「史実も素晴らしいが、俳優陣の演技が(端役まで)素晴らしい♪ ★4.3」ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命 レオンさんの映画レビュー(感想・評価)
史実も素晴らしいが、俳優陣の演技が(端役まで)素晴らしい♪ ★4.3
まさにイギリス版「シンドラーのリスト」! 史実物語も素晴らしいが、各俳優陣の演技も素晴らしい。
良作なのに、これまたあまり話題になってない・・。
アカデミー賞ノミネートも、昨今はこれから上映される作品の宣伝がメインになっていて、
昨年の高評価作品がマイノリティ条件外でノミネートされない場合も多い・・。
映画業界は政界からもかなり影響を受けているので、闇を感じる・・。
さて今作、いや~脚本・編集よく出来ている。
まず主人公は1938年当時、子供の国外脱出に尽力した若いウィントン(ジョニー・フリン)と、
老後のウィントン(ホプキンス)の二人いるイメージ。
その老若のシーンが交互に入れ替わる。
序盤、ドイツ迫害にプラハ逃避してきた多数のユダヤ系家族の収容施設の状況に嘆き、一大決心するのだが、話が進展してきた所で、老ウィントンが断捨離する悠長なシーンに変わる・・。
せっかく没入して来た所で、なんで度々ストップさせる?
と、思いきやその不要品整理で発見した"物"が、この作品の結末に大きく作用する!
私は時間軸を度々いじる手法や、伏線を多々織り込むのも好きでないが、
今作は老若同時進行で、両方のクライマックスを終盤に持ってくる編集は巧い匠を感じた♪
そして物語以上に人物描写を重要視する私が、見入ったシーンも多々ある。
若いウィントンが神父に協力を求めるシーン。
言葉の内容に伴い、微妙な表情変化がとても演じている様に見えない。
(これはその役の心情を本当に心に念じないと出ない微妙な差だ)
その時の神父も相手の心眼を確かめるような真剣さが伺える。
母親が若い役人に援助を求めるシーンでも、軽くあしらおうとしたが、
毅然とした夫人の態度にたじろぐ表情が端役だがこれまた巧い。
こういった何気ない会話シーンがどれほどシリアスになるか否かは、
やはり演者の実力と監督に引き出し方が最も重要になる。
オーバーアクトだと、白々しく見えてしまい、
これが曖昧だと、物語は流れるが心は奪われない。
そして極めつけは、やはり主演 ホプキンス(現87歳!)
終盤その日の出来事を思い出し、涙するシーンがあるのだが、号泣するのではなく、
こみ上げる思いを押し殺す様にむせび泣く様は、ホプキンスのベストアクトに感じるほど!
「ファーザー」で二度目の主演男優を受賞したが、あの作品はいかにも・・でイマイチに感じ、今作の方が数段、上に感じた。
他のキャスティングも全て絶妙で、多数の子供達も可愛いより、なにか見る者に"訴える物" を持っている子が選ばれている。
12歳少女が赤ん坊を抱いているシーン、「妹なの?」との問いに、誰の子か誰に聞いても分からない・・と。 でも自分(その少女自身で)が面倒みたい・・と。
無言で訴える目とその健気な思いに、見てる方は目が潤む・・。
クライマックスも粋な計らいが主人公に用意されていて、また目が・・・。
さらにエンディング実際映像でまた感動・・。
オススメです。
ハンカチかハンドタオルのご用意を♪
PS
アンソニーホプキンスは「羊たちの沈黙」での怪演が評価され、
一流の仲間入りを果たしたが、
今作や「世界最速のインディアン」(誰にも好かれるバイク好きのおじいちゃんを好演・2005年作)など、その人物の人柄が滲み出るような演技が出来ているからこそ、二度の主演男優獲得に結びついた由縁に思う。