「普通の人が普通に行うことは、今の方が難しくなっているのかもしれません」ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
普通の人が普通に行うことは、今の方が難しくなっているのかもしれません
2024.6.27 字幕 MOVIX京都
2023年のイギリス映画
原作はバーバラ・ウィルトンの著書『If It’s Not Impossible.. The Life of Sir Nicolas Winton』
第二次世界大戦中にプラハにて難民の子どもたちを救ったイギリス人たちを描いた伝記映画
監督はジェームズ・ホーズ
脚本はルシンダ・ニクソン&ニック・ドレイク
原題は『One Life』で、劇中で登場するセリフの一部
物語は、1938年のイギリス・ロンドンにて、友人の新聞記者マーティン・ブレイク(ジョナサン・プライス、若年期:ジギー・ヘス)から「プラハの惨状」について聞かされるニッキーことニコラス・ウィルトン(アンソニー・ホプキンス、若年期:ジョー・フリン)が描かれ、それと同時に老齢期に差し掛かったニッキーが自宅の整理を行う様子が描かれていく
老年期のニッキーは、妻グレーテ(レナ・オリン)から言われて大掃除を始めるのだが、そこで机に大事にしまわれたカバンと、その中に入っているスクラップブックに想いを馳せていた
そのカバンはプラハ時代に仲間のトレバー(アレックス・シャープ)から貰ったもので、そのスクラップブックは「プラハでの活動記録をまとめたもの」だった
これまでの慈善活動の資料などを燃やせても、そのスクラップブックだけは燃やすことができない
そこで、その資料を何かの役に立てないかと動いていくニッキーが描かれていく
1938年、ナチスはチェコスロバキアに侵攻し、多くのユダヤ人はプラハに逃げていた
だが、その場所は悲惨な状況で、ナチスの進軍がいつ訪れるかもわからない状況だった
マーティンから話を聞いたニッキーはプラハに出向き、そこでチョコスロバキアの難民英国委員会として活動しているドリーン・ワリナー(ロモーラ・ガライ)、トレバー、連絡係のハナ・ヘイドゥコワ(ジュリアナ・モスカ)たちと出会う
道端で過ごしている人々を見たニッキーは立ち尽くし、何かできないかと考える
そこで彼は、母にバビ(ヘレナ・ボナム・カーター)にイギリスに入国するための条件を移民局に聞きに行ってもらい、それを用意することになった
こどもひとりにつき里親、保証金、医療証明書などが必要で、それによってビザが発給される
だが、イギリス国内でも戦争の機運が高まっていて、移民局も業務に追われていたのである
映画は、史実ベースになっているが、人物を知らなくてもおおよその流れさえ把握していれば問題はない
事実、ニッキーのことが世に出たのも、映画で登場する「That's Life」出演が期になっていて、それまでこの活動については語られることはなかった
番組にて再会を果たす子どもたちだが、669人のうちの大半の行方は今もわかっていないという
それでも、ルーツとその後を追いかけられた人だけで6000人もの子孫がいることになり、実際に669人すべての予後がわかるのなら、1万人を超えてくるのではないだろうか
映画の再現番組には実際に助けられた子どもたちがエキストラとしてたくさん参加されている
映画では、スノネク一家、ヴェラ・ギッシングことヴェラ・ディモントヴァ(Henrietta Garden、幼少期:Frantiska Polakova)の家族などが登場しているが、その他にも多くの子どもたちが番組を見て問い合わせをして、彼のもとに駆け付けていたのである
いずれにせよ、ホロコースト前夜の物語で、助かった人は本当に運が良かったのだと思う
あまりにも幼くて、自分がどうなったのかわからない子どもたちもいて、育てられたのが里親だったということを知らない幼い子どもたちもいたと思う
そういった結果があっても、救えなかった命がニッキーの心の重しになっているのだが、「普通の人が普通のことをする」ことの尊さはいつの世も変わらない
今だと様々な法的な制限や、一部の保護者の反応を恐れて放置される「普通の人が行う普通のこと」というものもあるので、有事以外では機能しないのかな、と感じた