「いろんな世界。映画館向きの作品。」ルート29 Hariganeさんの映画レビュー(感想・評価)
いろんな世界。映画館向きの作品。
「ロードムービー」「ふたり旅」に「綾瀬はるか」…ほのぼの?ドキドキ?涙?…この映画に分かりやすい感動を求めて映画館に行った人は撃沈だったのかも。
自分が生きている世界がすべてじゃなく、いろんな人の世界が重なりあってこの世は成り立っている。お隣さんの世界が、自分の常識とは限らないし、自分の世界が少数派かもしれない。
ハルのお母さんは心の病で精神科病院に入院していて、たぶん、ハルも何らかの病を引き継いでいると思われる。妄想や幻覚と共存しているのかもしれない。ハル自身はそう思っていないかもしれないが、客観的にみると人との交流もうまくいっていない。
トンボも同じ。何らかの生きづらさを抱えて生きてきたと思われる。
ハルとトンボが出会う人たちは、何となく詩を読んでるような話し方。宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の、ジョバンニとカンパネルラが汽車の中で出会った人たちの雰囲気に似ている。
生きてるのか、死んでるのかわからない、不思議な雰囲気。
音楽は無く、自然の音が心地よかったり不気味だったり。叙情的なシーンが多かったことも印象的
トンボのお姉さん。やんちゃな児童たちを注意せずに、優しそうな笑顔でプリントを配る違和感。トンボへの優しい言葉と同時に嫌み・妬み・嫉妬のこもった言葉を淡々と発する怖さ。何かを信じて疑わず、必死に生きてきた姉自身の世界。それがだんだん歪んできていることに姉は気づいている。
よかったシーンは ハルがトンボにした、「おまじない」。 ハルの手つきがとても優しい。ハルのお母さんもそうやって優しくおまじないしてくれたんだろうな。トンボもなにかを感じたよね。 ジーンとした。
人との関わりが苦手だとしても、やっぱり、人は人を求めてる。トンボがハルと出会えてよかった。
トンボを抱きしめてあげたくなった
いろんな世界に触れられる映画。
私は、この映画に出会えてよかった。
追記
他のかたのレビューにあるように、不思議な作品です。気忙しい日常では、雑念が入り込んでなかなか深く感じることが出来ないかも。ぜひ、映画館で!