これっぽちも見応えがなく、どれも尽く印象に残らない。というか、何もかもこの空白の多い作りが仇となってるよね。ウェス・アンダーソンみたいな画角もただ真似しただけで、なんのリスペクトも感じられないし、ウケを狙っているようなシーンもとことんズレていて何も笑えない。ルート29というタイトルなら、国道29号線をひたすら沿って歩いてきたみたいな描写が欲しかったし、まあそもそもだから何?だよね。何言いたいのか、何言ってんのか、頭に入ってこないもんだから感情移入なんてあったもんじゃなかったし。
やっぱり映画には明確なメッセージや私生活に影響を来たしてしまうような劇的な展開があって欲しいから、本作にはそれが何も無くて自分にはもうさっぱりだった。今年ワースト級。独特な世界観がいいね!って言われるのは最初のうちだよ。勘違いしない方がいい。